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lucky heartのはじまりは、anluckyだった。

「え、えーと、私の名前は高田伊那です!よろしくお願いします!」
「硬い硬い!もっと柔らかく!君は元気いっぱいのアイドルの役なんだから、もっと元気にしないと!」
「は、はい!」

ああ、こんなことならやっぱりオーディションに行かなきゃ良かった…!

ー時は数日前に遡るー

「ねぇ、高田。」
「…何?」
「あのさ、急にだけど…高田って可愛いよね」
「本当に急だね。からかってるの?」
「いや、そういうわけじゃないんだ。あの、ドラマのオーディション受けてみない?」
「え?」
「ていうかっ、もう応募しちゃったから!じゃあね!」

んなっ、何言ってんの、あの人…。
ドラマなんて、陰キャの私になんて向いてない。
そう言い聞かせたのに。
もしかして秘密がバレたのかな。本当は可愛くなりたいってことと、女優になってみんなに笑顔を届けたいっていうこの願望…

「てなことがあったんですけど…どう思いますかね、管理人さん。」

部活からの帰り道。私の家族が住んでいるマンションの管理人さんがいたので、犬の散歩がてら一緒に帰ることに。

「いやそれ俺に聞くことか?」
「だってあなたも陰キャなんでしょ?気軽に話しかけらるじゃない、陰キャ同士。」
「今サラッと俺の悪口言ったな。」
「そこじゃなくて。」
「うーん、別にお前、まあまあ可愛いからいいんじゃないのか?」
「それってお世辞ですか?」
「いや、でもそんなことより、本当にお前はいいのか?」
「…」
「それって応募してる人たくさんいるんだろ?休んでもいいんじゃないか、嫌なんだったら。」
「…私は、本当の夢を持ってるし、頑張ろうって思ってるし。ちょっとぐらい、イタズラやってもいいかもしんない。」
「いいと思うけど、もしそれがいじめだったらどうすんだ?大丈夫なのか、それ?」
「いじめでもやってみる。だってイタズラだもん。…ありがと、管理人さん。なんかやろうって気持ちになった。」
「それならそれでいいんだが。」

この人と話すと時々動物に見えることがある。ダルそうな目をしてて、でも遠くを見れるような目。一体この人は何を見れるんだろう…。そう思った。

そのチャレンジ精神の甲斐あって、私は奇跡的に合格して、大役を務めることになった。
んだけど、このポスターの下の人って…私が推してる人なんじゃ⁉︎
早速後悔したけど、やるからには全力を出し切るから。見ててね、管理人さん。

 
挿絵

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