魔王討伐、頑張ってください!
僕達は扉を抜け、奥に長い廊下を歩いた。
クラスのみんなもザワついている。華やかな装飾や、美しい絵画が掛けられていて、荘厳な雰囲気である。まさにヨーロッパのお城って感じがする。
「こちらになります。勇者様方。」
最奥の扉が開かれ、広い客間に通された。
縦にとても長い机に沢山の椅子が陳列されている。僕らは前から順に、次々に座っていった。
全員が着席したが、室内は静寂に包まれる。やや緊張した空気だ。
「そもそも、なぜ私達がこの世界に呼ばれたんですか?それにこの世界は、一体なんなんですか?」
最初に声を発したのは、岸田先生だった。
「はい。私達は古代より伝わる召喚の儀を執り行い、あなた方を召喚致しました。先程にも申し上げた通り、このアルダート王国は魔王軍の侵攻を受けております。」
「なるほど。だからスキルとやらで魔王軍を倒して欲しいと言う訳か。」
イケメンの陽キャが問うと、お姫様はこくりと頷く。凄い。異世界のお姫さ相手でも遅れをとっていないぞ。
「そして、アルダート王国のみならず、多くの人族が魔王軍に苦しめられているのです。是非、お力をお貸しください!」
深々と頭を下げて懇願して来た。そんな状態でも俺は、鑑定というスキルがどんな物か気になってしょうがなかったのだが。
「いいんじゃないの?それしか帰る方法が無いって言うんなら。まあ、俺のスキル【勇者】だし?」
「それな!ってか、スマホ使えないんだけど?どうにかしてくれない?」
といったふうに、次々に賛同する。俺は黙ったままだ。……あれ?スマホ?後で使えるか試してみよう。
「先生としては、生徒を監督する立場なので、生徒を危険の目に晒す訳にはいきません。フィレーネさんでしたっけ?……安全が保証できるなら、元の世界に帰る為に、協力したいと思います。皆さんもそれでいいですか?」
生徒たちは、やる気なさそうにはーいと口にする。
「ありがとうございます。」
一気に表情を明るくして、笑顔になった。
「では、明日より魔王軍討伐の為の訓練を行います。」
それを言い終わるや否や、えぇーといった面倒臭そうな声をみんな漏らす。いや別に、俺は楽しそうだと思うのだが?
「大丈夫です。勇者方に与えらたスキルに合わせた訓練や、座学なども御座います。それ程ハードでもありませんよ。」
「それって運動が苦手な女子とかはどうするんですか?」
「ご心配無く。後方支援や回復魔法士など、自身の能力にあった職業を選ぶことができますよ。」
尚もにこにことしながら説明する。
「又、このアトリ城の各設備はご自由に使って頂いて結構です。勇者様方には、一人一室の部屋が用意されます。この客間も自由に使用しても良いですよ。」
まじか!と男子生徒が目を光らせる。陰キャ達はまだ異世界キターとかいって興奮している。
お姫様が質問はありませんかと聞いても、みんなは納得した様子で手を挙げなかった。
「長々と話をしてしまった事ですし、これで失礼させて頂きます。何か質問があれば、このフィレーネにお尋ね下さい。個人の部屋の位置は、そちらの地図に在ります。」
言い終わると、ゆっくりドアを閉めていった。そして、足音が段々遠ざかっていく。