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第七十話

/*** カズト・ツクモ Side ***/

 モゾモゾしていて、起きた。
 クリスが起きたのだろう。起きて、自分の状況を確認しているようだ。

『カイ。ウミ。起きるぞ』
『起きています』『うん。大丈夫』

 カイとウミは、もう起きているようだ。もう少し、このモフモフを楽しんでいてもいいかもしれないが、起きるとするか。

「クリス。起きているのだろう?」
「くぅ~くぅ~くぅ~」

「枕を抱え込むな」
「えへ」

「”えへ”じゃないよ。ほら、プロテクターを出すから、身に着けろよ」
「うん。カズトさん。着けて?」
「できるだろう?」
「・・・うぅ。ごめんなさい」

 クリスは、起き上がって、プロテクターを受け取った。

「そうだ。ご飯食べてからにするか?この後、50階層まで行くからな」
「うん!」
「ライ。準備頼めるか?」
『わかった!』

 食事をして、クリスが寝汗だけは流したいというので、シャワーの様な物を作った。
 スキル水と、スキル火を組み合わせただけの簡易的なやつだ。それでも、お湯が降り注ぐ中で、汗を流すのは気持ちいいのだろう、宿にも欲しいといい出した。今回は、簡易的に作った物で、回数制限がある物だったので、帰ってから作る事を約束した。覚えていたらだけど・・・。一度作ってできたと認識した物は、興味がなくなってしまうのだよな。
 固定化のスキルが使えるのが俺だけだから作るけど、なにか方法を考えないとな。

 クリスが着替えるのを待って、40階層のフロアボスに取り掛かる。

「クリス。俺の横にいろ。カイ。ライ。頼む。ウミは、カイとライの補助」
「え?うん!」
『かしこまりました』『わかった』『うん』

 オーガの上位種なのだろうか?スキル持ちを従えている。オークのスキル持ちや進化版が居る。そして、最前列は、ゴブリンとコボルトが担っている。数だけは、100を越えるかもしれない。

 俺たちを認識すると、一斉に動き出す。
 数だけ居ても、統制が取れていないのか、攻撃がバラバラだ。これでは、カイの各個撃破の餌食になるだけだ。

 中央を、ライが酸弾を飛ばして、魔物の数を減らしていく、ウミもクリスに教えていた時と違って、スキルを遠慮なく使っている。ウミが、スキルを使って魔物の数を減らして、うちもらした魔物をカイが倒す。それを突破したボロボロになった魔物を俺かクリスがトドメを刺す。

 戦闘は、10分もかからずに終了した。
 大量の死骸と魔核とスキルカードが残された。魔核は、クリスのジャケットのポケットに収納していく。スキルカードは、俺が預かっていく、それ以外は、ライがまとめて収納していく。

「さて、41階層に行くか?クリス。下層に降りる場所は解るか?」
「・・・はっうん。あっち!」

 開いていない扉を指差す。
 触ったら開くタイプのヤツだな。生き残っている魔物が居ない事を確認して、扉にふれる。生き残っている物が居ると、扉は開かない。無事、扉が開いて、階段が目に入る。

 そこからは、早かった。
 クリスの魔眼で道に迷わない。魔物は、カイとライが始末していく。前方左右を挟まれた時でも、カイとウミとライで始末していく。

「カズトさん」
「どうした?」
「これが、カイ兄とウミ姉とライ兄の本気なの?」
「どうだろうな?この程度の魔物なら、本気になっていないと思うぞ?」
「は?」
「クリス。カイは、スキルで攻撃しているだろう?ウミもほぼ物理攻撃だし、ライも酸弾くらいしか使っていないぞ?」

 そう、まだまだ余力を残して居るのはすぐに解る。魔物が多いからだという事もあるが、それ以上に使い慣れていない攻撃方法の調整の意味合いも有るのだろう。
 呆然と見守るクリスの背中を押しながら、45階層のフロアボスに挑む事になった。

 ここのダンジョンを仕切っている奴はバカなのか?
 数で押せばどうにでもなると思っているのか?

