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コンビニおもてなし 春のフェア その1

 辺境都市ウリナコンベでは、コンビニおもてなし7号店の開店準備が着々と進んでいます。

 建物に関してはルア工房のルアが、社員のみんなと一緒に工事を進めてくれていまして

「あと1週間もすれば完成するよ」

 笑顔でそう伝えてくれました。

 先日、このウリナコンベの商店街組合の組合長として赴任したばかりのエレエもすでに組合長としてバリバリ仕事をこなしているようです。
 そんなエレエの元には、新しく開店するコンビニおもてなし7号店で働いてもらう店員の募集をしてもらっています。

 この7号店では、既存店で働いている数名に現地雇用した人を2名程度雇用した体制で営業していく予定にしていますので、できることなら早めに魔王ビナスさんによります研修を受け始めてほしいと思っているんですけど、こればっかりは応募があるのを待つしかありませんので、エレエからの連絡が届くのを待つことにしようと思っています。

◇◇

 そんな中、コンビニおもてなし本支店では新たなフェアを開催することにしました。

『春のおもてなし祭り』

 と、いたしまして、春らしい季節限定商品を販売する予定にしているんです。

 その限定商品ですが……

 まず、食べ物に関しましては、ちらし寿司を作ってみました。
 ティーケー海岸のアルリズドグ商会から購入した、僕の世界のエビによく似たエビランと、クッカドゥウドルの卵で作った錦糸卵などの春らしいトッピングを施したちらし寿司です。
 サヤエンドウや椎茸、ジャッケのいくらなんかものっけて、酢飯が見えなくなるくらいまで具材で覆い隠しています。

「女性客の皆様にはサンドイッチなどの方が人気だったりするし、案外評判になるかもね」
「そうですわね、見た目もかわいらしいですし、大変よろしいのではないでしょうか」
 
 弁当作成部門の僕と魔王ビナスさんは、試作品を前にして笑顔で頷きあいました。

◇◇

 ヤルメキススイーツ部門もフェアに合わせて新商品を投入します。

「て、て、て、店長さんのご意見を参考にさせていただきまして、こ、こ、こ、このようなものを考えてみたでごじゃりまする」

 そう言って、ヤルメキスが僕に見せてくれたのは、僕の世界のイチゴによく似た、イルチーゴをふんだんに使用したスイーツの数々でした。

 イルチーゴ大福
 イルチーゴクレープ
 イルチーゴパフェ
 イルチーゴプリン
 イルチーゴの入った杏仁豆腐

「うん、どれもすごく美味しそうだね」
「あ、あ、あ、ありがとうごじゃりまするぅ。テトテ集落の果樹園からイルチーゴを大量に提供していただけることになりましたので、どうにかこれらの品々を準備することができたでごじゃりまするぅ」
 
 そう言うと、いつものようにその場でジャンピング土下座をしていくヤルメキス。
 昔は後方でんぐり返りをしながら土下座をしていたヤルメキスですけど、そのせいで当時はしょっちゅうあちこちにぶつかっていたんですけど、今のジャンピング土下座だとその場で飛んでその場で土下座するので怪我の心配が少ないもんですから僕としましても、安堵しきりだったりします。

 ちなみに……

 イルチーゴ大福は、和系スイーツを得意にしているケロリンが、
 杏仁豆腐は、中華系を得意にしているアルカちゃんが、

 それぞれ中心になって作成してくれています。

 特に、アルカちゃんは春から学校に行くことも決まってすっごく張り切っているもんですから、

「もっともっとおいしいスイーツを開発するアル」

 そう言って、気合い満々な様子でした。
 ちなみに、アルカちゃんが最初に作った杏仁豆腐の試作品は、リョータの元に届けられたのはいうまでもありません。

 僕の長男のリョータと、そのリョータに一目惚れして押しかけ女房的な勢いで我が家の一員に加わったアルカちゃんですけど、すでにパラナミオ達にも、

「アルカちゃんは大切な妹です!」
「アルトもそう思っておりますわ」
「ムツキもにゃしぃ!」

 そのように認識されている次第です、はい。

◇◇

 テンテンコウ♂がメインになって作業をしてくれているパン類部門では、イルチーゴをはさんだフルーツサンドイッチをラインナップに加えています。

 また、コンビニおもてなしにロールケーキを納品してくれているオトの街で食堂を経営しているラミアのラテスさんは、イルチーゴを使ったロールケーキをフェアに合わせて納品してくれる予定なんですよね。

