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手紙、老婆、屋外

 家の扉がバタンと閉まり、鍵のかかる音が聞こえました。
「ああ、もうこの家には帰れないんだ……」と一瞬思いましたが、私はそれよりも暴力的な父親から解放されたことの喜びが勝りました。
 しかしその喜びも、すぐになくなりました。

 そう、衣食住どうするか問題です。

 私はマッチ以外何も持っていないので、当然無一文です。
 ここで野宿しようにも、きっとこの寒さでは明日になる頃には冷たくなっているでしょう。
 一応靴は履いていますが、寒さは私を凍えさせます。

「どうしよう……」

 そう呟きながら私は家の扉の周りをうろつきます。
 ぱっと見不審者にも見えなくはないですが、幸い誰も来ませんでした。
 しかし何十回目かもわからない往復をしたとき、一つの手紙を見つけました。

「……手紙?」
 
 その手紙は雪の中に埋もれてしまっていました。
 それでも見つけられたのは、それが真っ黒な羊皮紙でできていたからです。
 私はそっとそれを拾い上げ、宛名を見ます。

「しかも、私宛だ……」

 真っ黒な羊皮紙に、白色の光るインクで私の宛名ともと我が家の住所が書かれています。
 そして手紙は「F」と書かれた封蝋で封印されていました。
 まるで貴族が正式な場へ人を招待するための手紙みたいです……まあ、実際にそういう手紙を見たことはありませんが。
 こんな普通の平民である私に、そんな手紙が送られるはずがありません。

「切手も貼ってない……違法じゃないのかしら」

 そんなしょうもないことを考えつつ、私はおそるおそる封印を解いてみます。
 すると目の前に突然変わった服装……黒いローブをした老婆が現れました。

しおり