151章 天候を味方につける
狼犬を倒した直後、周囲が暗くなっているのを感じる。
空を見上げると、真っ黒に曇っていた。先ほどまでは晴れていただけに、天気の急変に驚かされることになった。
空が真っ黒になった直後、後方から巨大な電流を感じることとなった。アカネがそちらに視線を向けると、ナマズのような生物が宙を舞っていた。海の中で生きていると思っていただけに、違和感は大きかった。
ナマズは体内で電流を作り出したあと、電流攻撃を仕掛けてくる。身体は小さいにもかかわらず、威力はすごそうだった。体内に電流のタンクを、詰め込んでいるのかもしれない。
絶対防御のスキルがあるので、電流を直に受けることにした。裏世界の住民と比べることで、どれくらいの戦闘力なのかを測るのが目的である。
身体で受けた電流は、裏世界の住民の100倍くらいの威力があった。小さい体をしているにもかかわらず、戦闘力はかなりのレベルに達している。生身の生物であったなら、瞬時に命を落としていると思われる。
アカネは絶対防御を所持しているため、ダメージを受けることはなかった。なにごともなかったのように、飄々としている。
ナマズのサイズは20センチなので、的が非常に小さくなっている。それゆえ、魔法攻撃を当てるのは厳しい。接近戦で仕留めたほうが、時間短縮になるのではなかろうか。
ナマズのすぐ近くにワープすると、強烈な拳を繰り出す。ナマズは身体の柔軟性を利用して、アカネの攻撃を的確に回避していく。ゴキブリ、狼犬と同じく、素早さはかなりのレベルに達している。
一〇〇発くらいのパンチを繰り出すも、一発も当てることはできなかった。柔軟性もさることながら、的の小ささもネックとなっていた。的が小さすぎるので、命中させるのは厳しくなっている。
行動を先読みしたパンチを繰り出してみる。魔物は外れているのを察知したのか、糸のようなものを吐き出してきた。攻撃は電流だけだと思っていたので、不意を突かれる格好となった。ワープの魔法を使用することで、かろうじて回避することができた。
黒くなっている空が、かすかに光っていた。ナマズはその瞬間を利用して、回避不可能な電流攻撃を繰り出してきた。アカネはバリアをはることによって、ナマズの電流攻撃を防くごとにし
た。それ以外の方法では、電流が身体を直撃することになる。
電流攻撃はすぐに消えなかった。どのような力によって、電流が維持されているのだろうか。
電流がなくなったのは、20分後のことだった。永続的ではなかったものの、ここまで維持されるとは思わなかった。
アカネが元気なのを確認したのち、ナマズは電流攻撃を繰り出してきた。先ほどの衝撃が強かったからか、威力はさほどではなかった。
攻撃を回避し続けることで、ナマズの身体が限界を迎えるのを、待とうかなと思った。負荷がかかりすぎれば、ゴキブリみたいに爆発する可能性は充分にある。
ナマズは絶好の好機ととらえたのか、次々と攻撃を繰り出してくる。アカネは回避しながら、早く爆発しろ、早く爆発しろ、と心の中で強く願っていた。
ナマズの身体はタフなのか、爆発する気配を見せなかった。ゴキブリと同じ方法では、勝利を収めることはできないようだ。戦略の変更を迫られることとなった。
いろいろな手を使用して、突破口を切り開こうとするものの、どれもうまくいかない。あまりにうまくいかないので、焦りを感じることとなった。
万策が尽きたかなと思ったときに、空の色は青さを取り戻していく。魔物界というのは、天気が安定しない場所なのかもしれない。
空が青くなった直後、ナマズは急激に弱々しくなった。ドーピングの薬が切れて、ボロボロになった人間さながらだった。
攻撃を繰り出すと、ナマズはあっという間に倒れることとなった。先ほどまでの苦戦が、幻に感じられるほどだった。空が青くなるだけで、ここまで弱体化するのは珍しい。
アカネは敵を倒したあと、胸にゆっくりを手を当てた。心にゆとりを作ることで、次の戦いを有利に進めたかった。心が乱れていると、余計な時間を費やすことになる。正常心を保つこと
が、仕事をするにあたって、重要なカギとなる。