203章 突然の提案
ココアがいなくなったからか、ミライは寂しそうにしていた。
「ミライさん、どうかしたの?」
「いいえ、なんでもありません」
何でもないというのであれば、放置しておいたほうがよい。無理に突っ込んでしまうと、事態を悪化させかねない。
アカネは右肩を叩かれた。
「アカネさん、手をつないでください」
コハルの提案に対して、承諾の返事をする。
「うん。わかった」
二つの手が重なると、柔らかさ、温かさを感じた。
「コハルさん、メンタルはどう?」
「恐怖心は強いですけど、外出はできそうです」
腹部を刺された傷は、一日では消えることはない。恐怖心が残るのは、必然といえる。
「コハルさん、無理はしないようにね」
「アカネさん、ありがとうございます」
外出してから、一度も座っていない。二人の足腰は問題なのだろうか。
「ミライさん、コハルさん。足の調子はどう?」
ミライは太ももに手を当てた。
「問題ないです」
コハルは足首を触っていた。
「まだまだ歩けますよ」
スキルを入手したことによって、人間の病気の理解度は0になった。共感部分における、スキ
ルは完全になくなった。
どこに行こうかなと思っていると、思いもよらない話が飛んできた。
「アカネさん、三人で温泉に入りたいです」
一ミリも想像していなかったからか、声が裏返ることとなった。
「温泉?」
コハルの瞳は、子供のように輝いていた。
「はい、温泉に入りたいです」
ミライに視線を送ると、希望に胸を膨らませていた。温泉に入りたいのが、はっきりと伝わってくる。
「ミライさん、温泉はどうする?」
「私も入りたいです」
二人の純粋な思いを、無下に扱うわけにはいかない。アカネは二人に対して、
「わかった。三人で温泉に入ろう」
といった。直後、ミライ、コハルは喜びを爆発させていた。
「アカネさんと入浴できるなんて、夢を見ているみたいです」
同性と入浴するからか、感動は一ミリもなかった。
どこに入ろうかなと思っていると、ミライは大胆な発言をする。
「アカネさんならば、○○を○○されてもいいですよ」
同性にもかかわらず、顔が赤く染まった。
「そんなことはしないから・・・・・・」
恥ずかしそうにしている女性に対して、コハルも大胆不敵なことをいった。
「私も○○を○○してもいいですよ」
「コハルさんまで・・・・・」
「アカネさんのおかげで、私は生きています。そういう人であるなら、すべてのことを受け入れることができます」
コハルは掌を優しく握りなおす。刺された女性からは、格の違う優しさを感じられた。