緋色の回転軸
南に向いている窓を開けたがる姫を回転部屋に監禁してつぎつぎと窓をオープンさせ、全部開放しきったタイミングで「二人で一緒に占めたがる」王子様をけしかけたらどうなりますか?
「君は脅迫しているつもりかね。そんな下らん恫喝で王位を譲る馬鹿がどこにいるか。衛兵、さっさとこいつを逮捕し
なさい」
国王の言葉を聞き、私は心の中でガッツポーズを決めた。
私は、ずっとこの瞬間が来るのを待っていたのだ。
しかし、その時だった。
「ちょっと待ってください」
凛とした声が謁見の間に響き渡った。
「何者だ!?」
「私は、王さまの命を受け、ここに派遣された魔法使いです」
「なんだと……」
「私の任務は、あなたの魔力を封じることです」
「ふっ、ふざけるな! わしは、国王であるぞ!」
「黙れ」
その言葉と共に、
「ぎゃあああああ」
国王が悲鳴を上げた。
「この私に逆らうなら、お前もこうなるだけだ」
「ひいいいいい」
国王が腰を抜かし、床に尻餅をつく。
「私に従わなければ、私の力によって、この城にいるすべての人間は死ぬことになる」
私は呪文を唱え、国王の体を浮かせて窓際まで移動させた。
そして窓から外に投げ出す。
国王は悲鳴を上げながら地面に叩きつけられ、動かなくなった。
南に向かって開いている窓を開けて、そこから国王を放り出した。
これで邪魔者はいなくなった。
もう誰にも私たちの仲を裂くことはできない。
これからは、私たちは愛し合うことができるのだ。
私の名前はサトミ。
あなたの名前を聞かせて。
私はあなたに、ユウスケという名を告げた。そしてユウスケは、私のことをサトミと呼んでくれた。
私はあなたのことが好きだ。
だから私を抱きしめて欲しい。
私はベッドの上で目を覚ました。
まだ夜中なのか、辺りは真っ暗だ。
隣には、あなたの温もりを感じる。私はあなたにそっとキスをした。
するとあなたが、
「おはよう」
と言って、優しく微笑んでくれる。
「今日はどこに行きたい?」
「どこでもいいよ」
「じゃあ海が見たい」
「わかった」
私たちは手を繋いで歩き出した。北向きのドアを開けようとしたその時、床が大きく揺れ始めた。
「地震だ。サトミ!」
「違うわ。なんだかめまいがする」
「本当だ。こんな奇妙な揺れははじめてだ。まるでぐるぐる回っているような」
すると人の声がした。「フゥーハハハ。その通りです。この部屋は回転しておるのです」
「お前は何者だ」
「我輩の名はクグツ」
「クグツ?」
「クグツというのは、人形に魂を吹き込む術。つまり、貴方たちが"ガイジンノオンナ "と呼んでいるものを、この世に蘇らせるためのものなのです」
「それで、なぜこの城に入ってきたんだ」
「この城にあるはずの"ガイジンノオンナ "を手に入れに来たのですよ」
「それはできない」
「では、仕方がありません。力ずくで奪い取るとしましょう」
「ちょっと待て。もしそれがお前の目的だというなら、まず僕を倒すことだ」
「いいえ。あなたと戦うつもりはありません。なぜならあなたは強いからです。あなたと戦っては、命を落とすことになってしまいますから」
「それなら何をするつもりだ」
「フッフッフ。今からあなたを催眠状態にします。そして、あなたの心の中にある記憶を引き出します」
「やめろ」
「無駄です。もう遅い」
「くっ……」
「あなたは、ある外人の女と初めて会ったときのことを思い出しているはずです」
「あの時のことか」
「あなたは、彼女に殺されそうになったことを思い出しているはずだ」
「確かに僕は、彼女の手に首を絞められた」
