一話ガチオタキモニート、恋をする
"ガチオタキモニート"とは。
幼少期よりアニメや漫画、ラノベで知識の勉強をし、
そこで得た知識を三次元で披露して
痛い目を見る人種の事である。
更に、中学高校時代には数々の黒歴史を作り、大人になってからは働かずに親の脛を、
出汁が出るほどしゃぶり尽くす"ゴミ"とも言われる。
____それが俺だ。____
しんしんと雪が降る12月。
7時にかけた目覚ましを追い越し、俺は6時50分に目を覚ました。
「ふっ…また時を追い越したか…」
こういうところだ。こういうところが気持ち悪いんだ。
「もうこのまま春なんて来ないんじゃないか…」
そう思うほど寒い朝だった。
大学進学を機に高校卒業後、大阪の田舎から東京の大学に入った。
念願の一人暮らし。
夜更かししても怒られない。
休日にずっとネトゲをしてても怒られない。
二階建て木造アパート5畳半。
家賃48000円。
トイレ風呂はセパレートだが、洗面台だけは浴室に付いている。
そんな部屋を俺はサンクチュアリと呼んでいる。
朝起きてとりあえずテレビをつけた。
友達のいない俺にはLINEチェックなど無縁だ。
____本日の最高気温は3℃です!
暖かい格好をして外に出ましょう!____
テレビの向こうでアマタツさんが言っていた。
「どおりで寒いわけだわ…」
おれは腕を組み、背中を丸めて、歯をカチカチさせながらそう言った。
5畳半の床には、漫画家修行中の俺が書いた原稿や、いつ買ったのかわからないペットボトルでいっぱいだ。
それらを踏みながら
寝ぼけ眼のまま、洗面台に向かった。
身支度を整え、授業に向かう準備をする。
菅田将暉しか着こなせないであろう
タイダイ柄のダウンジャケットに袖を通した。
俺はこれを"菅田ウン"と呼んでいる。
そして小学五年生の時お年玉で買ったショルダーバッグを担いで家を出た。
我がサンクチュアリから大学までは徒歩15分の距離にある。
最寄駅は中目黒。
そう。すごくオシャレな街だ。
菅田ウンを着ている俺を見て、街の人々は
"え、まって、菅田ウン着こなしてる!オシャレー!すごーい、ていうか菅田将暉じゃない?!"
とか思っているに違いない。
知らんけど。
朝一の授業は良い。本当に好きだ。
何故なら誰もいないからだ。
まだあまり人のいない目黒銀座商店街を歩きながら
「ふぁあぁぁ…」と言い
大きな欠伸をしながら、両手を伸ばした。
そしてそれは突如現れた。
目黒銀座商店街を抜けるかどうかの辺りだ。
『どけどけどけどけどけえええ!』
SDGsすぎるズタボロのママチャリに乗った
聖女のようにキレイな"ギャル"だ。
_ガシャーーーーン‼︎‼︎_
おれは一体何が起こったのかわからなかった。
ボロボロのママチャリは、俺と衝突した事でひっくり返り、
そして俺も地面にお尻をつく格好で倒れた。
聖女のようにキレイなギャルは一度倒れた後に、すぐ地面にへたりと座り込み、俺に謝った。
「ほんっとごめん!」
必死に謝る彼女の姿は、女神のように美しく
まるで絵画のように、惹きつけられてしまう目をしていた。
俺はこの時、驚いたような顔をしていたと思う。
頬は少し赤くなり、指先は冷えたままだが、体の中は熱かった。
この日の事を俺は今もはっきり覚えている。
しんしんと雪が降りしきる12月。
おれはこの日、三次元において
初めて一目惚れをしたのだあった。
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