42章 シノブの過去
「ミサキさん、体を壊すのはNGですよ」
「シノブさんは、体を守ることに強いこだわりがありますね」
「アイドルで競争していたとき、無茶をしていたことがあります。そのせいで、体を壊してしまいました」
「どうして無理をしたんですか?」
「クドウアヤメさんに勝ちたい、絶対に負けたくないという思いが、そうさせたと思います。気
がつかないうちに、睡眠を大幅に削っていました」
アイドル業界で生き残るためには、トップに君臨する必要がある。2番目、3番目では勝者になるのは難しい。
容姿などで劣っているのであれば、努力の量で勝負をするしかない。そうしなければ、凡人はのし上がっていくのは難しい。
「体は正直です。無茶をしたことによって、全治3カ月の病気にかかりました。アイドル活動はできなくなりました」
気力だけでは、アイドル活動を続けるのは難しい。体力の部分も、重要であるといえる。
「アイドル活動をできなくなったので、グループから脱退を命じられました」
活動に支障をきたすと、脱退を命じられる。アイドル業界というのは、いろいろな意味で厳しいようだ。
「私は体調不良ですんだので、ましだと思います。無理をしたために、くも膜下出血、がんなどにかかったアイドルもたくさんいます」
体に鞭を打ちすぎて、再起不能になる人もいるのか。アイドル業界は、熾烈を極めている。
「自分の体験談から、体をいたわるようになりました」
「そうだったんですね」
「ミサキさんも無理はしないでくださいね」
「ありがとうございます」
「明日もよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
ミサキは一礼をすると、店をあとにする。