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第十九話 草案と説明


「ミル。マヤは?」

「うーん」

 ミルが渋っているところを見ると、マヤはマヤで用事があるのだろう。

「無理なら無理でいいよ。ロルフ」

 今回は、ロルフと話をして、神殿の草案を考えればいい。そのあとの拡張は、ロルフとマヤで行えばいい。

『はい。にゃ』

「神殿の入り口を、マガラ渓谷の挟む形で作って、そこから一直線に通路を作る。両側に、店舗になるような建物を作る。中間地点に、訓練所に向かを場所を作るようにしたい。訓練所の通路を挟んだ正面には、集会場になるような広場を作りたい」

 アロイの街は、アゾレムが管理していると言っていたから、転移門の設置は難しいだろう。ハーコムレイに相談(丸投げ)だな。
 メルナ側の設置には問題がないと思える。王家直轄だと言っていた。ミヤナック家の屋敷もあるし、ローザスに関連した屋敷もあるだろう。

 どこかの屋敷に設置するとか、土地を借りるなどすれば、転移門の設置は大丈夫だろう。ダメならダメで、考えればいい。

『大丈夫。にゃ。ただ、収支がキツキツなので、魔石で充填したい。にゃ』

「わかった。魔石は、渡してあるやつで大丈夫か?」

 サービスエリアを作るのに、魔石を使うのは想定通りだけど、収支に関しては、ロルフに説明しておいた方がいいだろう。
 安心できる材料(説明)があれば、作業がやりやすいだろう。

『大丈夫。にゃ。でも、収支をプラスにする方法が必要にゃ』

「大丈夫だとは言わないが、考えている」

 ロルフも、収支を気にするよな。
 サービスエリアでは収支はプラスに働くだろうけど、訓練所はどうなるのだろう。どの位の規模での実施が出来るのか、人が集まってきてから相談だな。

『本当か。にゃ?』

「まず、通路の長さは、現在の神殿と同じくらいの方が解りやすいよな。後から伸ばせるよな?」

 通路の長さは、重要じゃないけど、ある程度は店舗を用意しておきたい。
 アロイの街でアゾレムへの税で苦しんでいる人たちも居るだろう。それだけではなく、通路になれば人が集まる。今まで、マガラ渓谷を超えるのは、行商人規模の商隊に限られていた。マカ王国に繋がる、国境の街(シャルム)まで商隊が行けなかったが、馬車のままマガラ渓谷が通過できるメリットは大きい。マカ王国との交易が広がる。国境の街(シャルム)は王家直轄だから、喜ばれるだろう。ついでに、ポルタ村も王家領に組み込んでもらうのがいいかもしれないな。

『伸ばせる。にゃ』

「それなら、とりあえず・・・。作ってみてくれ、マヤにわかりやすく言うと、道の両側に立てる建物は、王都にある店の感じだと言えば解るだろう」

 あとから調整が可能なら、イリメリたちに考えさせればいい。
 ロルフかマヤとの顔つなぎをしておけばいいだろう。

 俺たちの神殿に繋がる場所は、必要ないだろうけど、必要になったら作ればいいかな。

『大丈夫。にゃ。神殿で作った店舗がある。にゃ』

「そうか、店舗を並べる感じでいいよ。店舗の上は、居住スペースにしておいてくれ」

 居住スペースは必須だな。
 食料の生産場所は、他の場所に任せたほうがいいだろう。ポルタ村で作ってもいいけど、あそこは、俺の眷属たちの住処になっている。

『はい。にゃ』

「リン。お風呂も必要」

「そうだな。訓練所の前に作る公園には、風呂やギルドを作ろう」

 ミルが話に加わってきたけど、たしかに風呂は必要だ。
 臭い奴らが屯している状況は許せない。俺が、使わない通路だとしても、やはり清潔に使わせたい。

 それに、イリメリたちも風呂が有ったほうが嬉しいだろう。
 最初は、共同浴場だけにして、その後で要望を聞いていけばいいだろう。イリメリは、神殿に居住する可能性があるけど、他のメンバーは、それぞれに帰る場所があるだろう。