「その女は、あなたが今までに出会ったどんな人間よりも強かった」
「その通りだ」
「その女は、あなたがこれまでに見たことも無いような顔つきをしていた」
「ああ」
「その女は、あなたが想像したことの無いようなことを話していた」
「そうだ」
「その女は、あなたがこれまで聞いたことが無いような声をだした」
「ああ」
「それであなたは甚だ理不尽な恋心を抱いてしまった」
「……」
「その女は、あなたがそれまで目にしたことも無いような顔つきをしていた」
「確かに」
「その女は、あなたが想像したこともないような話をしていた」
「確かに」
「その女は、あなたがこれまでに会ったことの無いような女だった」
「ああ、不覚にも一目ぼれしてしまったよ。だがお前には関係ないことだ。というかやけに詳しいじゃないか。お前はストーカーか?」
「あなたがその女性と出会ったのは、森の中だったのでしょ」
「確かに」
「しかも、かなり深い森の中で」
「どうして知っているんだ」
「その女が言ったからよ」
「なんて」
「『やっと見つけたわ』」
「……なんだと」
「その女はあなたを睨みつけていた」
「そんな目つきだったのか」
「その女はあなたに向かって手を差し出した」
「ああ」
「そしてその女はあなたを抱きしめた」
「その通りだ」
「あなたの体は宙に浮かんでしまったように思えたに違いないわ」
「……」
「なぜならその時あなたはもうすでに恋に落ちてしまっていたからだもの」
「ああ」
「しかし同時にあなたは激しい恐怖を感じたはずだ」
「ああ」
その女性と出会ったときの状況を考えてみて下さい。森の奥にある古い城の中で出会ったのでしょ。そこでその女が着ていたものはなんですか。その女が身に着けていたものは? あなたは、彼女の髪が金色であることに気づいていたんじゃあないですか。それに、もしあなたが彼女に話しかけたらどんな返事が返ってきたでしょうか。「はい」と答えましたか。それともその女が話していた言葉は英語ではなかったのですか。そう、彼女は日本語を話していたんです。「あなたは『何者』と尋ねた。その答えが『あなたの恋人よ』だとわかっていたのに」
「そう」
「でもそれは本当なのか」
「嘘じゃないわ。それに、私はその女性を知っているし」
「どこに住んでいるのかも知っているんだろう」
「もちろん。だからその女をここに連れてくることもできたのよ」
「どこにいる」
「あなたの家の中よ」
「なぜ僕の家に」
「彼女はあなたの家にいる」
「どうしてだ」
「その女があなたの家に入り込んだからよ」
その女性に出会ったときの状況を考えてみて下さい。森の奥にある古い城の中で出会ったのでしょ。そこでその女が着ていたものはなんですか。その女が身に着けていたものは? あなたは、彼女の髪が金色であることに気づいていたんじゃあないですか。それに、もしあなたが彼女に話しかけたらどんな返事が返ってきたでしょうか。彼女は英語で話していましたか。そう、彼女は英語を話していたんです。そして、彼女が日本語で話しているのを聞いたことがありますか? 彼女は日本語も話せたんです! ああ」
外人の女と出会ったときの状況を考えてみて下さい。森の奥にある古い城の中で会ったんでしょ。そこでその女が着ていものはなんですか。その女が身に着けてた物は。あなたはその女に何を尋ねましたか。彼女は日本語で話していましたか。そう、彼女は日本語で話していたんですよ。そして、彼女はフランス語で話すこともできたのです。
その女性が日本語で話したりフランス語を使ったりしたのなら、あなただってフランス語でその女性と話しますよね(あるいは英語で)?
