第4話 まさかのハズレスキル?
頭の中で、スキルという曖昧な感覚を具現化してみようと試みる。
「スキル…鑑定!」
シャンデリアを見つめながら、心の中で叫んだ。だが……。
「……鑑定不能」
と返ってきた。は、はあ?どういうこと?このスキルに欠陥が有るのかな。それとも、このお城の中でスキル使用は不可能とか……。いや、周りの人は普通に使えている。
何故なんだと思い、もう一度試してみる。
「鑑定不能」
ダメだ。もしかしたら、物だからいけないのかもしれない。いやそうだ。そうに違いない。
俺は目の前に立っているお姫様に向かって、「鑑定」をしてみた。
「鑑定不能」
やはりダメか。他人は凄そうなスキルを簡単に発動出来ているのに。どうして?
そうして苦悩している俺に向かって、陽キャ軍団の一員である佐藤が話しかけてきた。
「お前のスキル鑑定だって?なら、俺の【狂暴走化《バッドバイオレンス》】を鑑定してくれよ。できるだろ?」
俺は言われるままに鑑定をしようとする。スキルを鑑定するのではなく、佐藤本人を鑑定がしてみた。
「鑑定結果······名前 佐藤光希 種族 人 スキル 不明 その他の情報 解析不能」
うっ……少し頭が痛くなって来た。スキルを使用したら、脳が疲労したようだ。
「どうだよ、俺のスキルは?」
「えっと……鑑定不能って出てきたんだけど。」
「はあ?使えねぇなぁ。まじで。」
彼は罵るような口調で言ってきた。そして俺は、更に沈鬱した。もしかしたらこの【鑑定】というスキルは使えないのかもしれない。
「皆様、スキルの確認は出来ましたか?これから勇者様方には、魔王軍と戦って貰う為に訓練を受けてもらいます。」
「えぇー!」
生徒達が嫌そうな反応をした。なんで異世界に来たのに自由じゃないんだよ!と怒っている奴もいる。しかし俺は、スキルのことが気になって頭に入らなかった。
「あの、少し聞きたいことがあるんですが良いですか?」
と、委員長の早乙女が尋ねる。お姫様は、どうぞ。と微笑んで返した。
「どうしたら私達は元の世界に帰れるんですか?いきなり呼んでおいて戦えなんてあまりにも酷いと思います。」
他の奴らも、そうだそうだと便乗して口々に反論し出す。確かに、あまりにも理不尽だ。
「突然召喚をさせて頂いたことに関しては、深く謝罪致します。しかし我が国も存亡の危機にあるのです。どうか勇者様方、スキルという天佑を活かして、この国をお救い下さい。魔王軍撃破の暁には、元の世界に帰す事をお約束致します。」
深々と頭を下げて、鄭重に説明をした。お姫様の後ろに並んでいる兵士たちも、一斉に頭を下げた。
「まあいいじゃん、異世界楽しそうだし、やってみようぜ!」
一部の男子達が盛り上がっていた。しかし女子や先生などは、未だに状況を受け入れられずにいたようだ。
「混乱するのもよく分かります。ここでは何ですから、別の部屋に参りましょうか。」
兵士たちが道を開けて、華やかな装飾の扉がゆっくり開かれる。
「まあ、行ってみるしかないんじゃないの?」
男子たちが率先して歩き始めた。それに倣うようにして、ぞろぞろと移動が始まる。