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「おい待てよ、お前だけさきに抜け駆けは許さないぜ!」
ギュータスとジャントゥーユは、あの看守を拷問する気満々だった。2人が先に部屋を出て行くと、ケイバーは不意にクロビスに尋ねた。
「――ところでリオファーレの姿が見えないが、奴は来ないのか?」
ケイバーが何気なく尋ねると、クロビスは不機嫌な顔で答えた。
「アイツは来ない、私がそうしたんだ! それにヤツは好かん! アイツを見ていると私がイライラするんだ! それにさっきみたいにアイツにまた邪魔されたらこっちがたまったもんじゃない!」
クロビスは感情的になりながらケイバーにそう言うと、グラスに赤ワインを注いで一口飲んだ。そして、再びイラつくと持っていた飲みかけのワイングラスを壁にめがけて投げつけて割ったのだった。
「チッ、あの偽善者め……! いつか思い知らせてやる……!」
彼はそう言うと、看守の帽子を被って警棒を持った。ケイバーは、カッカするクロビスを見ると後ろからわざとらしく抱きついてきた。
「まぁまぁ、そんなカッカするなよ。チャンスはいくらだってあるんだ。いつか2人でアイツをしめようぜ?」
ケイバーは悪意に満ちた顔でそう話すと、クロビスはゆっくりと後ろを振り向いた。
「そうだなぁ、俺はアイツの真っ白な肌をナイフで引き裂いて全身の皮を剥いでやりたいぜ。そしたらきっと楽しいだろうな」
ケイバーがニヤつきながら楽しそうに話すと、クロビス一言言い返した。
「一つ貴様に言っておく、アイツは私の獲物だ。つまりお楽しみは1人で十分だってことだ。解ったか?」
クロビスはそう言うと警棒で、ケイバーの顎を上にクイッとあげて自分の力を示した。
「無駄口は済んだかケイバー? 私に馴れ馴れしく触ると、その指を全部へし折って後悔させてやるぞ!」
クロビスが自分の権力を誇示してそう言うと、ケイバーは大人しく彼から引き下がって離れた。そして、両手をポケットに突っ込んで一言返事をすると足早に退散して部屋から出て行った。
「フン、異常者め……!」
クロビスは蔑んだ目で言葉を吐くと、触られた肩を手で軽くはたいた。そして腰に警棒と鞭を装備してから部屋を出て行った。広い廊下にはカツーンカツーンと恐怖の靴の足音がタルタロスの牢獄の中に響いたのだった――。