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魔王様の三分クッキング♪……魂抜けます

「いやぁ~~~バハマディアでは大活躍だったね。事情はどうあれ魔王軍の侵攻を止めてくれて各国から感謝状やら表彰状やら届くみたいだよ」
ついさっきバハマディア国王と話し合いを終わらせて城に戻ったばかりだが、デンエン国王は一足先に各国から連絡を受けていたらしい。
報告する手間は省けたがこれで終わるはずはない。

デンエン国王はのん気に浮かれているが、あと1国、魔王軍の攻撃を受けている国がある。
ただ、魔王国が3国だったのが2国になったのだ。
パワーバランスも崩れ、戦争を続けている場合ではないはずだ。
このまま残り1国の戦争も終わってくれれば余計な仕事も増えないだろう。

そもそも現時点で戦争の後片付けというほどの事は残ってはいないが、魔王国との異国間交流が始まってトラブルも起きている。

実際高橋の家でもちまちまトラブルが起きている。

「おかえりなさいませ、旦那様」
メイド達や使用人、執事が出迎えるが、少し人数が少ない。
「ルクセルは帰宅していますか?」
「はい、奥様は少し前に帰宅されまして、夕食の用意をされていましたが…」
「何かあったんですね」
「はい、魔国の食材を使用されたのですが、1つ問題を起こす物が混じっており、奥様は倒れたメイド達の介抱をしております」

主なトラブル。

食材。

多少クセのある食材が多いのだが、そういう味だと思えば問題なく食べれる。
物珍しさに食べたがったり、薬効が強くて望まれる物も多いが、未知の食材もあり、魔国では問題がなくても人間には問題が発生する事がある。
その為ルクセルが調理して問題ないか鑑定する事も宰相の仕事になってしまった。

そして今回の様に調理している段階で問題を起こす食材もある。

初期は
[眠れない夜にお勧め、キノコスープ]
キノコの胞子が刻む時に飛び散り、周囲のメイドが眠ってしまった。

[魔魚の煮物]
家で締めようとして飛び出し、危うくメイドに嚙みつきそうになった。

鮮度が重要なので氷締めしてから持って帰るようにした。

最近では角ウサギを持って帰ってこようとして止めた。
角ウサギは魔物であり、魔国では普通に食べる事があるようだが、流石に意思の疎通ができる魔物を無理に殺して食べるのは人間には抵抗があると諭した。

魔物で思い出したが、ルクセルの国では普段の姿が人型なのを魔族と言い、人型になれない物は魔物と言う。
魔王軍となると魔物も魔族入り混じるので面倒なのか魔族と総称で使う事もあるらしい。
ファラガリスも同じらしいが、もう一つの魔王国ジグロードでは貴族階級制度があるらしく、貴族を魔族、それ以外は魔物と言う。


「ルクセル、今日の食材は何でどうしたんですか?」
メイドの達の寝室にいると聞いて高橋は入ろうとしたが、扉の前に魔物が居て慌てだす。

「高橋殿、お待ちください!」
しーっと口元に指を立てる。どうやら状況がまずいらしい。
「今魔王様がネクロマンサーを呼んでメイド殿達の魂を定着させる難しい呪文を使っております。今しばらく集中する時間を下さい」
ひそひそ声で状況を説明する。

「…そんなに危険な食材を使ったのですか?」
「いやぁ、我々では問題おきないのです。少しうるさい程度の悲鳴を1回あげるぐらいきりですし。ただ、その悲鳴で人間の魂が抜ける事が判明しまして…」
「マンドラゴラですか?」
「あ、高橋殿ご存知で?」
「魔法を使える者は大体知っています。一度その辺りを魔法使いと情報交換できるよう手配しましょう」

そう言っているうちに終わったらしい。
疲労した顔でルクセルが扉から出てきた。
「全員無事ですか?」
「うん。新《あらた》、済まぬ。まさか人間を死なす効果があるとは知らなんだ」
「こちらの…」

さっき状況を説明してくれた魔物を見ながら、名前を聞いていなかった事を思い出す。
「私は骸骨兵士です。我々魔物は個別に名前を持たない者が多いのです」
「なるほど。骸骨兵士さんから伺いましたが、マンドラゴラで人が死ぬのは魔法を使う人間では常識なんです。ですが魔国では知らなかったようなので、一度魔法使いと情報交換の場を設ける予定です」

「そうか。他の食材もできるだけ見てもらった方が良いかもしれん。あ、メイド長、夕食の準備はできそうか?」
「はい、先日おっしゃった様に、奥様が準備できそうにないと判断したのでこちらで準備させて頂きました」
「うむ、助かる」
「すぐ食べれそうですか?」
「はい、旦那様。後は配膳するだけなのでご用意致します」
「では食堂に移動しましょうか」
魔物達にもう大丈夫なので魔国に帰るよう指示をしていたルクセルを抱きかかえた。
「!?」
「お疲れの様なので食堂までお連れしますよ」
「いや、しかし、私が…」
「ちゃんと失敗を挽回し、メイドへの指示もできています。今後はどうするか決めましたし、問題はありません」
「……うん」
素直に体を預けた。

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