 45階層は、モンスターハウス状態だ。
 数えるのも馬鹿らしいくらいの状況になっている。それほど広くない部屋に、今まででてきた魔物が全部出てきているのではないかと思うくらいだ。

「クリス。俺の後ろにいろ。結界と障壁と防壁を発動しておけよ」
「うん!」
「カイ。ウミ。ライ。遠慮はいらない。殲滅しろ!」
『かしこまりました』『了解!』『わかった』

 殲滅が始まった。相手は、味方に当たるのを気にしてなのか、補助系のスキルしか使ってこない。
 こちらは、遠慮なく攻撃スキルを魔力を注ぎ込んで使っている。数が減ってきた所で、武器を手にした魔物が動き出すが、味方の魔物に攻撃が当たっている。

 無制限に使えるスキルがないと難しいのは理解できるが、これほど集める意味がわからない。
 強い魔物を数体配置するほうが得策ではないのか?強いと言っても、カイとウミなら倒せるだろうけど・・・。

 見ているうちに、どんどん魔物が減っていく。
 最後列に居るのは、どうやら進化系のオーガのようだ。体躯が他のオーガの2倍くらいある。でかいだけのうすのろじゃないことを祈ろう・・・。

 祈ったのが無駄になった。
 ライの酸弾が足にヒットして、倒れかかった所を、カイの斬撃で胸をえぐられて、カイを狙った所を、ウミがスキルで首を狙う。

 それで終わった。
 進化系のオーガが倒れた事で、部屋の中央に魔法陣が現れた。魔法陣の真ん中には、宝箱が出現している。

「カズトさんあれ!」
「あぁ宝箱だな。このダンジョンでは初じゃないのか?」
「うん!」

 何やらテンションが上がっている。

「クリス。魔眼で見てみろ」
「あっうん。わかった!・・・・・うーん。なんにも無いみたい」
「りょうかい。カイ。ウミ。ライ。どうだ?」

 皆から問題なしという返事が帰ってくる。
 俺の鑑定でも、宝箱とだけ出てくる。今まで、罠が仕掛けられている物には、宝箱(毒ガス)の様に罠が表記されていた。それもない事から安全だと思っている。

 問題は、魔法陣だよな。

「クリス。下層に降りる場所はありそうか?」
「うーん。さっきから探しているけど、なさそう。魔法陣が1番可能性がある」

 やっぱりだな。
 安全を取るか・・・

「カイ。ウミ。魔核とスキルカードを集めてくれ。ライ。収納にまだ魔物や装備が入りそうなら、収納してくれ。エントやドリュアスたちへのいい土産になるだろう」

 先に、戦利品を全部集める事にした。

「集め終わったな。みんな魔法陣に乗ってくれ。多分、宝箱を開けた時か、取り出した時に、スキルが発動して下層に行くと思う。念の為、結界と障壁と防壁をかけておいてくれ」

 俺が宝箱を開ける。
 スキルカードのようだ。レベル7だという事が解る。想像通りで、それ以上ではない。

 宝箱から、スキルカードを取り出すと、魔法陣が光りだした。
 すぐに転移が始まる。

 階層は、わからないがダンジョンの中であるのは間違いないようだ。足元に、まだ魔法陣が存在している。魔法陣に魔力を流すと発動して、さっき居た部屋に戻る事ができた。しばらくは、行き来ができるようだ。

 46階層と思っていいだろう。
 一本道になっている。洞窟という作りから、回廊という感じの作りに変わってきている。

 ただ、出てくる魔物は変わっていない。
 まっすぐにこちらに向かってくるだけの単調な動きだ。一本道なので、対応もそれほど難しくない。

 カイとウミとライが順番に倒している。

 本当に一本道だった。
 階段が出現して、47階層に降りる。48階層・・・49階層も同じ作りだ。感覚的には、回廊が少し短くなっていると感じるくらいで、他は代わりが無い。

 50階層に降りた。

 ここも、一本道だ。少し歩けば、大きな扉が現れた、魔物は出てこないようだ。
 セーフエリアが有るかと思ったが、セーフエリアなしのようだ。

 疲れは無いようだ。
 ここで留まっていても、何も進まない。

 扉に手をかけて

「行くぞ!」
「はい!」『はい』『うん』『いいよ』

 それぞれの言葉が返ってくる。
 押し込むと、扉はゆっくりと開いた。

 謁見の間と言った所だろうか?
 豪奢な作りではないが、しっかりと”玉座”がある。

 玉座には、骨がローブをまとって頭に王冠を載せて座って居る。そして、手と足を玉座に縛り付けられているように見える。

「カズトさん」
「あぁわかっている」

 玉座に座っていたのは、アンデッドではなく、動かなくなった・・・骨のようだ。

 どういう事だ?

