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3 Caseアーリア③

 「イヴォル」のエージェントは軒下で夜露をしのいでいた孤児達だ。
 ベルガたち四人は、街中で可能性を感じる子供をみつけては孤児院に引き取り教育を施した。
 途中で無理だと判断した孤児達は、手に職をつけさせて15才になったら独立させてる。
 最終的にエージェントとして残ったのは9人。
 本格的に活動を開始して2年後、異才の子供を引き取り10人になった。

 長男 管理統括 ゼロ 17歳 アンと双子
 長女 医学・薬学 アン 17歳 ゼロと双子
 次男 破壊・侵入 ドウ 17歳
 三男 語学・記憶 トワ 16歳
 次女 魅惑・変装 キャトル 16歳
 四男 医学・催眠 サンク 16歳
 三女 毒物薬物の製造 シス 15歳 セプトと双子
 五男 動物との会話と従属 セプト 15歳 シスと双子
 四女 武器の発明と製造 ユイット 14歳
 六男 予知 ヌフ 10歳
  
 「イヴォル」の依頼成功率は95%。
 本人たちが失敗とカウントしているミッションも、実行前にターゲットが死亡するなどの不可抗力によるものだ。
 報酬は高額だが、その信頼性から「イヴォル」という名は各国の王家や高位貴族、そして裏社会にまで浸透していった。

 そんな彼らがエース二人を同時投入して仕掛けたのが今回の仕事。
 ミッション名は「アリア」 実行スタッフは3名、バックスタッフは10名。
 依頼人が帰った翌日、彼らは早速動き出し、メンバー三人はB国に入った。
 アンはアーリアの側仕えをしているメイドをひとり消してすり替わった。
 ゼロは皇太子の護衛騎士を襲い、制服と身分を奪った。
 サンクは予てより拠点とするべく準備していた家に入り、必要な物を調達した。
 入国からここまでの所要時間はおよそ3時間。

 サンクが入った屋敷は、随分前に没落した子爵邸を買い取り、外観はそのままに中を大幅に改装しているものだ。
 B国に限らず、近隣諸国全てに同じような拠点を用意しているのも彼らの強み。
 それぞれが予定行動を完了したその夜、メンバー全員による最終確認があった。
 外に明りが漏れないように地下室でおこなわれたそれには、オーエンとサシュも参加している。

「5日後だ。前日までに媚薬と幻覚剤の準備はサンクの担当だな?」

 オーエンの問いにサンクが頷く。
 それを見たサシュが低い声で言った。

「保護対象は?」

 アンが答える。

「接触しました。精神的にはかなりヤバい状況ですが命に別状はありません。入浴時に確認しましたところ、腿や背中に鞭の痕があります。右耳は鼓膜が破れて聞こえません。おそらく酷く殴られたのでしょう。食事は粗末ですが三食提供されています。腐敗臭も浮遊物も無いので栄養補給はできています。サイズは私より少し小さめ、髪の色は金色、目は青です。特に目立つような黒子や傷も無かったので、今回はそれほど苦労は無いですね」

 ゼロが頷きながら言う。

「では明日の夜入れ替われ。時間はきっかり0時だ。迎えは?」

「俺が行く」

 サシュが応えた。
 オーエンが無表情のまま口を開いた。

「無慈悲な悪魔に神の鉄槌を!」

「「「「鉄槌を!」」」」

 5人は頷きあって闇に消えた。

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