244章 仕事の依頼
スローライフを満喫していると、扉をノックされる音がする。
扉を開けた途端、高揚感はすべて吹き飛んだ。
「アカネさん、こんにちは」
「マツリさん、こんにちは」
「アカネさん、仕事の依頼が来ています」
400兆ゴールドの付与金を収めたのに、まだ仕事をさせるつもりなのか。マツリという女性には、人間の心はあるのだろうか。
「私は十分すぎるほど、街に貢献しています。ちょっとくらいは、仕事を休ませてください」
付与金の400兆ゴールドは、住民の年間平均給料の1億倍に該当。税金などを考慮すると、さらに街を支えていることになる。
「アカネさんの活躍を聞いて、いろいろなところからオファーが来ています。幽霊退治よりも、高額なオファーもたくさんあります」
評判が広がる→仕事が増える→評判が広がる→仕事が増えるという無限ループを繰り返す。理想とするスローライフは、どんどん遠ざかっていく。
「1000兆ゴールド以上の仕事とは、どんなものですか?」
「核爆弾の除去、万能薬開発、一人で戦争に勝つ・・・・・・などがありますね」
万能薬の開発はいいとしても、他の依頼はまともではなかった。通常の人間がやれば、100パーセントの確率で死ぬものばかりだ。
「2~3カ月くらいは、家でゆっくりとします。私には、スローライフを送る権利があります」
誰かのために動くだけでなく、自分のためになる生活を送る。人間に与えられた、当然の権利である。
食い下がるかなと思っていたけど、あっさりとしていた。
「わかりました。2カ月後に、仕事の依頼をさせていただきます」
簡単に要望が通るなら、1年後、2年後にしておけばよかった。期間を長くすることによって、理想とする生活を実現できた。
*次は感染経路不明の疫病の話になります