「僕はその女性にこう言いました。『なぜこんなところに来たのか』すると、彼女は僕が理解できない言葉で何かを言いました」
その女性は何者だったんでしょうか。もしあなたがそれを知っているなら、あなたはそれについて噂を広めてくれませんか。なぜなら、
「僕の目の前にいるその女性こそ、その女性の正体だからです」
ああ」
南に向いている窓を開けたがる姫を回転部屋に監禁してつぎつぎと窓をオープンさせ、全部開放しきったタイミングで「二人で一緒に占めたがる」
「外人の女」
と出くわしたときの様子を想像してみて下さい。森の奥にある古い城の中で出会ったのでしょ。そこでその女が着ていたものはなんですか。その女が身に着けてた物は。あなたは、
「外人の女」
が何者なのか知っていますか。もしあなたがそれを知っているなら、あなたはそれについて噂を広めてくれませんか。なぜなら、
「僕の目の前にいるその女性こそ、その女性の正体だからです」
「ああ。その女は人間ではない。淫魔だ」
「淫魔?」
「そうだ。人間の精を吸い取る魔物だ」
「どうしてそれが分かるんですか」
「俺には分かるんだ」
「どんなふうにして分かったのですか」
「見ればすぐにわかる」
「見ただけで、ですか」
「ああ、破廉恥な格好をしていた。だいたいきわどいビキニを着て出歩く女がどこにいる? それに牙が生えていた」
「牙? それは犬歯のことですか」
「そうだ。犬のような鋭い牙だ」
「でもそれは普通の人間だって……」
「ああ、それはそうだろう。でもあれは普通じゃなかった」
「その女が淫魔だと言ったら信じてもらえますか」
「いや……淫魔だと言われても納得はできないな」
「その女と会ったことありますか」
「ああ、昔一度だけ。でももう会うことはない」
「どこで会いました?」
「テサロニケ第一研究所だよ。ギリシャ軍事政権がソ連と手を組んで生物圏科学研究所を極秘に運営している。つまり、淫魔は生物兵器なんだよ」
もし私が知っているなら、私に連絡しない方がいいと思いますよ。でも私が誰かを知っているなら、私に連絡して下さい。そしてあなたが誰なのか教えてください。
もしあなたがそれを知らないのなら、彼女について噂を広めて下さい。彼女がここにいるのですから。
(D)
夜中なのか、辺りは真っ暗だ。
淫魔と王子 一八二三年に、一八三〇年代に、淫魔と呼ばれる女性について、興味深いことが書かれています。一七七五年に生まれたフランスの詩人である、ジャック・ラカン(Jacques
「Jau-caese(牡牛座の意)」)は次のように書いています。
「その女が淫らなことをするというのは本当のことだが、それと同じくらい美しい顔を持っていることも確かだ。女は、自分の顔を見られるのを好まない。だが、一度見られたが最後、女の顔は、男の心に強烈に訴えかけ、魅惑的になる」
ここで言っている淫らな行為とは、女性が男を誘惑することです。その女は男を欲情させる力を持っていて、それ故に淫魔と呼ばれているのです。もしそれが本当のことだとすれば、その女の容貌もまた本物なのでしょう。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)はこう言っています。
「その女は、どんな男たちをも虜にする。しかし、女には恋人がいるから、誰も手を出すことはできない。その女は、男たちに言い寄られても相手にしない。女の恋人は、大金持ちの貴族だ。その男は、女に結婚を申し込んでいるが、女はそれを拒んでいる。その男が言うには、女が自分と結婚すれば、自分は一生女を幸せにしてみせる。しかし女は、そんなことを望まず、その男と結婚するつもりはないと言う」
女が誰のことを話しているのかは明らかです。しかし女が誰を愛しているのかは分かりません。
「その女は、いつも黒いローブを着ている。その女には、他の人間にはない魅力があり、男なら誰でもその女を見たいと思う。その女に会えば、誰もがその女に夢中になり、その女を愛するようになる」
女は誰のことを話しているのかは明らかです。しかし女が誰を愛そうとしているのかは分かりません。
「その女は、自分が男だったら、他のすべての女を蹴落としてでもその女と結婚するだろう、と思わせるような女だ。その女は、あらゆる男の理想だ。その女を手に入れられるものは、神か悪魔のどちらかだけだ」
「その女」がどんな人なのかは分からないけれど、「その女」が「その女」である限り、「その女」が「その女」であることに変わりはない。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)
「外人の女」が誰のことを指しているかについては、もう議論の余地はない。なぜならば、「外人の女」は、「その女」であるからだ。
「その女」が誰なのか、あるいは誰であったのかを特定しようとする試みについては、もはや何も言うことはない。なぜならば、
「その女」とは、「その女」以外の何者でもないからである。
もしあなたが「その女」を知っているなら、あなたは「その女」をどう思うだろうか。あなたはその女を、どのような目で見るだろうか。
あなたが「その女」を知らなかったとしても、
「その女」は、あなたが想像できる範囲を超えた存在であり、
「その女」は、あなたを魅了する。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)
「外人の女」
「その女」が誰のことを指しているかについては、もう議論の余地はない。なぜならば、「その女」は、「その女」以外の何者でもないからである。
