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16話 葛藤

場面は戻り、王宮。

「アルフ・・!!お前だけは許さない!!」

全員が俺の方を見た。

「ツルギ・ケイ。何があったのじゃ?アルフはお主が死んだと言っておったが。」

ルリシア女王が1番先に口を開いた。

「親玉ゴブリンを討伐したのはアルフじゃなくて!!俺ら、7班なんです!!それで、アルフがその手柄を横取りするために、負傷して動けないミラ班長に魔獣を引き寄せる匂いのついた液体の入った瓶を投げつけたんです!!。そのせいで、ミラ班長は魔獣に食い殺されました・・。」

俺は話しながら、思い出して、涙が出そうになった。血眼でアルフを睨みつけた。

アルフは、冷汗を流して焦っていたが、徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。

「何を言っているんだお前!!証拠はあるのか?証拠だよ!!聞くに堪えない!!」

殺す・・!!こいつ・・まだ白を切るつもりか!!殺してやりたい!!

俺はアルフに対して殺意を抱く!!

「証拠なら・・ある!!これを見てください!!」

俺は、元の世界から偶然この世界に持ち込めていた、スマートフォンを取り出した。

「なんだその板は!!」

俺は、フォトを開き、写真を見せる。

ルリシア女王や、リリス隊長も興味津々にその写真を見ていた。

その写真には、アルフが投げつけた瓶の破片が写っていた。瓶には、赤字で、アルフ・マイトと熱で刻まれた文字があった。

「これは・・アンタ宛に、作られた薬なんじゃないのか・・?こうやって都合の悪い見方を殺すために、薬屋に発注したものなんじゃないのか・・?」

俺がアルフを問い詰める。間抜けに、名前まで彫ってあるんだ。言い訳があるならしてみろ・・!!