 ラテスさんには、コンビニおもてなしがテトテ集落の果樹園から購入したイルチーゴを提供しているんですけど、

「こんなにたくさんイルチーゴを使えるなんて、なんかすっごく幸せ」

 ラテスさんもそう言ってすっごく喜んでくれているんです。
 一緒に食堂を切り盛りしているヨーコさんも喜んでくださっているそうなので、僕もうれしくおもっている次第です、はい。

 とりあえず、春のフェアの新商品が一通りそろいましたので、最後に宣伝用のポスターを準備しようと思います。

 コンビニおもてなしで使用している宣伝用のポスターは、僕が元いた世界で使用していたデジカメで撮影した画像をパソコンで加工し、プリンタで打ち出したものを魔女魔法出版で大量印刷してもらっています。

 そんなわけで、早速僕はデジカメ片手にある場所へと移動していきました。

 僕が向かったのは、辺境都市ナカンコンベの近郊にありますフク集落です。
 ここには、おもてなし商会ナカンコンベ店を切り盛りしてくれているファラさんが、孤児のみんなと一緒に暮らしているんです。

 ここの子供たちのことが大好きで仕方がないファラさん。

「べ、別にあれよ……大人数で暮らした方が楽しいというか、あれこれ作業をさせることができるから便利なのよ」

 頬を赤くしながらそう言われるのですが……子供たちによると、

「ファラ様はなんでも全部やってくださるんです」
「私たちもお手伝いしたいっていうんですけど」
「いつも『かわいいおまえたちの手を借りるほどじゃないわ』と言って……」

 とのことでして……まぁ、いつもながらですがツンデレ全開なファラさんなんですよね。

 で

 そんなファラさんと子供たちが、森の中を歩いている図柄でいこうと思っています。
 みんなが手に、春のフェアの新商品を手にしているといった感じですね。

 これをファラさんにお願いしたところ
「ま、まぁ……アタシは気乗りしないんだけど、子供たちがやりたいって言うから、仕方なく受けてあげるわ」
 と、言ってくださったのですが、その後僕の耳元に口を寄せてですね 
「……こ、個人的に10枚くらいもらえないかしら? お、お金は払うからさ」
 そう、僕に申し出てきたファラさんでして……

 以前、別のフェアの際にモデルになってもらった際にも、こんな感じで個人的にポスターを持って行かれて、それを今でもこっそり眺めては、うれしそうになさっているんだそうです。

 もちろん、僕がこの申し出を快諾したのはいうまでもありません。

 そんなファラさん一向に、早速森の中を、フェアの新商品を手に歩いてもらいました。
 子供たちは、ファラさんと一緒だとすっごくいい笑顔をしてくれますので、写真は一発でOKになりました。

「じゃあ、そのフェアの新商品はお礼としてみんなにあげるから」

 僕がそう言うと、子供たちは大歓声をあげていました。
 せっかくなので、と、僕も一緒に食べることになったのですが……

「ファラ様、私のこれを食べて!」
「僕のも!」
「私のも!」

 子供たちは、自分のスイーツを手に、ファラさんの元に集合していました。
 大好きなファラさんと一緒に食べたいって思っているんでしょうね。

 子供たちは、顔を輝かせながらファラさんの周囲に群がっています。
 それを、ファラさんは

「も、もう、仕方ないわね」

 と言いながら、みんなが差し出しているスイーツを一口だけ食べているのですが、その笑顔がまたとっても素敵でして……思わずそれも一枚撮影した僕でした。

 ……後日、この写真がフェアのポスターに使用されることになったのはいうまでもありません。

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