「カズトさん。王冠!」
「ん?王冠?」

 王冠を鑑定すると、”ダンジョンコア”と結果が出てきた。

 ラスボスは、ダンジョンコアだったようだ。

「ライ。ウミ。王冠を壊せ!」
『はい』『わかった!』

『ちょっと待ったァァァァァァァ!!!!!!!』

 誰からの念話かすぐに理解した。
 王冠(ダンジョンコア)からだろう。今までに聞いた事がない声色だ。

『はぁ?何を待つ?ダンジョンコアなのだろう。破壊されても文句はないよな?』
『だから、待って欲しい。我を討伐しても良い事は無いぞ?』
『良い事?あるぞ!気分がいい。俺が嬉しい。魔物が出現しない。ほら、こんなに良い事がある。だから、討伐する』
『まっ待って欲しい。そうだ、スキルカード!好きなスキルカードを進呈する!それでどうだ?』
『レベル7程度のカードを貰っても嬉しくない!』
『いや、レベル8も有るぞ!』
『偽装や完全地図や記憶なのだろうな?レベル6や7のスキルをまとめた物とかじゃないよな?』
『え?あっ・・・魔核ではどうだ?人族は、魔核を欲しがるだろう?』
『いらない。それに、魔核なら、別のダンジョンで手に入る』

『え?別の・・・もしかして、チアル様のダンジョンですか?』
『知らない。もしかして、お前にも名前が有るのか?』
『我の名前は、ペネムという聞いた事があろう?』
『いや、知らん。それで、壊していいよな?その前に様式美として鑑定だけはしておくか』

// 名前:ペネム
// 種族:ダンジョン・コア
// 固有スキル:変体
// 固有スキル:ダンジョン創造
// 固有スキル:念話
// 体力:H
// 魔力:A+

 ほとんど何もできないって事だな。
 保有しているスキルもなさそうだし、ダンジョン創造を抜ければ使いみちはありそうだけど、多分ダメなのだろうからな。

『待って、待って欲しい。我を壊すと、困るのはお前たちだぞ』
『だから、なんでだよ?理由を言えよ。うっとおしいな』
『魔物を狩って、スキルカードを得なければ困るのは、お前たち人族だろう?』
『あぁ?困らない。もういいな。カイ。ウミ』
『チアル様が怒るぞ!』
『だから、チアルなんてダンジョンは知らん。俺が潜っているのは、山の麓にあるダンジョンだ。それに、お前、本来の姿はなんだ?わざわざ王冠になっているのも気分が悪い。それに、その骨・・・』
『え?あっそれなら、少しおま』『早くしろ!』

 王冠が、人骨の上から床に降りる。やはりな、変体のスキルが有るから、姿形が変えられると思っていた。

『ごめんなさい。これが本来の姿です』

 黒い球体になった。

『会話は、念話だけなのか?』
『・・・はい』『本当だな?』
『本当です』

 どうやら、会話は、念話に頼る必要がありそうだ。

『それで、その人骨は誰でなんでお前は王冠なんかになっていた?』
『話せば長くなりますが・・・』『簡潔にまとめろ』
『はっその前に、山の麓にあるダンジョンとおっしゃっていましたが・・・』『あぁそれがどうした?』
『いえ、そこが、チアル様のダンジョンで間違いないと思うのですが・・・・今、何階層ほど攻略されているのですか?』
『カイ。今、何階層だ?』『主様・・・たしか、65階層でお止めになっています』

『ペネム。どうした?』
『65階層?』
『あぁそうだな。目的のスキルカードが入手できたから、帰ったけどな』
『なっ・・・お名前を伺ってもいいですか?』

 急にどうした?
 まぁいいか

『俺は、カズト・ツクモ』
『ツクモ様。我に触れてください』
『どうした急に?』
『壊されるのなら、御身の手でお願いいたします』
『まだ壊さないぞ、話を全部聞いてからだな』
『・・・触れていただければ、お聞きいただいた事、すべてお話いたします』