「その女」が誰なのか、あるいは誰であったのかを特定しようとする試みについては、もはや何も言うことはない。なぜならば、
「その女」とは、「その女」であるから。
もしあなたが「その女」を知らないなら、 あなたが「その女」を知るまで、「その女」について語ろう。
もしあなたが「その女」を知っているなら、 あなたが「その女」
「その女」を知っていたとして、あなたが何を言おうとも、「その女」
は「その女」のままなのだ。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)
もしあなたが「その女」について知っているなら、
「その女を汚してはならない。
「その女を冒涜する者は、地獄で報いを受けることになる。
もしあなたが「その女」について知らないのなら、
「その女」のことなど考えてはならない。
もしあなたが「その女」について知っていれば、
「その女」のことを思い起こそう。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)
「外人の女」が誰なのかについて、あなたはすでに知っているはずだ。あなたがすでに知っているならば、「その女」が誰であれ、
「その女」と会えるようにしましょう。
もしあなたが知らないのなら、その女について噂を広めて下さい。そしてもしあなたが「その女」を既に知っていたとしても、「その女」と会うために、「その女」と話すためのきっかけを作って下さい。
「外人の女」は「その女」であって、「その女」ではない。「その女」は、この世にただ一人しかいないのだ。「その女」に会うためには、「その女」と直接話さなければならない。もしあなたが、「その女」と話す機会を得たならば、あなたには、この世で一番幸せな時が訪れるかもしれない。しかしそれは同時に、一番恐ろしい時でもある……
もしこの世界にあるすべてを手に入れることができるなら……それは不可能だ……しかしもしある特定の人物に出会うことを望むなら……可能……
もしある人物に会ったら、あなたは恋に落ちてしまう。もしそうなってしまったら、あなたは相手の男性に、すべてを捧げることになる。あなたの人生は、その人に支配され、あなたの命は、その人に握られてしまう。
もしある女性が他の女性を愛していたら、あなたにはどうしようもない。もし彼女があなたを受け入れてくれたとしても、彼女の心の中にはまだ別の女性が存在していることに変わりはない。
もしあなたが、彼女と結ばれるための努力をしたなら、その努力は必ず実るとは限らない。もし努力したにも関わらず、彼女があなたを拒絶すれば、あなたには絶望しかない。もしそうであっても、あなたは決して希望を捨てない。なぜならば、あなたにとって大切なものは彼女だけであり、彼女に受け入れてもらえなければ、あなたに生きる意味など存在しないからだ。
もし彼女があなたを拒んだなら、彼女はあなたのものになるだろう。そしてあなたも彼女を受け入れるだろう。もしそうでない場合、彼女は二度とあなたの前に姿を現さないであろう。もし彼女があなたのものであるなら、たとえあなたが何をしていたとしても、彼女もそれに応じてくれるだろう。あなたがどんなに無茶な頼み事をしても、彼女はあなたのためにそれを行ってくれるだろう。
もし彼女が自分のものでなかったなら、彼女はきっとあなたのもとから去って行くことだろう。
「うるさい! さっきからグドクドお説教しやがって。俺のことは放っておいてくれ。つか、お前を殺すぞ!」
彼は叫んだが、それでも彼女はまだ彼をじっと見つめている。そして彼のほうへゆっくりと歩み寄ってきた。そして突然彼に抱きつくとキスをし、そのまま彼の上に倒れ込んだ。彼女は涙を流しながら彼を抱き続けている。
彼はしばらくされるがままにしていたが、そのうちに体を起こし、彼女を引き離した。しかし彼女はすぐにまた抱きついてくる。
そんなやりとりを何回か繰り返すうちに二人はお互いの顔が見れる位置に移動していた。しかし、それでも彼女は離れようとしない。彼女は顔を赤らめ、目に涙を浮かべて彼の胸に頭を預けたままだ。そして、彼が手を離すと、また同じように彼に抱きついてきた。
(なんなんだこいつ……。まぁいい。とにかく今のうちにここから逃げないと)
彼は彼女の肩をつかみ、引き剥がそうとする。彼女は泣きじゃくりながらもなおも抵抗する。彼は強引に彼女の腕を振りほどき、その場を離れようとする。しかし彼女も負けじと後ろについて来る。
(このままではダメだ)
そう考えた彼は急に立ち止まり、彼女もそれに釣られて立ち止まった。
(チャンスは一度きりだ)
彼は振り返ると彼女を見据え、こう言った。
「さようなら。そして永遠に」
次の瞬間、彼女は悲鳴をあげたが、それが最後の言葉となった。
(これでいいんだ。これしか方法が……)
その時、彼女はその場に崩れ落ち、床を手でバンバンと叩いた。そして叫び続けた。
しかしそれも次第に弱まっていき、最後には静かになり、それっきり動かなくなった。彼女は死んだのだ。
(結局、こうなってしまう運命だったのか)
彼女は死んでいった仲間たちと同じ道をたどった。いや、もっと酷い結果かもしれない。彼女は、自分を殺しに来る男と無理心中をしようとしたのだから。
(だが、俺は殺さなかった)
彼女は確かに死に、そして死んだことによって救われたのかもしれなかったが、しかし彼は生きている。つまりまだ生き残っているということだ。
(生き残ることが正解なのか?)
