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パラナミオのお姉さん その2

 パラナミオと同じサラマンダーのサラさんがやってきました。
 
 夜は、パラナミオと一緒にお風呂にも入りました。
 パラナミオは、
「パパも一緒に入りましょう!」
 って言っていたんですけど、異変を察して駆けつけてきたスアが、
「……それは、駄目」
 って、必死になって顔を左右に振っていたんですよね。
「うむ? 我は別にかまわぬぞ」
 サラさんがクールな表情のままそう言うと、スアは殺気のこもった視線をサラさんに向けていたといいますか……でもまぁ最終的には僕の説得もあって、サラさんとパラナミオが2人で一緒に先にお風呂に入ること決着した次第です。

 父親としては、いつかはこういう日がくることを覚悟しておかないと、と、思ってはいたものの……毎日一緒にお風呂に入っていたパラナミオがいきなりいなくなると、やはりちょっと寂しいといいますか……パラナミオもこの世界の基準ではもう成人したわけですし、いつかはお嫁さんに










 ……いや、そのことはもうしばらく考えないことにしようと思います、はい

 やっぱり父親ですからねぇ……いつまでも娘と一緒にいたいと思うのは当然といいますか……

◇◇

「じゃあ、サラさんが住んでいる辺境都市リバティコンベの役場が、あの定期魔道船を就航しているんですか?」
「あぁ、そう聞いている。詳しくはよくわからぬが、あれのおかげでかなり北方の都市とも行き来出来るようになっているそうだ」

 お風呂からあがった後、子供達は寝たんですけどサラさんを交えた大人組で晩酌をしながら少し話をしていたんですけど、その中で定期魔道船の話になりました。

 いえね、コンビニおもてなし本店のある辺境都市ガタコンベ一帯はスアが整備してくれた定期魔道船が往来しているんですけど、 7号店のあるウリナコンベ一帯にも定期魔道船が就航しているんですよ。
 大きさ的にはスア製の定期魔道船より一回り大きいもんですから、スアが
『……仕組み、しりたい』
 って、それを見る度に言っているんです。

「あぁ、そういうことなら定期魔道船を管理している者をよく知っているので、話をしておこう」
「本当ですか?」
「あぁ、それくらいは大したことではない」
「ありがとうございます。助かります」

 僕が笑顔で頭を下げていると、スアもコクコクと頭を上下させながらサラさんにお酌をしていました。
 ついさっきまで、僕と一緒にお風呂に入ろうとしていたせいで睨み付けていたのが嘘のようです。

 どちらも定期魔道船と呼称しているとややこしいので、

 ガタコンベで就航している定期魔道船を『おもてなし魔導船』
 辺境都市リバティコンベが就航している定期魔道船を『リバティ魔導船』

 僕達の中ではそう呼称することにしました。
 ウリナコンベに7号店を出店して以降、まだ周辺都市を見て回ったことがありませんので、今度家族みんなでリバティ魔導船にのって周遊してみるのもいいかもな、と思ったりしていました。

 ちなみに……

 今夜のお話にはパラナミオも加わっていました。

「パラナミオももう大人です!」

 そう言って駆け寄ってきたパラナミオですけど、結局お酒を一滴も飲むことなく机に突っ伏して寝てしまったんですよね。

「パパぁ、大好きぃ……むにゃ……」
 
 寝言を言いながら僕にすり寄ってくるパラナミオ。
 そんなパラナミオを、サラさんが笑顔で見つめています。

「うむ……やはりタクラ殿に任せておけば、パラナミオは安心のようだな」

 この世界には、龍があまり棲息していません。
 サラさんのようなサラマンダーも当然少なくてですね、同族のサラマンダーであるパラナミオのことをサラさんはことあるごとに気にかけてくださっているんです。
 ……まぁ、方向音痴ゆえに、ガタコンベにたどり着けることが、どうにも少ないみたいなんですけど……

 ほどなくして、サラさんは仕事に戻っていきました。
 晩酌は、ガタコンベにありますスアの新巨木の家で行っていましたので、転移ドアをくぐってサラさんをウリナコンベへとお送りしました。
 街の中は、ガタコンベとはうってかわって真っ暗闇です。
 そんな中、どこからともなく、

 とんかんとんかん

 何やら、岩を砕くような音や、穴を掘る音が聞こえてきます。

「うむ、我が召喚した骨人間達が指示に従って頑張ってくれているようだな。では、今日はここで失礼する」

 そう言うと、サラさんは街道を歩いていったのですが……

「あの、サラさん……工事の音はあっちから聞こえてくる気がするんですけど……」
「むむ……い、言われて見れば確かに……」

 僕の言葉を聞いたサラさんが、慌てて逆方向に向かって駆けていきました。
 なんといいますか……サラさんの方向音痴って、ホント筋金入りなんだなぁ、と、この日改めて実感した僕でした。

◇◇

 翌日のことでした。

「あぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 もうじき閉店っていう店内に、クローコさんの悲鳴が響きわたりました。

「く、クローコさん、いったい何が!?」

 棚の整理をしていた僕が慌てて駆け寄ると……クローコさんはレジの中でへたり込んでいました。
 レジの前、そこに全身マントで覆われている人が立っています。
 フードをすっぽり被っているので、表情も見えないのですが、

「あぁ、すいませんすいません。脅かすつもりはなかったんですよ。これはなんといいますか不可抗力、そう不可抗力としか言いようがありませんですな、うん」

 そんな事を言いながらその人が僕の方を向いたのですが……


 そのフードの中にあった顔……骸骨でした。


 スアやパラナミオが召喚した骨人間を見慣れていますので、そこまでびっくりはしなかったのですが、やはりいきなりだとドキッとしてしまいますね。

「おや? こちらのお方は、あちらの女性ほど驚かれませんか……そうですか……」

 気のせいか、僕がびっくりしなかったことが残念なのか、がっくり肩を落としているように見えるその男性……

「あの……なんだかすいません、ご期待に添えなくて」
「いえいえ、いいんですいいんです」

 そんな会話を交わしていると、

「パパ! 何かあったのですか!?」

 倉庫の整理をしていたパラナミオが、クローコさんの悲鳴を聞いて駆けつけてきました。

「おぉ、新しい獲も……ゴホン、店員さんが!」

 今、『得物』っていいかけたような気がしたんだけど……とにかく、この男性は駆け寄ってきたパラナミオに向かって、最初わざとフードで顔を隠し気味にした後、

「ばぁ」

 そう言って、髑髏の顔をいきなりパラナミオの眼前に現しました。

「あぎゃあああああああああああああああああアンデッドぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 そう悲鳴をあげたのは、レジの向こうでやっと立ちあがったばかりだったクローコさんでした。
 パラナミオはというと、

「骨人間さんですか? いらっしゃいませ、私、パラナミオです」

 営業スマイル全開で、ぺこりと頭を下げていました。
 そりゃそうですよね、パラナミオは自分で骨人間を召喚出来るんですから。

「あれあれ……こんな可愛いお嬢さんを怖がらせることが出来ませんでしたか、そうですか……」

 再び肩をがっくり落とす骸骨の男性。
 ですが……おもむろに移動を開始すると、レジの向こうで腰を抜かして動けなくなっているクローコさんに向かって顔を近づけていきまして……

「ほ~ら、アンデッドですよ~」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」

 って……悲鳴をあげさせて満足そうに頷いているといいますか……なんというか、思った以上に逞しいですね、この骸骨の男性さんって。

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