為次
光の扉から異世界に飛ばされた僕とNo.9は、共に異世界を脱出するためパーティーを組んだわけだが。
まずは、集落を探すことにした。
「なあ、まず何をするかプランはあるのか?」
「ちゃあぁんと、あるよっ」
「まずは、ナビゲーターを見つけるところからかな〜」
そういえば、モニターの男声がそんなようなこと言ってたな。
「本来なら、着地地点にあるはずなんだけれど〜」
「にえきらない言い方だな」
「私たち、2人で入ってきちゃったからNo.10と私で着地地点を引き合って、そのせいでズレが生じてしまってるのかな〜」
自業自得だな。
「まあ、ナビゲーターからは私の位置を把握しているはずっ」
「ちょいと、お待ちな」
前方から女声。
「道を歩くときは前を向いて、お歩きな」
一瞬、はっ!としたNo.9だが直ぐに警戒体制へ移っている。
「おい!No.199っ!気づいたか?」
「いーや」
彼女が探知できないものを、僕にできるわけがない。
目の前に見えるのは、声柄も口調も全く合わない少女だ。
10から12歳くらいだろうか。
「このガキ、私より強いっ!」
「そうじゃな、良い判断じゃな」
No.9が小声で囁いてきた。
「やられる前に殺す、あなたは自分防衛だけ意識してっ」
そう言って彼女は、戦闘体制をとった。
「3、2、1」
小声でそうカウントすると、彼女は目の前の少女へとナイフを構え突っ込んで行った。
ぱっ!という音と共にナイフが落ちる。
「じゃからのぉ、待たれと言ったんじゃがな」
少女はNo.9のナイフを構えていた右の手首をがっしりと掴んでいる。
見るだけで理解できる、少女の力の強力さ。
「わしに敵意は無い!お主らかの勘違いじゃな」
相変わらず、少女の見た目にそぐわない女声だ。
「うるさいわっ!敵意がないなら放しなさいっ!」
No.9は、きぃ〜!という表情で手首を掴まれたままだ。
少女は、No.9を見つめ、
「なんじゃかの、落ち着きがな」
少女は間をおいて、
「まあ良い!、このままでな」
「わしは、為次!この世界のナビゲーターじゃな、No.9はどちらかな?」
こんな少女がナビゲーター?
だが、強さといい立ち振る舞いといい違和感は感じていた。
「てことはっ!あなたが私のナビゲーターっ!?」
No.9は手首を掴まれたまま、今度は驚きの表情へと変わっている。
「お主か!わしが直々に迎えに参ってやった!」
少女はもう一度No.9の顔を伺い、
「わしは為次!狐じゃ、今はこやつの体を借りているだけで真体はいずれ見せるとしてな」
少女はニコリ幼なげに笑う
「よろしく、頼むな!」