『心配そうな顔』
母の言葉が思い出され、心が傷ついた。私は悪い子と感じ、悲しくなたが、涙は堪えた。「何時に帰るの?」と聞かれ、「お昼前ぐらいに帰ります」と答える。返事が返ってきた。「わかった」と。娘はいつも通り登校した。授業は退屈で、皆も娘も集中力がなかった。休み時間に、彼が女子のグループに割り込んできた。「おい!知ってるか?あいつのこと!」と声が上がる。「え!?なになに!?」と一人の女子が聞く。「お前、あいつとは話さない方が良いぜ」と言われた少女は首を傾げる。「何で?」と尋ねる。「あいつはなぁ、俺の母さんの妹の娘さんなんだけどな、そいつの家が金持ちらしいぞ。しかも、あいつが住んでたとこなんて豪邸だぜ!」と告げられる。私はこんな風に言われているのかと思う。「そうなんだ。知らなかった……」と少女の声は小さく、男子生徒たちには聞こえない。「でもさ、あの子だって、私たちと同じ高校生じゃん。なんでそんなこと分かるのよ?」もう一人の女子生徒が言う。「いや!俺もそう思って、調べたんだよ。そしたらよぉ、やっぱり凄い家だったよ。だから、絶対に関わらない方が……」と言いかけた男子生徒を遮った生徒がいた。「うるせぇよ」と遮られた男子が言うが、誰が言ったのか分からない。「えっ?何が?」と男子生徒が尋ねる。「お前らが関わるかどうかの話だろ?」と彼は言い、教室を出て行った。残された生徒の一人が尋ねる。「どういうことなんだよ」と彼に問いかける。「どういう事って、お前も言ってたじゃないか。俺たちより裕福な生活をしているってことだろ?」と当たり前のように答える。「それが、どうしたんだ?」と女子生徒が詰め寄る。「だからさ、なんでそんな事が言えるのかって事でしょ?」と彼は言い、説明することにした。「まぁ、それは、あれだ。あのお嬢様はな、親がいないらしいからな。一人で暮らしてるんだって」と答える。しかし彼女は不満そうに言う。「へぇーそうなんだ。でもさ、それと、あんたが言ってることって関係無いんじゃないの?」と彼女は言い、不安そうな様子が伺える。彼女たちを見て言う彼に続けて聞く。「……で、他には何か分かったのかい?」と尋ねる。「あーっ、あとはだなぁ……確か、お金持ちのお祖母さんの家に住んでるとかだったな。後は……」と言うと、急に彼は口を閉ざした。「他に何かあるの?」と女子生徒が尋ねる。「あぁ~そうだなぁ……あ!そう言えば、その親戚のお婆さんが死んでるって話もあったよな」と答える。すると一人が言った。「ねぇ、それ絶対嘘でしょ?あんた騙されてるよ……」と他の生徒も同意し始めた時、チャイムが鳴った。着席する際に呼び止められ、恩返しを提案されたが照れ笑いで軽く流した。彼女の方は少しの間見つめていたようだが、チャイムが鳴り始めると、急いで席に着いた。昼休みになるといつものように娘は食堂へ向かった。いつもは弁当なのだが、この日だけは、昼食代を渡されていたのだ。と言っても、三千円も渡されたのだが。「これじゃあお弁当作れないじゃない」と思い、娘は呟いたが、直ぐにやめた。娘は財布の中を確認しながら歩いていると誰かにぶつかってしまった。顔を上げるとそこには今朝見た顔が……。「どうしよう」と思っているうちに向こうから話しかけてきた。「すみません……」
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