158章 301体目の魔物
心の休養を取っていると、301体目の魔物がこちらにやってきた。
301体目の魔物は、ヘッドホンである。魔物界においては、音を聞くための道具が敵になるらしい。
ヘッドホンは金色をしている。これで音楽をきけば、幸せな気分になれるかもしれない。敵として登場したことを、とても残念に思った。
ヘッドホンは長いコードを使って、首を絞めてきた。首を絞めることによって、アカネにダメージを与えようとしている。
首を絞められていても、痛みは一ミリも感じなかった。息苦しさについても、まったく感じなかった。無敵の身体というのは、あらゆる攻撃を無効化する力を持っている。
首の感触からすると、金属でできていると思われる。ヘッドホンに金属を用いるのは、斬新な発想である。
コードがからまったのを確認してから、炎の魔法を唱えることにした。身動きの取れない状態なら、攻撃を命中させるのは容易だ。
自身には炎が降りかからないよう、バリアをはることにした。問題はなかったとしても、万全の対策を取っておくのがベターだ。
問題となるのは、ヘッドホンに使われている素材。タングステン、オスニウム、レニウムなどであった場合、熱で溶かすのは難しくなる。そうでなかったときは、簡単に焼き尽くせると思われる。
グルグル巻きになっているからか、ヘッドホンは身動きを取れなくなっていた。炎魔法が直撃すると、ヘッドホンの本体、コードは真っ黒こげになってしまった。
すぐに終わったかなと思っていると、ヘッドホンが光を発することとなった。その後、焼かれたはずのヘッドホン、コードが復活を遂げていた。どのような原理をもってすれば、真っ黒こげになった物質が元の色に戻るのだろうか。魔物界というのは、人間界の理屈で証明できないことが、山積みになっているようだ。
二度目の炎魔法を唱えるも、コードには効果がなかった。光の祝福を受けたことで、炎の耐性を得たのかもしれない。
ヘッドホンのコードは、絡みついたままである。ヘッドホンを破壊するチャンスは、まだまだ残されている。
アカネは氷の魔法を唱える。炎がダメだとしても、氷の魔法なら効果を得られる可能性はある。
魔物は凍るかなと思っていたものの、そういう展開にはならなかった。ヘッドホンは何事もなかったかのように、元気のままだ。熱さに強いだけではなく、寒さにも強いようだ。
ヘッドホンは絡みついたコードを利用して、電流の攻撃を仕掛けてくる。首を絞めるのが無意味なら、電流で感電死させようという魂胆のようだ。
アカネの身体は、電流に感電しないようになっている。それゆえ、身体へのダメージは0だった。
コードは体内の電流パワーを増大させる。パワーを上げることによって、アカネをあの世送りにしようとしている。コードの本気を感じさせる一面だった。
戦闘中にもかかわらず、大きな欠伸が出てしまった。歯ごたえがあまりにないので、退屈になってしまったようだ。