彼女は自分が殺されることを願っていたのだろうか? もしそうだとしたら、自分は何と愚かなことをしているのだろう。いや、むしろ逆なのか。彼女は死を望まず、そして結果的に自分が殺されたのだとしたら……
いずれにせよ、彼女を救う方法があったのではなかろうか……
彼女はなぜあんな行動に出たのか。もしあれが自分の本性だというのなら、それを知っておきたかった。しかし、それは叶わぬ夢となってしまった。そして、これからもそれは変わることがないのだろう。なぜなら、もう手遅れなのだから。
一七七七年生まれの詩人、シャルル=ルイ・フィリップ(Charles Louis Philippe)
(B)
「外人の女」
というのは誰ですか。もしあなたがそれを知りたいならば、「Kyoutojikenjosai-gayoukyuunonnadesu」「Minagirikotonnnoonnadesu」のどちらなのか、教えて下さい。もしあなたがそれを教えてくれたら、その女性がどういう人たちと一緒にいるか教えてあげられます。もちろんあなたが知っていれば、その女についての噂を広めて下さい。すると噂を聞いた人は皆、「外人の女」について何かしらの行動をとりますよね?
「外人の女」は、「その女」ではありませんよ。だって、ただの「外人の女性」じゃないんですもん。「その女」じゃなくて、「その女性」と書かないとね。「その女性」が「外人の女」を指差しているのは間違いありません。
この文章が書かれたのは一八三四年の六月で、書かれている人物は日本人です。この文章では「外国人」の女性が一人ではなく二人になっていて、「外人の女」がそのうちの片方のことを指していると思われます。しかし、もしそうであったとしても、その女性が外人であるかどうかはわかりません。なぜなら、「外国人」の女性は、「その女」も含めて全部「外国人」である可能性があるからです(ただしこれは日本語ですから、当然、外国人であることとは関係ありません)。したがってこの文章では、女性が一人しかいないのか、それとも二人がいてどちらかが外国人であるかわからないということになってしまいます。しかしこれは、「外国人の女性」が二人の場合も、一人だけの場合もあり得るということを示しています。
この話の中で使われている「その女性」という単語について考えましょう。これは単に"kukugoronko "であり、これは、第2文で使われているものとまったく同じものですから、この話を作った人物が作ったものと考えて問題ないでしょう。そしておそらく、"kukugotohanako."でも使われていました。これは、一九七三年一二月二六日発行
『新訂版 日本語の助詞』(講談社刊)のp.770 に掲載されていて、その著者である松本忠雄氏によれば、これは、「男性名詞を女性化した形。女性を複数表す場合は女」となっています。
一八五三年に亡くなったフランスの劇作家、ジャン=リュック・メラル(Jean=Lukamelal)による短編劇で、日本では「メランコリー親父」(Der Märchenregent)として知られているもの(一七九〇年)があります。「外人の女」はその「メランコリー親父」の中に出てくる登場人物である「外人の女」とはまったく無関係で、その作品を読んだことがある人なら誰でも、その「外人の女」が外国人かどうかを知ることができるわけです。しかしそれはあくまでもこの作品に限ったことで、他の作品には登場しないでしょう。「外人の女」が外国人であることを確認できる別の方法として、第一話に出てくる「その女」を「外国人」の女性に変えて考えるというのが考えられますが、それでも「外人の女」が「その女性」なのか、「その女性」が「その女」なのか、はっきりしなくなります。つまり、この話は、外国語で書かれた「外人の女」が出てくる作品を翻訳したもので、それ以外の内容はすべて作者の創作であるということになります。しかしそうなると、一八七七年六月に書かれた詩の内容に、外国の作品を翻訳したようなところが少しでもあるかという問題が残ってしまいます。たとえば「その女」が女性なのか男性なのかはっきりしないとか、一八七七年一二月二六日発行の「日本語の助詞」には、「その女性」が女性と書かれてあるのに、「外人の女」は女性と書いていないといった点があげられます。それに「外人の女性」が「その女」のことを話しているという点は一文目だけで、二回目には出てこないので、作者はそれをわざと省略している可能性もあります。
