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「貴様はこの話どうおもう?」

 クロビスがそう質問するとケイバーは首をかしげて答えた。

「さあな。でもウソにしてはなんか迫真に迫るんだよなぁ。コイツが言うにはよ、オーチスが逃げた囚人と度々、会話をしてたって所が気になるな……」

 ケイバーがそう言うと彼はハッキリと、嘘じゃないと再び言い切った。オーチスは自分は無実だと訴える一方で、若い看守の男は、彼が牢屋の中に居た囚人の男と2人で度々会話をしている姿を何度か目撃したとクロビスに証言したのだった。そして、オーチスが囚人の脱獄に加担しているとハッキリと彼は断言した。クロビスはそこでケイバーに再度尋ねた。

「もし、この男の話が本当だったらお前はどうする?」

 クロビスがそう尋ねると、ケイバーは自分の頭をかきながら答えた。

「……そうだな。俺だったら一応、決定的証拠をだして貰いたい所だな。そんで嘘か本当かを見極める。――ん? なんだよ、ってことは何かわかったのか? お前はどっちの話を信じてやるんだ?」

 ケイバーがそう尋ねると、クロビスは鼻で笑い「フン」と答えた。

「バカを言え! 信じるも何も囚人が一名、脱走している事実には何も変わらんだろ!? このどちらかに落としまえをつけて貰うだけだ……!」

 クロビスはそう言うと2人に警棒を向けて、冷酷な顔で話したのだった。

「命を絶つのはお前かオーチス? それともお前かチェスター? 今から死刑宣告と言った所か、2人とも今のうちに逸書は考えとくんだな!」

 クロビスのその言葉に2人は震え上がった。オーチスは何故だと言わんばかりにその場で騒いで暴れた。若い看守の男。チェスターは、地面に手をついて絶望した顔のまま言葉を無くしたのだった。チェスターは「嫌だ!死にたくない!」と、クロビスの足下にしがみついて訴えた。クロビスは、そんな若い看守の男の嘆きの姿を上から見下ろしながら冷たく笑ったのだった。そして、自分の足下にしがみついて嘆くチェスターの姿をみながら彼は上か見下ろした。

「そうかそうか、死にたくないか? だったらオーチスが囚人の脱獄に加担したと言う、決定的証拠を出して貰うか? お前はさっきからオーチスが脱獄に加担していると何度も証言している。そしてそれは事実だと私に言ったな。私が思うにお前の自信は一体、どこからくるんだ? 何故、オーチスが脱獄に加担しているとハッキリと言えるんだ? だったら決定的証拠を私に見せてもらおうか?」

 クロビスはそういい放つと、チェスターを上から見下ろしながら冷酷な表情をみせた。オーチスは椅子の上でチェスターに言い放った。

「そ、そうだ……! 証拠だ……! 私が共犯者のようにお前は言っているが、もし私が共犯者だったら動かぬ証拠を見せて貰おうか!? 私は神に誓って無実だ! 脱獄した囚人の手助けなどするはずがないだろ!? 手助けして私に何の得がある!? 私はこのタルタロスに何年も勤めているんだぞ!? 罪人が死のうが死なないが私には一切関係ないことだ! あいつらは裁かれて当然なんだ!」

 オーチスは椅子の上で大激怒しながら彼に言い放つと、息を切らせながら怒りに震え上がったのだった。そんなオーチスをケイバーは背後から、まあ落ち着けよと軽くなだめた。不穏な空気が漂う部屋の中はやがて殺気だち、ピリピリとした空気がはりつめた。オーチスは睨みつけながらチェスターにそう言うと、クロビスも同様にチェスターのことを煽った。そして、ケイバーも彼と一緒に煽ったのだった。ギュータスは自慢の斧を振りながら、その場でやる気を見せた。

「さあ、やられるのはどいつだ!? 早くこの斧に新鮮な血を吸わせろ!」

 ギュータスはそう言うと殺気だった瞳で、斧を持ったのだった。周りに問い詰められると、チェスターは向きになって反論した。

「しょ、証拠ならある……! 俺はあの日、2人の会話を聞いていたんだっ! オーチスさんは囚人と鉄格子の前で会話をすると何か書いてある紙を囚人に手渡したんだ! 俺はまさかと思った! まさかオーチスさんが、囚人に脱獄の話を持ちかけてるなんて信じられなかったんだ!」

 そう言って彼が顔を青ざめさせながら反論すると、オーチスは大激怒した。

「ふざけるな小僧、今すぐその舌を引っこ抜いてやる!」

 オーチスが怒りながら騒ぐと、クロビスはケイバーに黙らせろと指示を出した。ケイバーは言われるままに彼の頭を警棒でガンと殴った。

「うるさいんだよ、黙れ!」

 頭をガンと叩かれると、血が地面に流れ落ちた。クロビスは彼が黙って大人しくなるとチェスターに再び質問した。

「おい、囚人はその紙を受け取ったのか?」

 クロビスの質問にチェスターは正直に頷いて答えた。

「はい……! 俺はこの目でオーチスさんが囚人に紙切れを渡す所をハッキリと見ました!」

 チェスターがそう話すと、オーチスは嘘だと強く否定した。

「嘘だデタラメだ! そんなことがあってたまるか、私は無実だ!」

 オーチスは自分は無実だと必死で訴えても、疑いの目は彼に向けられた。

「なるほど……囚人はそれを受け取ったのか? では、それは今どこにある?」

 クロビスの質問にチェスターは言葉を濁らせながら答えた。

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