137章 紅茶のおもてなし
「紅茶ができたよ・・・・・」
ティーカップを5つ用意し、それぞれに紅茶を注いでいく。室内には柔らかい香りが広がり、ストレスが減少することとなった。
ユメカが紅茶を手に取ると、ものすごい勢いで飲んだ。この姿を見ていると、喉に食事が通らない女性には、とても見えなかった。
ユメカは一杯の紅茶を飲み干したあと、別のカップに手を伸ばす。あまりにも早かったので、ストップをかける猶予はなかった。
シオリがカップを手に取ると、紅茶を口に運んでいた。
「紅茶とは思えない、柔らかい味をしています」
シオリは味わいを楽しむように、ゆっくりと飲み進めていく。一気飲みした女性とは、対照的な姿を見せていた。
ココアもカップを手に取ったあと、紅茶を口に運んだ。
「何度飲んでもおいしいです」
ミナがカップを手に取ろうとしたときだった。二杯目を飲み終えた女性が、新しいカップに手
を付けてしまった。紅茶のあまりのおいしさに、状況判断ができなくなっているようだ。
「中毒になるおいしさです・・・・・・」
最高ランクの食材には、CBD(カンナビジオール)*が入っているのかな。そのように感じてしまうほど、ユメカが夢中になっていた。
紅茶を飲んでいた女性に対して、シオリが笑顔を送っていた。一人の友達が食欲を、取り戻したことを素直に喜んでいる。
「ユメカ、すごい飲みっぷりだね」
ユメカはティーカップに視線を送ったあと、
「みんなの紅茶を飲んでしまったみたいだね」
といった。紅茶に夢中になっている間は、気が付いていなかったようだ。
ミナは紅茶を取られたことが、気に入らなかったらしく、唇を尖らせていた。4人の中で唯一、紅茶を楽しむことができなかった。
「ユメカ、他人の紅茶を飲むのはNGだよ」
「ミナ、ごめん・・・・・・」
「最高級の紅茶を飲みたかったよ」
不満な顔を浮かべている女性に、
「紅茶はまだまだあるよ・・・・・・」
といった。ミナはその話を聞き、満面の笑みを見せる。
「アカネさん、ありがとうございます」
紅茶と一緒に、パンや肉を準備しようかなと思っていると、ユメカから要望がなされた。
「醤油ラーメンを食べてみたいです」
店主の血の滲むような努力を経て、最高の一杯ができあがっている。ラーメンに対する強いこだわりを感じられる、味となっている。
「醤油ラーメンが食べたいの?」
「はい。ココアから話を聞いて、とっても食べたくなりました」
「セカンド牛+++++」を大量に食べた女性が、ユメカの意見に同調する。
「私もラーメンを食べたいです」
シオリも同じだった。
「私も食べてみたいです」
「ラーメンを食べたいなら、並べばいいんじゃないかな」
まっとうなことをいったつもりだったのに、ユメカの表情は曇ることとなった。
「4~5回ほど並んだものの、一度も入ることはできませんでした」
「そうなんだ・・・・・・」
「一度でいいから、最高の醤油ラーメンを食べたいです」
ラーメンの話をしていると、ドアがノックされる音がする。
アカネが扉を開けると、思いもよらない人物が立っていた。
「アカネさん、お久しぶりです」
「フタバさん、こんにちは」
1ヵ月前に会ったときよりも、身体に肉がついている。そのこともあって、たくましくなったように感じられた。
フタバは家の中を見て、足をストップさせた。自分が入ってはいけないことを、直感で察したようだ。
「私は失礼します」
このまま返すのも悪い気がしたので、自分なりに機転を利かせることにした。
「フタバさんは、何のためにやってきたの?」
「アイコが会いたい、会いたい、会いたい、会いたいというので、アカネさんにお願いにきまし
た」
アイコはフタバの長女である。握手、サインを求めてくるなど、アカネと積極的に関わろうとしていた。
「わかりました。時間が空いたときには、訪ねるようにします」
「ありがとうございます。アイコがとっても喜びます」
フタバは目的を達成したことに、安堵の笑みを浮かべていた。
*合法な成分のみを含んだ麻薬であり、摂取しても罪になることはない。