キース様の点数
わたくしはキース様の腕の中で身を起こすと、うっとりと微笑みながら言ったわ。
「キース様はわたくしにデビューのお祝いをしてくださったのでしょう?大人になるって素敵なことだわ。でもこの事をお兄様に知られたら、先程の様子ではきっともう、キース様に会えなくなってしまいそうだし、乗馬も許して貰えなくなるわ。キース様、このことは二人だけの秘密にしましょう。そうしたら、もっと素敵なこと…教えてくださるのでしょう?」
キース様はゴクリと唾を飲み込むと、私の手を握りしめて掠れた声で言ったの。
「アンナマリー、君は天使なのか、悪魔なのか。…僕を虜にするだけじゃなくて、眠れなくするなんて酷い人だ。…分かった。君のために、アンソニー達には秘密にしよう。僕も君にまた会いたい。…素敵なことをもっと教えてあげたいんだ。」
「…嬉しいですわ、キース様。…そろそろ、お兄様達が探しに来る前に戻りましょう?わたくしすっかりお腹が空いてしまいましたわ。うふふふ。」
わたくしは、必殺邪気のない笑顔を綻ばせるとキース様と皆の居る場所に戻りましたわ。時々絡み付くキース様の熱い視線を感じたけれど、わたくしはまるで子供のようにお兄様にジャレついて振る舞ったの。あれじゃあアンソニーお兄様にバレそうよ?キース様。
さて、同じ狩場で何匹も狩るのは上手い狩人ではないわね。周囲の興味深々な視線を知らぬふりで、わたくしの存在のみを十分印象付ける事には成功したので、さっさと屋敷に戻ったの。
夜、ベッドで横になって、私は指で唇を押さえながら昼間のキース様の口づけを思い出していたわ。私がなぜデビュー前からこんなに野望を叶えるべく危ない橋を渡っているのか、本当の気持ちは誰にも分からないでしょうね。
私が前世の記憶?というより知識を思い出したのは、14才の時だったわ。前世の私は多分奔放なタイプだったみたいで、男達を弄んでいたの。その罰が当たったのか早死にしたようだけど、奔放さには理由があったわ。
自分にピッタリな相手を見つけるためだったわ。確か遺伝子的にも自分と違えば違うほど相性が良いみたいでしょ?相性が良ければ、きっと体液も甘く感じるはずだわ。前の世界ではお試し的に色々な男性と付き合えたけれど、ここは貴族社会。難しいでしょうね。
でも前世の記憶が私を駆り立てるわ。今日のキース様のように、上手くやれば少しでもお試し出来るわ。お味見程度でもやらないより、やったほうがましだもの。
私はもう一度、野望を胸に抱くと、キース様は75点と手帳に書いて、にこやかに眠りについたわ。…キース様、今日眠れるかしら?ふふ。