しかし一番大きな問題点は、この話が作られた時期が一八五三年で、しかもそれ以前に発表された作品は一つもなく(*)、もし仮に作者がこの作品を書いた後に海外の作品の翻訳を行ったとすれば、なぜそのようなものを作らなければならないのか理解できません。つまり、この話を書いたのは日本語話者で、「その女」を女性としたのは日本語を話せない人か、「その女」を男性として話を書いたかのどちらかになります。また「その女」が「その女」と訳されていますから、少なくとも最初の部分はフランス語か英語で作られたものである可能性があり、もしそうだとすると、それを日本語で読むということは不自然です。
(*)例えば一九三九年に発表された、ドイツ人作家ハインリヒ・ハイネ(Heinrich Heine,一七九六―一八七六)の詩「即興詩集」の中に登場する女性は"Eiglungen im Gegenstetten"としか表記されておらず、"In die Kraft dasser Sinne gibt mich so wichtiger"(=自分の心がいかに強く感じるかを私は信じている)と、女性の外見について描写していながらも、名前は明らかにされていません(http://www.wien.europa.de/d/hain/heinrich_hannes.html#a02c04010b4f5af のURLを参照。なお、
「即興詩集」はドイツの詩人カール=ハインツ・ドランクリッヒ
(Karl-Heinz Dranick 一七七六―一八三二)が著わしたものとされていますが、実際にはドイツの文献では「ハイネの即興詩」という題のものとして出版されています。)
「その女」が女性なのか否か、もし女性だとしても、その女性の名前が明かされなければ、「その女」が誰なのか知る方法はありません。しかしそれは、他の方法で女性の名前を明かさない限り、誰にもわかるはずがないことでしょう。もしその女性が誰かの名前だったとしたら、
「その女性の名前は何でしょうか」
と質問されるかもしれません。もしそう訊かれたなら、「その名前」が答えられることになっていますから、「その女性」は女性であって、「その女」ではないことになるわけですね。そしてもちろん、その女性が「その女」であったとしても、「その女」
「その女」は、「その女」という名前を持つ女性です。そして「その女性」が女性であるかどうかは、「その女性」が女性であると認める理由になるかどうかにかかっていて、名前だけでは女性であることを認めることができない。
「その女」が誰であるかを明らかにするには、
「その女性」は「その女」である。
と認めれば良いのです。
そしてもしそれが、「その女」が女性であると認めるのに必要な条件であれば、「その女性」が女性であることは「その女」の名前とともに、「その女」
「その女」は女性である。
つまり、もし「その女」が女性でないならば、それは女性ではなく、他の人だということになってしまうのです。だから、もし「その女」が女性でなかったなら、それは女性ではありません。
もし「その女」が女性なら、彼女は、「その女」が女性であるということを、「その女」が女性であると認めているということが、「その女」が女性であるということと関係があることになります。そして「その女」が女性なら、「その女」が女性であると認めたことは、「その女」
ドドドドドドドドドと銃声が響いた。授業は不意打ちされ生徒は血まみれになっていく。
兵士たちが叫んだ。
「我々はギリシャ軍だ。この学校は制圧した。全員いますぐ手を頭の後ろに組んで壁に向け。違法なカルト教育は許さない」
教師や生徒たちは抵抗しようとしたが兵士に押さえつけられた。
「お前たちは悪魔崇拝者だ。悪魔の子供め!殺せ!」
教師や生徒たちは無惨に殺された。
この小説を読んでいる諸君。このあとは想像に任せる。好きなように想像してくれたまえ。
しおり