第十八話 門を開く
人族が攻め込んできて、今日で6日だが・・・。魔王城は、今日も平和です。
捕らえた、子どもたちはセバス(二人の時に、ルブランと呼ぶと悲しそうな顔をする)に会ってから、素直に地下の部屋に入ってくれた。地上部は、戦闘になる可能性を考慮して、出入りを禁止した。戦闘が終わってから、地上部で自給自足が可能な状態まで持っていこうと思ったが、”本”で先代の日記を読んでいたら、面白い記述があり試してみた。
地下型の魔王城を作成した者の日記だったのだが、地下に地上と同じような草原を作られるという記述だ。
うーん。ポイントは足りるけど、攻め込まれているときにやる事じゃないよな。
門の中に居るのは、常に150名前後か・・・。敷地内には、300名程度。
全員を敷地内に引きずり込みたい。
あんな簡単に作った。ギミックが解けないとなると、魔王城の罠の突破は、ほぼ不可能だろう?
「マイマスター」
「セバス。子どもたちは?」
「マイマスターの施しを受けて、安心した様子です」
「それはよかった。しっかり鍵をするように伝えたか?」
「はい。部屋の鍵はするように指導しました」
子どもたちは、部屋に入ったが、誰も鍵をしなかった。
ドアを閉める者も存在しなかった。俺の感覚では、部屋に入ったらドアを閉めて鍵をするのは、当然のことだったのだが、どうやら子どもたちは違ったようだ。ドアを閉めて、鍵をすることで、取得ポイントが増えた。
「そうか、お風呂も大丈夫だな」
「はい」
「子どもたちからの要望はないのか?」
「要望ですか?」
「些細なことでも、何か困っているとか、欲しい物とか」
「ないことは無いのですが・・・」
「どうした?」
「マイマスター。子どもたちは、マイマスターに・・・。子どもたち目線では、魔王様の役に立ちたいと言っています。なんでもすると・・・」
「は?なぜ?俺は、子どもたちを監禁しているのだぞ?たしかに、食事や寝床を与えている。それは、子どもたちが死ぬとポイントが減るからで・・・」
「はい。解っております。ですが、子どもたちから見たら、安全な寝床と、おいしい食事を与えてくれる”主人”という考えです。それと、これも要望と違うのですが、毛布や着替えが高級すぎると言っています」
高級?あれは、毛布は一つ上のグレードだけど、着替えは最低の物だぞ?
あれよりも、低いグレードはないぞ?
「セバス。毛布のグレードは下げられるけど、服は無理だ。あれが、最低のグレードだ」
「わかりました。子どもたちには、マイマスターからの施しだと伝えます」
「そうだな。自分たちで作ったりは出来ないのか?」
「確認しますが、マイマスターが用意する物では、結果は同じだと思います」
「そうか・・・。あっ!人の街に買いに行けば・・・。子どもたちではダメだな」
「はい」
子供は無理でも、セバスは魔人だし無理だな。魔人でも大丈夫なのか?でもな、セバスは魔王という設定だからな。買い物に出すのは、何か違うように感じている。
スキル画面で確認をすると、ポイントで交換が可能な項目に、”人”が追加されていた。
うーん。
まずは、攻撃してきている奴らをどうにかしてからにはなりそうだ。セバスに命じれば、一人で殲滅ができると言っているが、捕らえて、いろいろ情報を引き出したい。狙うのは、天幕みたいな物に居る偉そうにしている奴らだよな。
さっさと拘束するか、門の中に入れて、門を閉じってしまおうか?
10日経過しても、退却しなかったり、中に入れなかったり、動きがなかったら、門を開くか?
「門を開く方法を考えないとダメだな」
「マイマスター。門なのですが、門の上にカウントダウンが出せませんか?」
「ん?」
「数字が0になった時点で門を開けば、不自然さは少ないと思います」
セバスの言っている通りだな。いきなり、門が開いたら不自然だし、何かアクションを起こされたら、それがトリガーになっていると思われても面白くない。はじめから決められていた感じで、カウンターを表示させればいいか・・・。かなり、不自然だけど、しょうがないよな。
夜中にカウンターを寄木細工の部分に設置した。
ただ、カウントダウンしていくだけの物だ。
寄木細工を動かしたら出現するようにした。
これで、不自然な感じが減るだろう。
何度も出ていた場所なのに、不思議に思わないのが不思議だ。
喜んでいるようにも見える。
カウントダウンは、4日後の正午になくなるように設定した。
さて、外の連中は踊ってくれるのか?
時間が出来たし、マスタールームでゆっくりと読書でもしよう。
”本”は不思議だ。行動で、内容が増えていく。チュートリアルには変化がないのは救いだが、ポイントで交換が可能な物が増えている。
以前には出なかった、こちらの食料も増えている。
子どもたちに与えたのが良かったのか?それとも、攻めてきた奴らが持ってきた物が、ポイントで交換出来るようになったのか?説明がないから、何をやったら増えるのかを知りたい。
門への攻撃が止まった。
カウントダウンを待つ予定のようだ。
「マイマスター」
「どうした?」
「外に出るご許可をいただけないでしょうか?」
「外?」
「はい」
「偵察ってことか?」
「はい。それか、偵察用の魔物を交換していただいて、森の中を偵察したく思います」
「たしかに、森の中は、まだ領域になっていないのだったな」
「はい。奇襲を受けてもマイマスターの罠を突破できるとは思えませんが、早めに把握できれば、対処が可能かと思います」
「わかった。どんな魔物がいい?」
「はい。バット系か、ラット系の魔物で十分だと思います」
「ポットで湧き出す魔物でもいいのか?」
「はい。支配者設定ができれば、問題はありません」
支配者設定ね。
あっ出来た。今、領域が森の近くまで広がっている。
おっご都合主義!チュートリアルもこのくらい優しければいいのに・・・。
ポットだけなら、少しだけ離れた場所に設置できる。罠の設置は許可が出ない。魔物ポットは可能だ。何かが変わったのか?もともと出来たのか?わからないけど、便利だからいいかな。
魔物ポットだと、ポイントも高くない。
ラビット系の魔物と、バット系の魔物と、ラット系の魔物と、昆虫という大雑把なポットがある。捕食者は居ないが、増えすぎたから狼とか猛禽類の魔物を放てばいい。あとは、蛇とかも、生態系には必要だろう。探していると、”森の生物”という大雑把すぎるポットがある。捕食者が産まれる可能性に期待して配置する。3箇所に、それぞれのポットを配置する。全部で、15個だ。それでも、10万ポイントで足りてしまった。
強さだけではなく、”系”での配置だと、種族もランダムで選ばれるようだ。ポットが破壊されない限りは、クールタイムは必要だが、湧き出し続ける。
所有者を、セバスに設定する。
セバスは、湧き出した魔物の支配者設定が出来るようになる。必要がない。魔物は、支配から開放して、森で勝手に生活させることにした。
「これで大丈夫か?」
「ありがとうございます」
「何か、動きがあったら教えてくれ、俺は少しだけ休む」
「・・・。かしこまりました」
「そうだ、セバス!」
「はい!なんでしょうか?」
「マイルームの隣に作ってある部屋は、セバスの為の部屋だ。好きな部屋を使ってくれ」
「・・・。ありがとうございます」
セバスが優雅に頭をさげるので、手を振ってベッドに身体を預ける。
セバスは、俺がベッドにダイブしたのを見てから、マイルームから出ていった。どの部屋を選ぶのかわからないけど、セバスが好きな部屋を使わせよう。子どもたちの事も頼んでいるし・・・。セバスのキャパシティを越えないように調整をしないと、ダメかな?