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463 新しい出会いの裏では

あるお城の一室、パーッと光とともに現れたのは⋯

『ふぅ。戻ってきましたわね』
『そうにゃね。なんだか、短い間に行ったり来たりしてる気がするにゃ』
『そうですわね。しかもかなり内容の濃い感じですわよね』
『ほんとにゃね~』
光から現れたのは地の精霊王アイナ様とケット・シーのニャーニャにゃん。そして、

〖ほう。ここが本来のアイナ達の城なのですね〗
『ふむ。石と木をうまく組み合わせた暖かい感じの良い城だな』
医神エルンスト様とエンシェントドラゴンのアルコン様。

『これは失礼致しましたわ。エル様、アルコン様』
『ようこそですにゃ。つい、話し込んでしまったにゃ。申し訳ないですにゃ』
馴染みのある部屋に戻ったことで、ついつい二人の世界に入ってしまったアイナ様とニャーニャにゃん。

『まずはお茶でも⋯と、言いたいところではあるのですが、いかが致しましょうか』
『このまま里の外を見に行った方がいいかにゃ?』
今回は遊びに来た訳では無い。里の外で起こっている異常を確認に来たのだ。

〖そうですね。親方の息子さん達に話を伺うにしてもまだ朝早いですしね〗
『時間帯で様子が違うかもしれんしな。念の為、姿を消して空から見るのはどうだ?話を聞くのは戻ってからでも良いだろう。それに』
エル様とアルコン様は早い方がもし何かが潜んでいるようなら不意をつけるのではないかと言う。
本当にリノお姉様や闇のお姉様が見たという闇がこの里の周りにもあるのか⋯
リノお姉様は私の強い精霊眼が無意識に見ないようにしていたのではないかと仰っていた。ならば、今回は目をそらす訳には行かない。逃げる気はありませんが、最後まで目を開けていられるのか⋯

『ご主人』ぺしぺし

『え?』
不意に頬にニャーニャを感じると、ニャーニャだけではなくアルコン様とエル様が私を心配そうに見ていた。

『あっ、申し訳ございません。少々考え事を⋯』
気付かぬ内に考え込んで周りの声が聞こえなかったようです。しっかりしなければなりませんのに

〖謝ることはありませんよ。不安になるのは当たり前です〗
『そうだ。自分の周りが知らず知らずのうちに害されていたなど、こんな不気味なことは無いからな』
〖もし、これがヤツの仕掛けたことならば、むしろ巻き込んでしまった我々神の責任。アイナの方が被害者なのですよ。申し訳ございません〗
エル様が天界の不始末に下界を巻き込んでしまったと頭を下げられてしまいました。でもそれは

『あ、頭をお上げくださいませ!エル様が謝られることではございませんわ』
『そうにゃ!悪いのはここにいる誰でもないにゃ!』
〖しかし⋯〗
謝らないで欲しいと頼んでみてもエル様は納得して下さらない。

『しかしでは無い。アイナとニャーニャが正しい。謝るならそれは現況を引き起こしたやつだ。エル様、それでも謝りたいというのであれば、それは原因を突き止めてからでも良いのではないか?』
私たちの代わりにアルコン様がエル様に進言してくださいました。その通りですわ。悪いのは原因を作り出した者ですもの。今はとにかく現状を探り、憂いを晴らさなければいけないのですわ。里の方たちをいつまでも危険に晒す訳にはいきませんもの。

『エル様、お心遣いありがとうございますですわ。ですが、アルコン様のおっしゃる通り、原因を探ることの方が先決ですわ。私の眼だけでは不安ですの。エル様、アルコン様、どうか、お力をお貸し下さいませ。よろしくお願い致しますですわ』
エル様とアルコン様に頭を下げてお願いしますと
『そうにゃ!お願いしますなのにゃ!このままでは里のみんなが危ないですにゃ!』
ニャーニャも一緒に頭を下げてくれたのですわ。エル様は

〖そうですね。分かりました。それでは早速行きましょうか〗にこり
『はいですわ』
『はいにゃ!』
良かったですわ。エル様が先程の硬いお顔から柔らかいのお顔になられましたわ。

〖ではアルコン、レインボードラゴンと呼ばれるあなたの力の見せどころですね〗
『フッ。無論のこと。どんな景色にも溶け込んで見せよう。だが、そなた達もそれなりに姿を消してもらわんとな。ないとは思うが、我より上から見られたらどうなるか分からんからな』

エンシェントドラゴンであるアルコン様はレインボードラゴンの異名をとるほど、ありとあらゆる色を纏う美しいドラゴンですわ。
聖域ではサーヤちゃんや、お子様のモモちゃんとスイくん達に喜んでもらう為に、あえて綺麗な色を見せてくださってますが、その真価はあらゆる色を纏い周囲に溶け込み、誰に気づかれることなく空を自由自在に飛び回ることなのですわ。

〖ふむ。そうですね。確かに用心に越したことはないでしょう。そこは私が結界を張りましょう〗
『私も気配を消しますわ』
『ニャーニャもにゃ』
〖では、行きましょうか〗
『城の上からでしたらそのまま飛べると思いますわ』
『そうにゃね。里の衆に下手に見つかることもないにゃ。逃げ切れるにゃ』
あっ!ニャーニャそれは!