 どうしても、触れさせたいようだな。
 結界と障壁と防壁を展開して

「クリス。魔力の流れを見ていてくれ」
「カズトさん・・・解りました」
「カイ。ウミ。ライ。少しでも少しでも変な動きを見せたら、構わない攻撃しろ」
『・・・わかりました』『うん』『わかった』

『ペネム。クリスは魔眼が使える。スキルの発動予兆が見えたら破壊する。いいな!』
『はい。大丈夫です』

 ペネムを手に取る。
 ソフトボールよりも少し大きい感じだな。

「カズトさん。魔力の流れはありませんでした」

『ふっふっハッハハァァ!!これで、我を壊せまい』
『どういう事だ?』
『我は、ツクモ様の眷属になった!眷属は壊せないだろう!』

// 名前:ペネム
// 種族:ダンジョン・コア
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:変体
// 固有スキル:ダンジョン創造
// 固有スキル:念話
// 体力:H
// 魔力:A+

「はぁ?クリス!?」
「え?魔力やスキルの発動は無かったですよ?」
『主様。クリスのいうとおりです。僕たちも感知できませんでした』

 まぁいい。眷属になったという事は、俺と話をする意思があるという事だろう?

「カズトさん。1つ思い出しました」
「ん?何?」
「あの骨の人が着ている物ですが・・・・サラトガの領主が着る衣装に似ています」

 ほぉ・・・それは面白そうな話だな。

 それに、確かにレベル7のスキルカードが宝箱から出てきたな。

『おい。ペネム。サラトガの前領主なのか、わからないが、領主たちがダンジョンを攻略して、お前を手中に収めようとしたのだな?』
『はい。ツクモ様。何年前か忘れてしまいましたが、攻略した者たちが我の所に来て、スキルカードをもっと出せと言ってきた』
『・・・そうか、それで、1人がこのダンジョンの長になればとか言って、そいつを玉座に座らせて、ペネムが王冠になったのだな』
『え?あっその様な感じです』
『違うなら、違うと言えよ』
『えっあっ領主だと言っていた男が、一緒に居たやつを縛ってその服を着せて座らせて、”こいつがこれからここの長だ”と言って、我をそいつの頭の上に置いたのです』

『それで?』
『最初の頃は、メイドが居て世話をしていたのですが・・・』
『あぁ逃げ出したりしたのだろうな』
『はい。最初は、魔物も弱いので、すぐに到達できたのですが、間を開けると魔物が強くなってしまうので、徐々に来る頻度が減ってきて・・・』

「その男はここで死んだのだな」
「そうなりますよね」

『それで?』
『え?あっレベル7回復を望まれましたが、我にはスキルカードを作る力はなく、魔素が形成される宝箱を設置するだけです』
『低階層に、宝箱が無かったのは?』
『宝箱の数を増やしますと、その分魔素が分配されます。そのため、最下層に1つ置くようにと言われました』
『どの程度待てば、レベル7が生成される?』
『わかりません。生物をたくさん倒して、ダンジョンが魔素を吸収すれば、その分だけ早くなります』

『ん?それじゃ、お前は、魔物を作られないのか?』
『意識して作る事はできません。それは、我を眷属化した者の・・・今は、ツクモ様が作られて配置を決められます』

 あ・・・そういう事か・・・最初の頃は、男も領主達の意思に従って、弱い魔物を配置していただろうけど、徐々に来なくなってしまったので、魔物が魔素を吸収して強くなってしまったりして、そのうち誰も来なくなって、暴走したのだろう。

 それでこの男が知っていた魔物が、オーガやオークやゴブリンやコボルトだけだったというわけだな。
 いろいろ納得できた。

 さて、どうするかな?

