給食とか その2
電気自動車おもてなし1号を使用して、コンビニおもてなし本店から教会の学校まで給食を運搬する業務なのですが、魔王ビナスさんの推薦もあってウルムナギ又のルービアスにお願いしている次第です。
……で、すっごく意外だったんですけど……ルービアスってばはじめて乗るおもてなし1号を
「はぁはぁほうほうふむふむ……了解です、なんとか出来ますって!」
僕の説明を聞きながら、最後はなんかやけっぱちに近い感じで笑い出したもんですから、最初は不安しかなかったんですけど、店の近くの街道で試し運転をしてもらったところ……これが、どういうわけかすごくスムーズに運転しはじめたではありませんか……
「すごいなルービアス、さっきの説明もよくわかっていなかった感じなのに……」
その光景を少し離れた場所で見つめながら目を丸くしている僕。
「あら、こんなもんですわよ、ルービアスに関していえば」
「え? そうなんです? ビナスさん」
「えぇ、ルービアスって、試食を配布するのが得意でしょう?」
「えぇ、確かに……」
「あの子、あれで目立つのが好きなんですの。だから試食配布をする際にも、思いっきり動き回ってみんなの注目を集めているわけなんですわ」
「あぁ……それはなんとなくわかっていましたけど……でも、だからといって、電気自動車をいきなり普通に運転出来るのと、どんな関係が……」
僕が首をひねっていると、魔王ビナスは電気自動車の周囲を指さしました。
そこには、いつの間にか人だかりが出来ていたんです。
「おぉ、あれがデンキジドウシャとかいうやつか」
「いつも街の外にばかり行ってるからはじめてみたよ」
「思ったよりも静かなのねぇ」
周囲に集まった街の人達は感心したり、目を丸くしたりしながらルービアスが運転してる電気自動車おもてなし1号を見つめています。
で
一方、運転席のルービアスはといいますと……
「あはは~こんなに注目されちゃっててぇ~これはもう頑張るしかないですよねぇ」
満面笑顔で、時折周囲に手を振ったりしながらご機嫌な様子で運転しているんです。
「……なるほど、注目されることで実力以上の物を発揮出来る……」
「えぇ、あの子はそういう子なんですわ。注目を集めれば出来る子なんですの」
魔王ビナスさんはクスクス笑いながら頷いていました。
……あれ、なら……
ここで僕はあることに思い当たりました。
「じゃあ、いまだに研修を続けているウルムナギ又五人娘も、目立つ仕事をやらせたら実力以上の力を……」
僕がそう言うと、魔王ビナスさんはそれまでのクスクス笑いをとめて、今度は大きなため息をつきました。
「……そう思って、何度かお試ししてみてはいるのですが……まったく、あの子達ってば、いったいどうやったら使い物になるのでしょうか……」
……ど、どうやら、目立たせてみる作戦はすでに失敗に終わっているようでした。
って、いうか……魔王ビナスさんにここまで言わせてしまうウルムナギ又五人娘って……
そのことに思い当たった僕は、魔王ビナスさんと一緒に大きなため息をついていました。
「……みんな悪い子じゃないんですわ……だから面倒みているわけですので」
「ですよねぇ……」
ため息をついている僕と魔王ビナスさん。
その前方では、ルービアスが運転している電気自動車おもてなし1号が軽快に走り続けていました。
◇◇
そんなわけで……
教会の学校の給食の運搬作業はルービアスにお願いすることになりました。
お昼前になると、給食をつめた容器を詰め込んで、
「さぁ、今日も行ってまいりまっす!」
気合い満々の笑顔で出発していくルービアス。
電気自動車おもてなし1号が街道の真ん中を進んでいくと、
「お、今日も教会の学校に配達だね」
「ウチの子がお世話になってます」
「さて、コンビニおもてなしに昼飯を買いに行くか」
そんな声が街道から聞こえてくるようになっていまして、早くもお昼の風物詩として定着しはじめている感じです。
そうなってみんなから注目されているもんですから、ルービアスもすごくはりきっていまして、
「はいはい! 今日もコンビニおもてなし頑張ってまっすぅ!」
って、笑顔で愛想を振りまきまくっているんです。
普通なら、調子に乗りすぎるとろくなことが……って思ってしまうところですが、ルービアスの場合は調子に乗りすぎくらいがちょうどいい感じみたいです。
最初の頃はそれで失敗したこともあったんですけど、魔王ビナスさんにそのあたりはみっちりしごかれていますからね。
おもてなし1号が教会の学校に到着すると、給食当番の子供達が給食の入った容器を受け取りに出て来ます。
「ルービアスさん、今日もありがとうございます」
「あぁ、今日はリョータぼっちゃんが当番なんですね、さぁ、気をつけて持ってってくださいねぇ」
満面の笑顔で給食の入った容器を渡していくルービアス。
それを、リョータや他の当番の子供達が笑顔で受け取っていきます。
なんか……僕の世界でもこういった給食の光景ってあったなぁ、って……思わずジーンとなってしまいますねぇ……
物陰から様子を見ていた僕は、そんなことを考えていたのですが……
「ビニーも、あんなに頑張ってる……なんか涙が出てくるねぇ、オデン父さん」
「…… (コクコク) 」
「僕とヤルメキスちゃんの子供達もそのうちああやって……」
「ファファランもいつかは通わせてあげたいわねぇ」
そんな僕の後方には、先日結成された『子供達を見守る父親の会』のメンバーであるオデン6世さんと、パラランサくんとヴィヴィランテスと……あれ、なんでオデン6世さんの奥さんのルアまで加わっているんだ?
「いいじゃないか、こうやって子供を見守るのは親の役目というか、特権というか……」
そう力説するルアなんですけど……よく見たらその後方に、僕の奥さんのスアと、パラランサくんの奥さんのヤルメキスの姿までありまして……
「……私も、見守りたい、の」
「わ、わ、わ、私も将来の参考のために、さ、さ、さ、参加したいでおじゃりまするぅ」
って、言われまして……その結果、
×「子供達を見守る父親の会」
↓
○「子供達を見守る親の会」
が、新たに結成された次第でして……そのうち、ヴィヴィランテスの内縁の奥さんのファニーさんや、子だくさんのペリクドさんも加わりそうな気がしないでもありませんね、これって。
ちなみに
この話合いをしていると、奥の建物の影からシオンガンタとユキメノームが
『私達も』
『ぜひメンバーに』
と、ばかりに、自分のことを指さしながら猛アピールしているのが見えたんです。
2人とも、パラナミオをはじめとした我が家の子供達とも仲良しですので、それで加わりたいって思っているみたいなんですけど……審議の結果、
『今回はご縁がなかったということで』
と、どこかの企業の採用お断りのような言葉をもって……
がっくり肩を落としていたシオンガンタとユキメノームなんですけど……これだけ仲良く一緒に行動しているのなら、いっそのこと2人で付き合ったりとか……なんて思ったりしたんですけど……なんか、2人して
『ないないない』
って、首を左右に振っていた次第でして……
そんなことがありながらも、コンビニおもてなし提供によります、教会の学校での給食がはじまった次第です、はい。