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ハルバートは彼の顔を見ると何気に言った。
「あいかわらずだなリーゼルバーグ。お前だけはいつまでもまとも面こきやがってよ、俺と同じく落ちてる癖にムカつくぜ。そんなに騎士だった頃が懐かしいか?」
ハルバートがそう質問すると、彼は一言言い返した。
「お前と私は違う! お前は騎士の誇りを捨てたが、私は騎士の誇りを捨ててないだけだ! 悔しかったらいい加減、その目を覚ましたらどうだ! クルセードの名に傷がつくぞ、それともお前にとってはすでに過去の話か!?」
リーゼルバーグは真っ直ぐにジッと見つめると、彼自身に語りかけている様子だった。ハルバートは突然カッとなると、彼の胸ぐらを掴みかかった。
「なんだと、余計なお世話なんだよ! 相変わらずテメェは生意気な奴だぜ! クルセードだぁ? ふざけんな、んなもん今さらクソ喰らえだ! テメェの騎士道精神には毎回吐き気がするんだよ! いい加減、騎士ヅラするのはやめろ! 過去に囚われてるのはテメェのほうだろ!?」
2人がいきなり睨み合いを始めると、一触即発の状態だった。隊長と副隊長が睨み合うと、周りは直ぐ様2人の間に割って入った。部下の数人が2人を引き離すと、周りは冷や汗をかいたのだった。ハルバートは気をとり直すと尋ねた。
「おい、今朝方に囚人が1人脱走したってのは本当か――?」
「ああ、本当のことだ」
彼はそう言って答えた。すると、ハルバートはいきなり掴みかかった。
「俺に何故、報告しなかった!」
「覚えていないのか? 今朝お前に報告しただろ?」
「なっ、何……!?」
彼はそう話すと、呆れた表情で一言指摘した。
「今朝その事を報告したが、お前は色情に溺れていただろ? それにアイツから貰った薬もやっていた。そんな状態で一体何を覚えていられるんだ? いくら地に落ちたからと言えでも、私はお前みたいに落ちたりはしない!」
リーゼルバーグはそう話すとそこで問いただした。彼の説教にハルバートは、ウザそうにそこでため息をついた。
「おいおい、なんだよまた説教か? 説教なら後にしろよ。もう言い下がれ!」
ハルバートはウザそうな態度で彼を軽くあしらった。リーゼルバーグは黙ると近くにあった椅子に腰をかけて座った。一通り確認を終えるとジャントゥーユの方を向いてハルバートは返事をした。
「……なるほど、どうやら本当みたいだな。おもしれえ、一応聞いてやる。どうなってるのか話せよ?」
ハルバートがそう言うと、ジャントゥーユは今までの話を簡単に纏めて経緯を彼に話した。
「ふーん。そうか、オーチスの奴がそんなことを仕出かしたのか。でもあいつがそんな馬鹿げた事をするとは思えねーのは気のせいか? 確かにあいつとは古い付き合いで顔馴染みだけどよ、あいつにそんな度胸はねぇ。何せあいつは昔からチキン野郎だからな!」
ハルバートはそう言って話すと、突然思い出し笑いをして笑い飛ばした。