『ペネムは、これからどうしたい?』
『我ですか?あっ!忘れていました!!』

『あるじ!眷属達が、魔物たちが暴れ始めたって言っているけど、倒していい?』
『ペネム。どういう事だ?』
『あっあの・・・その・・・えぇーーと』
『どうした?』
『あっはい。ダンジョンコアの魔素で作られた魔物は、ダンジョンコアの主が変わると、意識を持つことができます。今、その選別が始まった所だと思います』
『選別?』
『はい。この場所に来る時に、魔法陣を使ったと思います』
『あぁそうだな。45階層だよな』
『はい。そこから一本道なのも意味があります』
『そうか、ダンジョンコアが攻略された時に、魔物が暴れだしても困らないようにだな』
『そうです』
『それで、選別は?』
『はっはい。選別は、魔物全員が意識を持つわけではありません。魔物同士で戦って、一定以上の魔素を持った者だけになります』
『わかった。倒して問題ないのだな』
『・・・はい』

「ライ。眷属に、殲滅を指示しろ」
『わかった!』

『ペネム。お前ができる事を教えろ』
『我ですか?ダンジョンを作る事しかできません』
『そのダンジョンを作るために何が必要なのだ?』
『あっ』

// 固有スキル:ダンジョン創造
//  眷属:触れている者の眷属になる
//  構築:魔素で形成される空間を作る事ができる
//  創造:魔物/罠/宝箱を創造する事ができる
//  配置:空間に創造した魔物/罠/宝箱を配置できる
//  吸収:魔素を吸収する事ができる
//  譲渡:構築/創造/配置の権限を渡す事ができる

『ツクモ様?ダンジョンを作るには、魔素が必要です』
『魔素は、魔核がいいのか?』
『もちろんですが、かなりの量が必要になります。ですので、実際には、ダンジョン構築には長い年月が必要になります』
『それは解った。お前が作る事ができるダンジョンの制限はなんだ?』
『制限ですか?』
『あぁ階層は、50階層が限界なのか?』
『いえ、魔素があれば深くできます』
『お前と眷属が必ずその場に居ないとダメなのか?』
『我は近くに居る必要がありますが、主様は必要ないです』
『お前は、最下層に居る必要はあるのか?』
『いえ。ダンジョンから離れていなければ大丈夫です。配置するのなら、ダンジョン内に居る必要があります』
『ダンジョンは、地下だけなのか?』
『いえ地上部に作る事ができます』

「カズトさん。何を?」
「あぁ商業区に、誰でも入られるダンジョンがあれば、居住区のダンジョンを隠す事ができるだろう?」
「あっお祖父様が困っていらっしゃった事への対応ですか?」

 まだ腹案だが、居住区は最終的にはエリンに任せたいと思っている。宿区はリーリア。執事にオリヴィエ。商業区はクリス。そのための足がかりができればいいと思っている。クリスは別にして、エリンやリーリアやオリヴィエは、俺よりも寿命が長いだろう。カイとウミとライは、ログハウスと洞窟内でやっていけるだろう。
 獣人族やスーンが、跡継の事を言っていたが、眷属が跡継でもいいと思っている。別に、俺の子供じゃなくてもいい。眷属は、俺にとって家族だ。
 その家族が困らないようにするのが俺がやるべき事ではないのかと思えてきている。

「そうだな。冒険者たちの仕事場も作らないとならないだろう?」
「うん・・・でも・・・ううん。なんでもない。それで、カズトさん。サラトガのダンジョンはどうするの?」
「ダンジョンコアであるペネムを商業区に移動させる。これは決定事項だ」
『ツクモ様。承知いたしました。その商業区と言われる場所がどの辺りに有るのかわかりませんが、この近くでないと、このダンジョンは放棄する事になります』
「あぁそうだ!クリス。サラトガの連中に、過去の罪を教えてやろう。そして、ダンジョンでなくなった事は、その骨の呪いとでも思わせる文章を考えるぞ」
「うん。どうします?なにかに、文章を書いておきます?」
「そうだな。おい、ペネム。お前が知っている事を、全部話せ。俺とクリスで脚色する。それを、壁に刻め。できるだろう?」
『仰せのままに』

「カイ。ウミ。ライ。少し時間がかかると思うから、眷属達の掃討戦を手伝ってやってくれ」
『主様。わかりました』
『わかった。本気出していいよね?』
「あぁウミ。好きに暴れてこい」
『やったぁ!』
『あるじ。僕もいい?』
「あぁライもカイもスキル使っていいからな」
『はい』『わかった!』

 カイとウミとライは、来た通路を戻っていく。途中一回戻ってきた、クリスが一緒に付いていって、魔法陣の発動を手伝った。

 壁に壮大なストーリーが出来上がったのは、それから3時間後の事だった。

しおり