『わかった。にゃ』

「通路は、馬車が並んで4台は通られる幅にしてくれ」

 馬車の幅は決まっていないが、二頭立ての馬車が主流なので、合わせられるだろう。程度の問題で、馬車の幅はほぼ同じになっている。王家や貴族が使う馬車だと幅が広い場合もあるが、それはそれだ。通行時に注意すればいいだけで、俺が考えるような問題ではない。運用時に考えてもらおう。

『広い。にゃ』

「そうだな。真ん中は、神殿に用事がない者が通路として使えばいい」

「ねぇリン。訓練所に入る所にも公園を作らない?待ち合わせとか、あと馬車の乗り降りをまとめられない?」

 想像してみると、片方にだけ公園を作っても、あまり意味がなさそうだ。乗り降りの場所を決めておけば、店の前で急に馬車が止まって渋滞するなんてことにはならないな。王都の店舗のように、馬車を格納できるようにしておけば、混乱も押さえられるだろう。
 乗り合い馬車が運用できる可能性もある。俺が手を出さないでも、ハーコムレイに相談して実行が可能ならやってもらえばいい。

「そうだな。馬車での乗り降りはまとめた方がいいな。上りと下りで中央にある公園だけで乗り降りが出来るようにすればいいか・・・」

 ミルのアイディアを採用する。
 嬉しそうにするミルを見ると、俺も嬉しくなってくる。

「うん」

『わかった。にゃ。マヤ様と相談しながら作る。にゃ』

「それで、ロルフ。マガラ渓谷を通らなくても、神殿を馬車で通られるようになる」

 さて、前提条件の説明が出来たから、収支に関して、ロルフに説明するか。

『そうなる。にゃ』

「人が多く通る場所だし、訓練所で魔物の素材や魔石が入手できる」

 訓練場は、未知数だから、収支はロルフに考えてもらうしかない。実際に運営しながら、調整しなければならないだろう。

『そうなる。にゃ』

「それに、宿屋ができれば、泊まる者も出る。生活を行う者も出てくる」

 マガラ渓谷を組み込んだのと同じ効果が期待できる。
 宿泊を含めるので、効果は高い可能性もある。

『そうなる!にゃ!そうしたら、収支が改善する。いきなりは増えない可能性があるけど・・・。そうだ。にゃ!』

「そういうことだ。絶対とは言いにくいけど、黒字にはなるだろう」

 ロルフも可能性に気がついてくれた。
 いきなり人が増えるのは、イリメリたちにも負担になるが、徐々に増えていけば、通路にしているサービスエリアの改修も手間ではないだろう。

「ねぇリン。通行税はどうするの?」

 通行税は考えていなかった。
 アゾレムや俺たちに敵対している連中に使われるのは、気分がよくない。

 通行させない方法を考えたほうがいいのか?

「ただでもいいと思っているのだけどな。これは、ハーコムレイとかと相談かな。例えば、認められた商隊は、無課税だけど、承認されていない商隊は、税を付与するとか・・・。神殿だから、入り口で隔離してしまえばいいだけだから、それほど手間じゃない。そうだろう?」

『はい。にゃ。簡単な方法は、神殿で発行する札が張ってある馬車は通過できて、札がない馬車は通過をさせない方法。にゃ』

「それだと人は?」

 馬車単位での認証って感じだな。
 まぁそれで通過出来るのは、人数が限られるな。人を認識する方法は、別に考えればいいか・・・。イリメリたちに丸投げだな。

『馬車に乗っていればいい。にゃ。それか、人にも札や目印を発行すればいい。にゃ』

「手間じゃないのか?」

『発行は複雑ではないが、手間が必要になる。にゃ。発行が終われば、あとは自動。にゃ』

「そうか、発行を道具に出来ないか?魔道具?みたいな感じになれば、それをギルドに貸し出せばいいだろう?」

『出来る。にゃ!』

「リン。ロルフ。通行税の回収も、自動で出来ない?」

「ん?」

「ほら、駐車場とかの料金を入れるような感じ」

「あぁマヤとロルフにイメージを伝えるのが難しいな」

「ん。僕が、マヤにイメージを伝えるよ。間違っていたら直せばいいよ」

「そうだな。任せる」

「うん!」

「ロルフも、これで、マヤと相談しながら神殿を作られるな?」

『大丈夫。にゃ。わからなければ、マヤ様がミトナル様に質問をする。にゃ』

 通路にできるサービスエリアの草案がまとまった。

 俺とミルは、このあと素材を回収して王都に向かおう。

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