ゴーレム、紫髪の少女、意味深な扉
一時間ほど待っていたでしょうか。
店は朝起きた時と比べて賑わっており、低い声が店内に満ちています。
この客たちも魔法使いなのか店員に聞いたところ、「実際に聞いてはいないからわからないけど、常連はみんな魔法使いだよ」だと言っていっていました。
その店員も常連らしき客と話していて、私は入り口が見える方の隅っこで店員さんから借りた本を読んでいました。
アルバンはすぐ来るかと思ったが、あまりにも遅いです。
一体いつになったらくるんだと思いながら、私は店の入り口の方に目を向けます。
何回目かもわからない行動でしたが、次の瞬間ガチャリと音がして扉が開きました。
「お?」
入ってきたのは紫の髪をした小柄な少女と、扉を通るのがやっとな大きなゴーレム……アルバンでした。
いいえ、「大きな」というのは間違いです。確かゴーレムの世界ではあれでも小さいぐらいなはずです。
私がアルバンの方を見ていたのに気づいたのか、アルバンは私を呼ぶまでもなくこっちにきました。
「よう、お嬢ちゃんがアリッサ・オルタネイトであっていたか?」
「はい、そうです」
「そうか。俺はアルバン。で、こっちが……」
「ニコラ・エルドレッド。ニコラって呼んで」
「よろしく、ニコラ、アルバンさん。私はアリッサ・オルタネイト。アリッサでいいわ」
「あー、アリッサ、さん付けは別にいい。恥ずかしくなっちまうからな」
「わかったわ、アルバン」
「ありがとう……とりあえず、挨拶も終わったところでアルカディアに行こう。おーいトマス、アルカディアにつれてってくれ」
そういうと店員……トマスが私たちのところに来ました。
「わかりました。では、あそこの扉をくぐってください」
そう言ってトマスは店の奥の方にある扉を指差します。
どうやら、あそこがアルカディアへの入り口らしいです。
扉を開けると、そこは小さな小部屋でした。
きっと魔法を使ってアルカディアに転移させるのでしょう。
「お前たちで先に行ってくれ。俺が入るとめっちゃ狭いからな」
私たちは「はい」と言って中に入ります。
広さは……9人ぐらいの人が入れるでしょうか。
たしかに、ここにあの大きさのアルバンが入ってくると狭いですね。
そう思っていると床に魔法陣が出て、眩しさに目がくらむと……
気がついたら、目の前は横丁のようなところでした。