162章 いっときの休息
魔物退治が始まってから、1年が経過しようとしていた。
身体の疲れはなかったものの、人と会えない寂しさを感じていた。1日だけなら余裕だけど、1年はかなりきつい。
ワープの魔法を使用して、一時的に現実世界に戻ることにした。ほんのわずかであったとしても、人と会話をしたかった。
魔物がいないのをに念入りに確認してから、「なごみや」の前に身体をワープさせる。
「なごみや」を尋ねようとすると、家が変わっていることに気づく。アカネがいない間に、家を改築したようだ。
アカネが店に入ると、ハルキが出迎えた。
「アカネさん、いらっしゃいませ」
「ハルキさん、こんにちは」
「仕事が終わったんですね・・・・・・」
アカネは静かに首を振った。
「まだだよ」
「そうなんですね・・・・・・」
「人と少しだけ話をしたら、魔物界に戻るつもりだよ」
「そうですか・・・・・・」
1年以上も人と会っていないからか、心が壊れかかっている。修復しなければ、仕事を終えるのは不可能である。
ハルキを話をしようとしていると、ミライが顔をのぞかせた。
「ミライさん、こんにちは・・・・・・」
「アカネさん、お久しぶりです」
年を取っているはずなのに、肌が若返っているように見えた。
「いろいろと話をしたいので、時間を取れませんか?」
「ごめん。すぐに仕事に戻るつもりなんだ」
のんびりとした空間に馴染むと、仕事に対するモチベーションが低下する。緊張感については、120パーセントを維持しておきたい。
「アカネさん、3分だけ待ってください」
「うん。わかった」
ミライは駆け足で、店の奥へと入っていく。
「アカネさん、身体はだいじょうぶですか?」
「うん。まったく問題ないよ」
「睡眠はとれていますか」
「仕事を始めてから、一秒も睡眠をとってないよ」
ハルキは不安になったのか、アカネの背中に手を当てた。
「睡眠いらずのスキルがあったとしても、身体のメンテナンスはしましょうね」
「ありがとう」
ハルキが背中を撫でていると、ミライがこちらに戻ってきた。
「アカネさんのために、おにぎりを作りました」
「ありがとう・・・・・・」
おにぎりを口に入れると、溢れんばかりのパワーを感じることとなった。
「ミライさんのおかげで、とっても元気が湧いてきたよ。本当にありがとう」
感謝の気持ちを伝えたのち、魔物界に身体をワープさせる。