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「俺もヤツに直接聞いた話じゃないから詳しい事はわからないけどよ。なんでも両親は法で裁かれて、どこかの監獄にいるって話だぜ? あ、さきに言っとくが2人が生きてるか死んでるかなんてわからないから聞くなよ」
ケイバーはそのことを言うと自分のナイフを取り出して、手でナイフをイジリだした。
「因みに母親の方は牢屋の中でヤツを出産したらしい。でも、それをとりあげた助産婦が生まれてきた赤子の顔を見るなり突然悲鳴をあげたんだ。生まれてきた赤子の顔は、それはそれは醜い化け物のような顔だったんだ。それこそ身の毛もよだつくらいにな。まるで天と地がひっくり返るような衝撃に、赤子をとりあげた助産婦はそのあと頭が綺麗にイカれちまったらしい」
ケイバーのその話に、ギュータスは背筋にゾッとするような寒気を感じた。
「醜い顔で生まれてくるなんてまさに天罰としか言いようがないな。でもよう、本当にそんな事ってあるのか? 全部お前の作り話なんかじゃないのか?」
ギュータスがその事を言うと、ケイバーは突然クククッと笑った。
「さぁて、どうかな? でも奴の顔が醜いのは何よりの証拠だ。いや、それとも奴の顔がそうなったのには他に何か原因があったかも知れない。あんたはどっちだと思う?」
ケイバーはそう言うと、持っているナイフをギュータスに向けて尋ねた。
「チッ、知るかよ! 奴の顔がどうだとか、俺には関係ない話だ。本当てめぇの情報源には毎回のごとく見上げるぜ、一体どこからそんな話を仕入れてきたんだ?」
ギュータスが不意にその事を言うと、ケイバーは怪しく笑った。
「そうだなぁ、情報収集が俺の趣味って事にしておいてやるよ?」
彼はそう言うと椅子に座ったまま、持っているナイフを壁に向けて投げた。
「――とんだ悪趣味だな。お前みたいなクソな奴は、人に嫌われるタイプだぜ。まあ、とっくに嫌われてもおかしくないけどよ?」
ギュータスがその事を言うとケイバーは、あっさりと言い返した。
「なんとでも? 人に嫌われるのは昔から慣れてるから今更なんとも思わねぇ。おままごとしている連中なんかと仲良くつるむよりかは1人の方が気楽でいい。俺はいつもそうしてきたんだ。信じれるのは自分だけだからな…――!」
ケイバーは独り言のようにポツリと呟くと、椅子から立ち上がって壁に突き刺さったナイフを抜き取った。
「なんかお前の話わかる気がする。信じれるのは自分だけ、俺もお前も……!」
2人だけしかいない部屋の中には、突如沈黙が駆け抜けたのだった――。