165章 ボス
魔物退治が始まってから、450日が経過しようとしていた。
魔物が減ってきたのか、敵を見かけなくなっていた。アカネが気づいていないだけで、魔物が全滅している可能性もありうる。
のんびりとしていると、人間の形をした魔物が現れる。容姿だけでいうなら、高校時代の彼氏と瓜二つだった。
「この世界の魔物を倒したのは、おぬしなのか」
身体だけでなく、声についても、高校時代の彼氏に似ている。そのこともあって、胸がおおいにくすぐられていた。
「そうだよ。私一人で倒したんだよ」
「俺たちはいろいろな敵と戦ってきたけど、負けたことは一度もなかった。それなのに、どうして、一人の女ごときに・・・・・・」
魔物が体内の筋肉を突き上げた直後、着衣が木っ端みじんに砕け散った。
服がビリビリになったあとの姿は、狼と狂犬を融合させたみたいだ。高校時代の彼氏はフェイクで、こちらが真の姿なのかもしれない。
形を変わったことで、やる気がみなぎってきた。高校時代の彼氏のままなら、余計な情と戦わなければならなかった。
「俺はこの世界の最後の砦だ。俺を倒すことができれば、魔物界は完全に滅ぶことになる」
こいつを倒すことができれば、「セカンドライフの街」に戻ることができる。とっとと始末して、スローライフを堪能したい。
「雑魚たちに勝ったくらいで、いい気になるんじゃないぞ。俺はあいつらの、10000倍、20000倍は強いからな」
10000~20000倍の強さとはどんなものなのかな。そのようなことを考えていると、ブラックホールの魔法を飛ばされることとなった。アカネは回避できずに、ブラックホールが直撃する。
ブラックホールを受けたものの、ノーダメージだった。「むてきのからだ」というのは、ブラックホールすらも無効化できる。
アカネの元気な姿を確認すると、ボスは目の玉が飛び出しそうになっていた。
「そんなバカな。俺の攻撃を受けたら、絶対に助からないはず・・・・・・」
「私は攻撃を受け付けない。どんなことをしたとしても、あんたに勝ち目はないよ」
「そんなことは絶対にありえない。俺がそのことを証明してやる」
ボスは隕石魔法を唱える。こちらもスピードが早すぎて、バリアをはる猶予はなかった。隕石をまともに受けることとなった。
隕石をくらったものの、一ミリのダメージも受けなかった。「こうげきむこう」は隕石に対しても、有効なようだ。
アカネが無事なのを核にすると、ボスは笑みを浮かべていた。
「数千年と生きてきて、初めてまともな奴と出会えたようだ。これまでは相手が弱すぎて、楽し
むことができなかったからな」
ボスに向けて、炎魔法を唱える。攻撃力はすさまじくとも、防御力は低い可能性がある。
ボスはバリアをはらず、生身で魔法を受け止める。
「その程度の威力で、我を倒せると思っているのか」
ボスはアルテマを唱える。街に落下するようなことがあれば、全ての生物は滅びるのではなかろうか。
バリアは訊かないので、ワープをするしかない。アカネはタイミングを見計らって、瞬間移動のスキルを使用する。
「俺の攻撃を回避するとは。おまえ、なかなかやるな」
ボスが話しているうちに、メガトンパンチをおみまいする。
「パンチについては、まずまずといったところかな・・・・・・」
魔法は訊かなくとも、物理攻撃なら太刀打ちできるかもしれない。
「俺のパンチを受けてみよ」
ボスのパンチを生身で受けるも、痛さを感じることはなかった。
「俺のパンチを受けても、痛さはないのか」
急所にパンチを打ち込もうとするも、ボスに簡単に回避されてしまった。攻撃力、防御力だけでなく、素早さも10000倍なのかな。そうだとすれば、ヒットさせることすら厳しくなる。