〖はて?逃げ切る?〗
『里の者から?』

あああっ、ほら、エル様とアルコン様が怪訝なお顔をされてるではありませんか!

ごめんにゃ!ついにゃ!

『ほほほ、なんでもありませんわ!』
『そうにゃ!アルコン様は生物だから大丈夫にゃ!』

ニャーニャ!?

ああっしまったにゃ!ごめんにゃ!

〖はい?〗
『な、なまもの?』

あわわわ、どうしようにゃ!?

と、とにかく

『ほ、ほほほほ。な、なんでもありませんわ。そ、それより』
『早く行くにゃ!にゃ!』

誤魔化すしかありませんわ!

そ、そうにゃね!にゃーにゃは今からお口チャックするにゃ!

〖ふむ。何やら怪しいですが、まぁいいでしょう。行きましょうか〗
何となく察しがつきましたしね。当のアルコンが気づいたかは分かりませんが⋯

『なんだかよく分からぬが、そうだな。行くか』

ふむ。分かってないようですね。まあそれはそれであとの楽しみという事で。ふふっ

あ~エル様はなんか気づいたっぽいにゃ

そ、そうですわねそうですわね。ま、まあ、今はとにかく

『では、こちらへ』
『展望テラスにご案内にゃ』

私たちは恐れ多くもエンシェントドラゴン様の背中に乗せていただき、あっという間に里の上空へ

『すごいですわ。一瞬ですわね』
『なんの衝撃もなかったにゃ!』
〖流石ですね。風の魔法を使わせたら下界であなたにかなう者はいないでしょうね〗
『ふっ。神にそこまで言ってもらえるとは何とも光栄なことだが、ドラゴンにとって風を纏うことなど造作もないこと。その内、我が子らも出来るようになるぞ』
〖それは楽しみですね。それでは、未来の楽しみのためにも、今起きている問題をどうにかしましょう〗
『そうだな』
和やかな雰囲気から一転、一気に身が引き締まる。

『ご主人、がんばるにゃ!』
『はいですわ』
さっそく精霊眼を解放しようとすると

〖待って下さい。私がまず見ましょう。私が違和感を感じた辺りを教えますので、アイナはそこを見てください〗
エル様に止められてしまいました。なるほど、たしかに闇雲に見るよりいいかもしれないですわね。
『分かりましたわ。お願い致しますですわ』

上空から見えるのは、城の前方に開ける里。畑や工房、家々があり、城の背には豊かな森が広がる。城を中心に円を書くように清浄な気が広がっているが、円の外では

〖これは⋯〗
『嫌な感じだな⋯』
〖あなたも感じますか。アルコン〗
『ああ。澱んでいるというか⋯だが、全体ではないな』
〖ええ。濃さに差がありますね〗
『気になるのは、里の周りを囲むように濃い場所が点在しているように見えることだ。そこから淀みが徐々に広がっている』
〖人為的なモノを感じますね。何かあるのでしょうか?アイナ、あの淀みの中心に何かがあるように見えますか?〗
エル様とアルコン様が見たもの。禍々しい気は

『はい。淀みは渦状になっていますわね。その中心にあるのは、⋯あれは魔物?』
『魔物にゃ?他のところもかにゃ?』
『そう言われてみると、動いているようにも見えるか?』
〖アイナ、どうですか?〗

別の渦の中心を見ると
『やはり魔物のようですが、先程とは違う種類のようですわ。どこかにダンジョンでも出来てしまったのでしょうか?』
『魔物が移動して淀みを広げてるってことにゃ?でも、この辺りにはダンジョンはないはずにゃ』
『そうですわよね?だとしたら』
今度は魔物に絞って見てみると、お腹の辺りに強い気配が?

『何かを体内に取り込んだ。ということでしょうか?』

皆様の空気が変わり、エル様の眉間には思い切りシワが寄っている。
でも、体内に取り込んだなら、それはそれでどこで何を?そして、元凶はどこに?

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お読みいただきありがとうございます。久々にシリアスになりそうになると、悩みます。
早くサーヤ達のところに戻りたい⋯

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