208章 予想外の反応
「コハルさん、ただいま」
「アカネさん、命は救えましたか?」
火を消せたという質問ではなく、命を救えたのかを質問する。コハルらしさを、全面に感じることとなった。
「うん。火の中に入って、子供2人、大人1人を救出したよ」
魔物退治の敵からすれば、炎はどうってことない。地上に落ちている、石ころと同じレベルである。
コハルは信じられなかったのか、目が点となっていた。
「火の中に入ったら、人間は助かりませんよ」
「10000度以上であっても、ビクともしない体をしているんだ」
「炎は問題なくても、一酸化炭素中毒は無理なんじゃないですか」
「一酸化炭素を吸っても、何の問題もないよ」
炎に強いだけでなく、毒を無効化する能力もある。これを所持しているからこそ、いろいろなことができるようになる。
「酸素不足にならないんですか?」
「生産活動のために、酸素を必要としないんだ」
コハルは適当に相槌を打った。
「そうなんですね・・・・・・」
「人間とは思えない、能力をたくさん持っているんだ」
空気いらず、食事いらず、睡眠いらず、攻撃無効、不老不死、毒物無効、除霊、魔法を使用で
きるといった能力は、通常の人間ではありえない。アカネの特権事項といえる。
「アカネさん、すごいですね」
すごいといっているものの、褒めているようには感じなかった。
「子供を救出したあとは、氷の魔法で鎮火した。1秒とかからず、火は消せたよ」
「1秒で火事を消せるんですか?」
「魔法を使えば、時間はかからないよ」
魔法=∞消防士である。魔法さえ使えれば、消防士という職業は不要だ。
「火事は不始末ですか? それとも放火ですか?」
「放火だったみたいだよ」
「犯人は誰なんですか?」
本当のことを伝えたほうがいいのか、嘘を伝えたほうがいいのか。アカネはどのようにしていいのか、よくわからなかった。
「本当のことを知りたいです」
本当のことを知りたいというのであれば、事実を伝えたほうがいいかな。深呼吸をしてから、
犯人を伝えることにした。
コハルはびっくりするかなと思ったけど、淡々とした表情をしている。
「アキヒトが犯人だったんですか・・・・・・」
「犯罪者として、牢獄に送り込んだよ」
コハルは頭を深く下げる。
「アカネさんのおかげで、平穏な日々を過ごせそうです。本当にありがとうございます」
コハルの笑顔に偽りはなかった。元恋人が牢獄送りになったことを、心から喜んでいるところ
を見ると、性格の不一致を感じさせた。