191章 栄養不足
「コハルさん、お風呂に入る?」
お風呂に入るタイミングは、食後1時間が基本である。あまりに短すぎると、身体の調子を崩すリスクがある。
「お風呂に入ってもいいんですか?」
「うん。いいよ」
「ありがとうございます。お風呂に入らせていただきます」
お風呂に入れるとあって、コハルのテンションは高かった。
「お湯の準備をしてくるから、ちょっとだけ待っていてね」
コハルの脳内に、大量のクエッションマークが浮かんでいた。
「お湯はずっと入っているような・・・・・・」
温泉などの大衆浴場を、思い浮かべているのかな。あちらについては、お湯が入った状態となっている。
「家庭においては、入浴するときだけお湯を入れるんだ。家族全員が入浴を終えたら、お湯を抜く。翌日になったら、新しいお湯を入れる。この繰り返しだよ」
新しい知識を得たかのように、深い相槌を打っていた。
「そうなんですね・・・・・・」
付与金をもらえたとしても、風呂のない家庭もあるのか。「セカンドライフの街」の生活水準
は、改善途上レベルのようだ。
「お風呂を入れてくるね」
「アカネさん、ありがとうございます」
アカネは浴室に入ると、青いボタンを押す。たった一つの作業をするだけで、最高のお湯に浸かることができる。
入浴の準備を終えたあと、
「5分くらいで入れるようになるよ」
と伝えた。そのことを聞くと、少女のように瞳を輝かせた。
「5分後がとっても楽しみです」
コハルは待ちきれないのか、身体を前後左右に動かしていた。
「コハルさん、楽しそうだね」
「はい。早く入りたいです」
コハルが服を脱ごうとしたので、アカネはあわてて制止する。
「服を脱ぐのは、浴室でいいよ」
「すみません。早とちりしてしまいました」
ちらっと見えたお腹は、骨と皮のみで構成されていた。脂肪はまったくついておらず、栄養不足であることを感じさせた。