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土曜日。
僕たちは約束通り、いつものベンチで待ち合わせた。
今日は菜摘さんが運転して、色んなところに連れて行ってくれると言う。
「隼くん、ス〇バに行ったことある?」
「行ったことはないです。よく、クラスメイトが新作が美味しいとか言ってるのは聞くんですが…」
「そう!今の新作が本当にオススメでね、ぜひ隼くんにも飲んでもらいたいんだ。」
そう言ってハンドルを握る菜摘さんは、いつもよりお洒落をしているような気がした。
普段はTシャツにジーパンというラフな格好で遊んでくれているけれど、今日は白のブラウスに薄いピンク色のロングスカートを身に纏っている。
口紅もいつもより明るい色だから、菜摘さんが笑うたびについ口元に目が行ってしまう。
そして車の中という、いつもとは違う距離感に、僕は心なしか安心しきっていた。
「隼くん、どう?美味しい?」
ス〇バで菜摘さんがオススメしてくれた新作のフラペチーノを飲んだ。
苺風味のそれは凄く濃くて冷たくて、口の中が甘さでいっぱいになった。
「美味しいです!僕は甘いものが大好きなので、こんなに美味しいものを今まで知らなかったのは勿体無いと思いました。」
「隼くん、甘党なんだね!じゃあこれからは新作が出る度に私と一緒に飲みに来よう。私もス〇バのフラペチーノは大好きだからさ。」
「はい!楽しみです!」
僕は菜摘さんと一緒に、またここで甘いものを飲む約束をしたことがとても嬉しかった。
口の中の甘さは、少し時間を置いて苺特有の酸っぱさに変わった。
甘くて酸っぱいのは、この日飲んだフラペチーノだけじゃない。
2人が過ごした時間そのものが、そんな味がしたのだった。