第32話 ビターな恋※梨々Side※
昨日大会のとき五郎くんから言われたこと。
ずっと頭の中をグルグルしてる。
優くんが、男の子を好きなんだ、ってこと、、、
今日は団体戦があって、2日間の大会が終わった。
無事に男女ともに団体戦で優勝できた。
梨々たちも団体戦で戦わせてもらって、一生懸命頑張ったけど、やっぱり先輩たちには叶わなくって、5戦中2敗しちゃった。
だから落ち込んでたんだけど、ペアの小春が、大会が終わった後にゲームセンターに寄って、得意なクレーンゲームで大きなピンクのクマさんのぬいぐるみを取ってくれた。
それを梨々にくれて、「お疲れ様、ありがとね!」って言ってくれた。
だけど、梨々は負けちゃったことを引きずっちゃったし、優くんの秘密のことが頭から離れなかったしで、お返ししたりする余裕がなかった。
だから帰りにお家に呼んで一緒にご飯を食べることくらいしかできなかった。
ご飯作ってくれたのもママだしね。
梨々は何もしてないしできない。
今度ちゃんと小春にお礼しなきゃ。
何がいいかなーって、もらったクマさんを抱きしめてベットに寝転びながら考えてた。
なるべく優くんのことから気を紛らわせようとしてたのに、、、
ふと、机の横に掛けてあるカバンについたウサギさんに目がいっちゃって、、、
ゴールデンウイークの時に、優くんが小春と同じようにクレーンゲームで取ってくれたもの。
とっても嬉しくて、凄く凄く大切にしてた。
日曜日の夜とかに、学校が嫌だなーって思っても、カバンのウサギさんを見れば、元気になれた。
ママに怒られて、机の上で泣いた時も、横にいたウサギさんを撫でたら涙が止まった。
会えない日だって、ウサギさんのお陰で次会える時を楽しみにしよう、って思えてたのに、、、
今は、次どんな顔して会えばいいか分かんないよ、、、
幼なじみの男の子って誰だろう?
隼くんかな?
五郎くんかな?
いや、でも隼くんや五郎くんではない気がする……
あんなに仲良しなお友達だから。
お友達と恋愛はまた違うでしょう?
だとしたら、梨々の知らない人なのかな。
同じ学校?それとも他校?年齢は同じなのかな違うのかな……
すごく気になって落ち着かないよ、、、
優くんって……
女の子には、興味ないのかな。
二人きりで帰ったときも、近くでお話する時も、ふとした時に手と手がちょん、って触っちゃった時も
優くんはドキドキしなかったのかな、、、
ドキドキしてたのは、梨々だけだったんだよね、、、
優くんはきっと、好きな男の子にしか、ドキドキしないんだよね、、、
なんだろう。
優くんの好きな相手が男の子だ、って言うよりも、
梨々が今感じてるこういう気持ちを、優くんも他の誰かに感じてる、っていう事実の方が悲しいかも。
ドキドキしたり、キュンってなったり、やさしい気持ちになったり、元気になったり。
梨々は、優くんに恋をして良いことばっかりだったよ。
小春がね、
恋愛は苦いものだ、って言ってたけど、梨々は今までそれがどんなものか分からなかった。
だけど、今初めて分かったよ、、、
恋愛って、こんなに苦しい気持ちになることもあるんだね、、、