アルフは尻餅をついた。そして、頭を抱えた。

「・・・はは・・く・・そ・・・・・・・・・。そうなのかよ・・・。くそがああぁあああ!!!!」

アルフは発狂し、頭を掻きむしった。

ルリシア女王が一歩前に出た。

「アルフ。お主は自分の罪を認めるかい?」

「はは・・はっは・・。裁判だ・・。裁判を希望する。」

「は・?」

「俺は裁判を希望する!!罪があるかどうかはその後に判断しろ!!この国の決まり事だ!!!いますぐ罪を受ける必要はないそうだろ!!」

アルフは引きつった表情で隊長や女王たちにそう言った。

こいつ・・・。まだ諦めねえのか・・・。

ケイ「いい加減諦めろよ・・。お前!!往生際が悪いぞ!!」

しかし、アルフは鼻で笑い返してきた。

「フッ。諦めるも何も・・。裁判は行われる!!それでいいだろ・・。後は、弁護人や、裁判官がすべてを決定する。お前の出る幕はもう終わりだよ・・!!」

もし、こいつが裁判で無罪・・いや、死刑にならなかったらどうなる・・?殺されたミラ班長は納得できるだろうか・・?できるわけがねえ・・。

俺はどうしようもない怒りが抑えきれなくなった。もう思考もできないくらいに・・。

「殺す・・・。」

俺は、小さい声でそう呟いてしまった。

「おい・・!!こいつ今この王宮で「殺す」と発言したぞ!!これは立派な無礼だ!!!!」

アルフは俺に指を指しながら叫んだ。

俺は、MPを全身に纏わせ、体がかってに臨戦態勢に突入していた。

もう、感情で肉体を支配できなくなっていた。

「あああああ!!!殺す!!!お前は殺さないとダメだ・・!!!」

俺は、あの魔獣共を一人で皆殺しにした。その経験値は大きい。以前とは比べ物にならないくらいパワーアップしていた。

「素晴らしい・・・。」

リリスがそう呟いた。

その時だった。俺の背後から鎖が現れ、俺の首や体に巻き付いた。

そして、そのまま廊下に引きずり出された。

「・・・なっ・・?」

俺は鎖に縛られたまま、後ろを見ると、ソフィアさんがいた。

ソフィアさんは鬼の表情をしていた。

「ケイ君。王宮でのご無礼。許せません!!」

そのまま、城の外まで引きずり出された。

俺はようやく頭の熱が下がってきた。

ソフィアさんは外に俺を引きずり出すと、俺を思い切り蹴り飛ばした。

俺は、木々にぶつかり、なぎ倒しながら吹き飛ばされた。

「ぐあああ!!!」

吹っ飛ばされた先で、倒れこんだ。

ソフィアさんがすぐに飛んできた。

俺の首を絞めた。

「これは教育ではない、教訓です。さっきの行いを反省してください!!」

・・強い・・苦しい・・・痛い・・。

俺が、首を絞めているソフィアさんの腕をつかむ。

「抵抗するんですか・・?いますぐ「ごめんなさい」と言いなさい!!」

俺のしたことは間違っていたのか・・?確かに、王宮で女王様の間でアルフに襲い掛かろうとしたのは、無礼だが、ミラ班長が殺されて我慢できなかったんだ・・・・・。

「・・・あ・・・あいつが悪いんだ!!・・・俺は悪くない・・・!!」

そう言い返すと、ソフィアさんは般若の表情になった。

「これは、ただのお仕置きじゃ済みそうになさそうですね!!半殺しですよ!!」

そう言うと、首に爪を立てて絞めてきた。首から血が流れでいる。

「ぐう・・・・。ああああ!!」

俺が、うめき声を上げる・・。力負けしていてびくとも動かせない・・。

「あなたは何がしたいんです・・?!」

俺はハッとした。

俺は何がしたいんだ・・?俺の目的はなんだ・・?

そうだ・・。俺の目的はミッションをすべてクリアして元の世界に帰ること・・。ミッション2の初任務に行くもクリアした。

俺は早くこの世界から出たいんだ。だから、この世界で出会ったばかりの人が殺されたくらいで、何感情を抑えられなくなってんだよ・・。

元の世界に帰れる最短ルートを進む最善策に徹した方がいいだろ!!

「・・・ご・・ごめんなさい・・」

俺は、とうとう謝ってしまった。

「ようやく反省する気になったんですか・・?本当ですか・・?」

最後に、ソフィアさんはさらに首を絞める強さを強くした。

「ごめんなさい・・・ご・・ごめんなさい・・」

俺が、涙目になって何度も謝罪するとソフィアさんの締め付けていた腕の力を緩めた。

「もう、二度とこんなことはしないでくださいね・・・?次やったらどうなるかわかっているでしょうね・・・?」

「はい・・・。」

俺は、アルフを忘れて、これからも普通に任務をこなし、ミッションを一つずつクリアしていこうと思った・・。

この世界の人に感情移入などしている場合じゃない。

俺は早く元の世界に帰りたいんだ・・。



その日の夜。

なかなか寝付けなかった・・。

忘れようと思っても、ミラ班長の死は忘れることができない・・。

とてもかわいそうだと思った。

普通に、幸せに暮らしてほしいと思った。

胸が痛い・・。どうして、あの人があんな目に合わなきゃいけないんだ・・。

まだ会って1日しか経っていない人のことなのに、ずっと考えてしまう・・。

考えたらダメだ・・。俺は誰かのことを考えている場合じゃない・・。考えるなら自分のことを・・・。そう、自分に言い聞かせてみるが、やっぱり忘れられない・・・。

どうすればいいのかわからない・・・。この世界に来てから、本当につらいことが多すぎるよ。

異世界に召喚されて勇者とか言われても、全然嬉しくないし・・・。

ただただ苦しいだけじゃないか・・・。なんで俺が、こんなに苦しまなきゃならないんだよ・・・。

ラノベや漫画やアニメで見た異世界転生ものを体験してみたいと何度かは思ったことがあるが、実際にするかといわれたら断る。

もし、自分が異世界転移したなら、その異世界の誰かのために戦えるほどの余裕はないんじゃないかと思っていたら案の定そうだった。

思考ができなるほど、怒り狂い王宮であんな真似をした自分に驚いているくらいだ・・。

その時だった。

ピッ・・!!

パッドにミッション3が表示された。

ミッション3 :この異世界で、自分のために戦え。他人を傷つけてでも生き残れ。他人の心配をしている暇があるならば、自分を高めろ。

なんか、いきなり命令口調だな・・。

そもそも、このミッションは誰が俺に送り付けてるんだよ・・。目の前に居たらぶん殴ってやる・・。

言われなくても自分のために戦って、元の世界に帰ろうと決めていたところだよ。

だが、もう一度ミッションが送られてきた。

ifルート ミッション4 :この異世界で生きがいを見つけろ。自分のためではなく困っている誰かのために戦え。自分の心配をしている暇があるのならば、誰かを救うために自分を高めろ。

どういう事だ・・。このどちらかのルートを自分で選べってことか・・?

くそっ!!何がしたいんだよ・・・。

結局俺は結論を出せなかった。

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