給食とか その3
バトコンベにある教会の学校に給食を納入するようになったわけですが、メニューはコンビニおもてなしの弁当やホットデリカとして販売しているものをメインに……と、思っていたのですが、
「……そうだなぁ……やっぱり子供の学校の給食なんだし、それなりにこだわったメニューにしたいよなぁ……」
そう考えた僕は、早速あれこれ試作品を開発していきました。
まず作成したのは揚げパンです。
これには、ナカンコンベにありますコンビニおもてなし5号店東店の地下にありますおもてなしパン工房を取り仕切ってくれているテンテンコウ♂にも協力してもらいました。
「へぇ……コッペパンを揚げて……きな粉をまぶすんだ……」
「そうなんだ、これが僕が学校に通っていた頃、給食で大人気だったんだ」
すでにコンビニおもてなしの定番メニューになっているコッペパンですが、お店で販売しているコッペパンは、
そのまま
小倉&マーガリン
小倉&イチゴジャム
といった3種類を販売しています。
商品化を検討している際に、この揚げパンも検討メニューに入っていたのですが、
「確かに美味しいと思いますけれども……お口にベタついて……あと、手が汚れてしまうのがちょっと……」
魔王ビナスさん談~コンビニおもてなし本店店長
「味はよろしいのですが……その、このべたつくのがちょっと……」
シャルンエッセンス談~5号店東店店長
こういった意見と
「店長ちゃん! これマジパナいし! マジ卍だし!」
クローコさん談~7号店副店長
「いいんじゃない? アタシは好きだなぁ。まぁ、ウチの焼き温泉まんじゅうの方が美味いけどな」
ララデンテさん談~4号店店長
こういった具合が見事に真っ二つになってしまいまして、とりあえず商品化は保留になっていたんです。
ですが、給食として提供するのであれば、お皿も一緒にありますし、先生に
「あとで手と口を洗ってくださいね~」
って指導してもらえばいいわけですからね。
それよりなにより、僕の世界の給食の人気メニューとして長年親しまれているという実績もあるわけですし……
「世界は違うけど、まぁなんとかなるんじゃないかな」
そう思ったわけです、はい。
次に準備したのは鯨の竜田揚げです。
こちらの世界にも鯨によく似た生き物がいるんです。
僕が元いた世界の鯨は保護対象だったので勝手に狩ったりすることは当然禁止だったのですが、こちらの世界には多数存在している上に小魚を食い荒らす害魚に認定されているもんですからティーケー海岸で漁業を営んでいるアルリズドグ商会のアルリズドグさんが近海に出没した鯨~あ、こちらの世界ではクラジラと言うんですけど、そのクラジラを仕留めることがあって、その時におもてなし商会ティーケー海岸店を通じて仕入れさせてもらっているんです。
ちなみに、今までは、舌や皮を使用しておでんの具材にしたり、ステーキ弁当にしたり、ベーコンにしたり、肝臓をドロップにしたりと、多種多様に用いています。
油に関しては、主にスアが研究用として使用していまして、スアの使い魔の森で稼働している酒造工房や飲料製造工房など使用している機械の潤滑油として使用したり、チュ木人形のメンテナンスに使用したりしているみたいです。
ただ……このクラジラ狩りを一度見学させてもらったことがあるのですが
「野郎共、行くぞ!気合いいれていけ!」
「「「おー!」」」
アルリズドグさんの気合いとともに、本来の姿である古代怪獣族へ姿を変えていくアルリズドグ商会のみなさん……全員が身長数十メートルにまで巨大化しているのですが……それに相対峙しているクラジラ……えっと、なんで二足歩行で立ちあがっているんですかね? しかもハンマーみたいな両手までついてるし……
「いくぞー!」
「ゴア~~!」
そのままぶつかり合っていく様子はですね……もうなんか、どこかの漫画祭りの怪獣映画のどつき合いにしか見えなかったといいますか……
まぁ、そんな経緯がありまして、クラジラ肉の竜田揚げも提供出来ることになっています。
そして忘れてはいけない瓶牛乳ですね。
これは、こちらの世界に棲息している牛によく似た生き物「カウドン」の飼育に成功していて、そのお乳を「カウドン乳」としてすでに商品化していますので、問題なくメニューに加えることが出来ます。
瓶にしたのは……まぁ、僕のこだわりといいますか、やはり給食の牛乳といえば瓶!って世代なもんですから……はい。
この瓶はブラコンベにありますペリクドさんのガラス工房で作成してもらいました。
すでにララコンベ温泉やオザリーナ温泉で瓶カウドン乳を提供していますので、その形を少し変えてもらっただけですので、あまり手間はかかっていません。
……そして
やはりカウドン乳とくれば外せないのが、ミ●メークでしょう。
粉をいれてストローでかき回すと、白いカウドン乳が茶色の珈琲カウドン乳になるという……
「そういう物を、僕は作りたい!」
と、気合いを入れた僕だったんですけど、
「えっと、粉状で、冷たいカウドン乳に入れてストローでかき混ぜたらコーヒー味になるって物をつくればいいでごじゃりますね、こんな感じのものでごじゃりましょうか?」
と……説明していた僕の言葉をフンフンと聞いていたヤルメキスなのですが……なんか、三分クッキングのように『出来上がったものがこちらになります』みたいな感じで、ミ●メークを完成させていたんですよ……
もともとコーヒー豆の製造には成功していましたし、珈琲味のお菓子を作るためにそれを粉にする技術もすでに確立していましたし、子供のためにカフェインを除去する技術もスアの魔法で完成していましたしね……
「あ、うん……これこれ、さすがヤルメキスだなぁ」
そう言った僕の台詞がどこか棒読みだったのは……どうか心情を察して勘弁してください。
今後はにゅうめんやカレー、ナポリタンなんかもメニューに加えていこうと思っています。
◇◇
そんなわけで、こういったメニューを早速給食に投入していきました。
まず今日はカウドン乳とコーヒー粉と命名したミ●メークを提供したのですが……
僕がウリナコンベの7号店での仕事を終えて帰宅すると、
「パパ! コーヒー粉はありませんか!」
「あれ、とってもおいしゅうございましたの」
「もう一杯飲みたいにゃしぃ!」
「りょ、リョータ様がそう仰っているアルし、アルカも飲みたいアル」
学校に行っていた面々が一斉に僕に駆け寄ってきて、口々にそんなことを言ってきたんです。
どうやらみんな、珈琲カウドン乳をとっても気に入ってくれたみたいですね。
「もうすぐ晩ご飯だから、1本だけだよ」
「「「はーい!」」」
僕の言葉に、嬉しそうに笑顔を浮かべた子供達。
すると……
そんな僕の手をパラナミオが引っ張りました。
「あの……パラナミオはもう大人ですけど……」
そう言って僕を見上げるパラナミオ。
その目には『私も珈琲カウドン乳を飲みたいです』ってしっかり書いてありました。
「もちろん、パラナミオも飲みなさい。みんなパパの子供じゃないか」
「はい! ありがとうございます!」
僕の言葉に、パラナミオは満面の笑みを浮かべながら抱きついてきました。
そんなパラナミオの頭を優しく撫でていく僕。
……気のせいか、後方からシオンガンタとユキメノームが『私達もパラナミオ様に抱きつかれた~い』って言いながらジト目をしている気配がするんですけど……まぁ、それはさておき、僕はみんなのカウドン乳を準備するために、移動していきました。