バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第13話 ミーアと出会いました

ラスクさんに手を引かれて冒険者ギルドからラスク亭へ。



「ヒロシ君、ちょっと強引だったけど申し訳ない。是非専属でお願いしたいんだ。」



「ラスクさん俺って今日冒険者登録したばかりですよ。本当に良いんですか?」



「いいんだ。俺の目に狂いはないさ。君ならフリーでも充分やっていけると思うんだが、この国のことをよく知らないだろう。



結構この国は治安が悪いんだよ。特に君みたいに優秀な新人冒険者はカモにされるケースが多いんだ。



君には俺もところで実績を作って、冒険者としての確固たる地位を築いて欲しいと思っている。」



「わかりました。そこまでおっしゃって頂けるのであれば、ラスク亭の専属として頑張らせて頂きます。」



「ありがとう。それでは報酬の件なんだが、ギルドの規定に従わせてもらうよ。



専属契約料が本来Fランクであれば月に8000ギルなんだが、君の場合はCランク相当の15000ギル払おう。

それと買い取り金額だが、ギルドの査定に基づいた金額となる。それを専属契約料にプラスして報酬額となるよ。



専属契約料は毎月月末に、買い取り金額は、納入都度となる。」



「はい。条件は分かりました。それでお願いします。」



15000ギルあれば、宿の支払いは保証されたことになる。俺にとっては願ったり叶ったりだ。



「じゃあ、正式契約書を書いてギルドに提出しに行こうか。」



ラスクさんはすぐに専属契約書を作成し、俺と一緒に先程の道をギルドに向かって逆戻りした。



「さっきはすまなかったね。これ正式な専属契約書だ。ヒロシ君は字が読めないから、代わりに読んでやってくれないか?」



「契約料はCランク相当、買取り料はギルド相当額と。

ヒロシさん、説明を受けた内容と一致していますか?」



「はい、大丈夫です。」



「そうですか。わかりました。専属契約書受理します。

ヒロシさん、規則なので2週間に1回程度はギルドに顔を出してくださいね。

最初から専属契約は大変だと思いますが、ヒロシさん頑張ってくださいね。

ラスクさん宜しくお願いしますね。」



「ミルクさん、ありがとうございます。」



俺はギルド受付のミルクさんにお礼を言って、再びラスク亭に戻った。



「じゃあヒロシ君、今日から頼んだよ。」



「はい、宜しくお願いします。」



「早速だけど、これがウチのメニューにある食材の一覧と必要量だ。

採れる場所も書いておいた。



誰かに読んでもらいな。



これだけは必ず確保を頼む。



2枚目は、余裕がある時に取ってきて

くれたら良い食材だ。



食材が入った時に特別メニューとして出すことになる。」



「分かりました。では行ってきます。」



「気を付けてね。」



店に出て来たリルちゃんも心配そうな顔をしながら、送り出してくれた。



よし、初仕事だ。頑張るぞ。




俺は検問のある門を避けて王都の人間が日常出入りする門から外に出た。



本当は街道に繋がる6つの門から出ることが推奨されているのだが、いちいち検問を通ると時間が掛かってしようが無い。



だから、王都に住む住人はこの裏門と呼ばれる小さな門を使って外に出ることがほとんどだ。



この門にも門番はいるのだが、いつも出入りする住人の顔は大体覚えているらしく、特に呼び止められることも無い。



俺は初めて通るので、宿のマリンさんに付き添ってもらって、門番に挨拶をしてから外に出たのだった。



今日は街から最も近い森にあるキノコ3種と蜂蜜や果物なんかを採取する予定だ。



俺は最初から無理はしないタイプの人間なのだ。




森に着いて食材を探す。



キノコと果物はすぐに見つかったんだけど蜂蜜を取るためのクイックリー・ビーの巣がなかなか見つからない。



俺はクイックリー・ビーの姿を求めてどんどん森の奥深くに入ってしまった。



未だ昼前だというのに、森の中は夕方のような暗さだ。



とりあえず準備しておいた剣を収納から出して、下草を刈りながら道なき森の中を進む。



時々魔物や巨大な虫が出てくるが、あの草原に居た奴等と比べたら大したことは無い。



収納に次々と狩った獲物を入れていく。



だって、何が売れるか分からないんだもの。



そう言えばクイックリー・ビーも未だ見たことが無かったんだ。



蜂蜜にビーってくらいだから、蜂の魔物だと思うんだけどね。



とりあえず、どんどん狩って収納に入れていく。



2時間くらい歩いたら、広い空間が現れた。



半径10メートルくらいだろうか。



木がなぎ倒され、草が燃えて薄くなっている。



剥き出しになった地面にはいくつもの小さな穴で、デコボコになっている。



まるで誰かが魔法で争った後のような感じがする。



「はっはっはっはー。人間、とうとう来よったな。」



上を見上げると、頭上に魔人が居た。



頭から爪先まで黒一色。

頭の上にはツノが2本あり、大きな黒マントに赤い目とくれば、間違いないだろう。



だって、ラノベに出てくる魔人と似てるんだもの。



「我の名はミーア。

ミーア・シュナウザーだ。

ここから先は僕の領地だ。早く去った方が身の為だぞ。



何、攻撃してくるならば、相手をしてや「失礼しました、帰ります。」るぞ?

って、お前戦って行かないのか?」



「ええ、戦いませんよ。あなた強そうだし、戦う理由もありませんし。」



俺は、回れ右をして元来た方角に歩き出した。



「ちょちょっと待てよ!

僕は魔人だぞ。お前達人間の天敵じゃないか。



斃さなくていいのか?」



「やはり魔人さんでしたか。

俺は魔人さんに何の恨みもありませんし、魔人さんは強いと相場が決まっていますからね。



俺は100年生きなきゃならないんです。



こんなところで無謀に死ねませんよ。」

しおり