キース様をお味見よ?
結局我が家のお兄様方が凄腕のダリアとリリーに叶うわけもなく、私とキース様は二人きりの早駆けデートに解放されたわ。
ふふふ、さぁキース様を味見しちゃいましょう。
キース様の見事なエスコートぶりで、乗馬を楽しんだわ。ほんと、湖畔は素敵なところね?
私は大きく息を吐き出すと少し疲れたフリで、休憩を強請ったわ。キース様は優しく微笑むと先に馬を降りて、私が降りるのを手伝ってくれましたの。
私はキース様の手を取ると、キース様に抱きつきながら胸元を押し付けてゆっくり馬から滑り降りました。キース様の首元から立ち上る香りは柑橘の良い香りで、なかなかの合格点だったわ。私が地面に足を着けてもキース様は私を腕から離して下さらないの。何て上手くいったのかしら!
「…キース様?」
私は口を小さく開けてキース様を見上げました。キース様は少し迷っているご様子でしたわ。ここは私が背中を押して差し上げないといけないみたいね?
「ふふふ。キース様は私のこと、小さな女の子の様に思ってらっしゃるのね?私はもう大人ですもの、ちゃんと馬からも降りれましてよ?」
「…君を小さな女の子なんて思うはずがない。アンナマリー、君はとても魅力的だ。もうすぐデビューするほどだ。君は輝いてるよ。」
そう甘く囁くと、わたくしの唇にそっと口づけたの。私は前世ぶりの異性との口づけにすっか嬉しくなってしまって、思わずおねだりしてしまったの。
「…素敵。デビューしたらうっとりする様な口づけをしてもらえるってお姉様方がおっしゃってたけれど、本当だったわ…。」
そう言って閉じた目を音が鳴るくらいゆっくりと目を開けたの。目の前にはさっきとは違う、濃い緑色になった瞳でわたくしを見つめたキース様が言ったの。
「…アンナマリー、私が君に本当に蕩けるような口づけをしてあげるよ。」
そう言うと、さっきの礼儀正しい口づけとは違う、欲望の滲み出るような口づけをしてきたわ。キース様の舌が私の唇の隙間を何度も撫でさすって、私は思わずねだるように口を開いてしまった。私の舌を軽く吸い上げて、粘膜を撫でさするものだから、ゾクゾクと背中に痺れる快感を感じて…。
私の甘いため息はキース様に呑み込まれて、わたくしはキース様の腕に縋りついて、蕩けるような甘い口づけを受け取ったの。誰かが近づく気配がして、キース様はわたくしをそっと抱きしめると、赤らんだ顔でわたくしを見つめて言ったわ。
「…アンナマリー、私はすっかり君の虜だよ。」