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『20XX年 7月30日
隼くんが私に対してどんな感情を抱いているのか…。
それは、私には伝わってきていた。
私だって、一応は大人だ。
相手の自分へ向けてくる感情に勘付かない程鈍感ではない。
だけど一方で、この気持ちを……
恐らく隼くんが私に感じ始めているであろう気持ちを、自覚させることには勇気が必要だ。
何故なら、それを認めさせてしまえば…
私も隼くんへ感じている同じその気持ちを、何とかしなければならなくなるから。
隼くんと私がお互いに感じる気持ちの名前は、きっと同じ。
だけど果たして、互いにそれを自覚することはいいことなのだろうか…?
社会的な目とか法律的な縛りとか倫理的な悩みとか、そんな次元ではなく……。
ただこの気持ちの張本人たる自分として、この気持ちを明確にすることへの恐怖と不安を……
必死に胸にしまいこんで、今日も隼くんに対しては「近所のいいお姉さん」を演じ続けるのである。