27章 翌日も働く
シノブから、ねぎらいの言葉をかけられた。
「ミサキさん、おつかれさまでした」
体を動かしたことで、大いなる充実感を得ることができた。
「シノブさん、おつかれさまです」
シノブはレジから、お金を取り出す。
「2時間の労働なので、20ペソとなります」
焼きそば屋の時給は10ペソ。1ペソ=100円くらいなので、時給1000円ということになる。飲食店のアルバイトとして、リアリティーを伴っていた。
「ミサキさん、明日もお願いしてもいいですか?」
今日だけだと思っていたので、驚きを隠すことはできなかった。
「明日も仕事するんですか?」
「はい。よろしくお願いします」
仕事をすることによって、メリハリのある生活を送れるようになる。日常生活にあたって、恩恵が大きくなっている。
「わかりました。明日もお願いします」
「明日も同じ時間に来てください」
「はい、わかりました」
シノブは額の汗をぬぐった。
「本日はいつもの5倍の客足がありました。ミサキさんに会えると宣伝したのは、功を奏したよ
うです」
「そんなことをしていたんですか?」
「ミサキさんは有名人です。宣伝をするだけで、売り上げは大きく変わります」
口をへの字にして、抗議をする。
「人を利用しないでください」
「小さな店が大きな店に勝つには、特別感を必要とします。ミサキさんの存在は、大きなインパクトがあります」
一人の存在くらいで、大きく変わるものなのかな。その部分については、腑に落ちなかった。
「シノブちゃん、ビールを4人前」
昼間からビールを注文するとは。アルコールの入った状態で、まともに働けるのだろうか。
「ありがとうございます」
シノブは缶ビールを、お客様のところに運んでいく。ミサキはその様子を、静かに見守っていた。