2
「ッ……!?」
リオファーレの意外な行動に周りにいた誰もが一斉に驚いた。そして、クロビスは唖然となって彼を見た。彼の腕からは、突き刺さった短剣から血がポタポタと地面に流れた。リオファーレは鋭くクロビスを睨むと短剣を腕から抜き取り、凛とした口調で彼に言い放ったのだった。
「こんなことをしている場合じゃないだろ!? 頭を冷せクロビス…――!」
リオファーレのその言い方にクロビスはムッとした表情を見せた。
「貴様、どう言うつもりだリオファーレ!?」
クロビスはそこでカッとなるとリオファーレにいきなりくってかかった。激怒した様子の彼とは対照的にリオファーレは、冷静な言葉で話した。
「落ち着けクロビス、お前は解っていない! 囚人がこの要塞の中を逃げ回っている。それがどういう事か本当にわかっているか!?」
リオファーレが冷静になりながら彼に向かってそう諭すと、ギュータスは彼らに口を挟んだ。
「ああ、そうだ! リオファーレの言う通りだぜ! 早く脱走した囚人を捕まえよう!」
ギュータスがそう言うとクロビスは、やっと我に返った。
「ちっ、生意気な奴だ……! 親父のお気に入りじゃなかったら今頃その綺麗な顔をこの短剣でズタズタに切り刻んで、醜い化け物の顔をしたオークの顔に変えてやってるところだ!」
彼はそう言うと、血のついた短剣を懐におさめた。クロビスはそこにいた全員に命令を下した。
「脱走した囚人を捕まえた者には、褒美で金貨200枚を与える! さあ、気合いを入れて探せ!」
彼がそう言って命令をすると、看守達は金貨に目が眩んだのか。四方方にちりじりになって逃げた囚人を探し始めた。そこにいた看守達がいなくなると、他の4人も後からバラバラになって行動した。そんな時、クロビスは後ろからリオファーレの肩を掴むと、壁にドンと押し付けて一言忠告したのだった。壁に押し付けるとクロビスは怒った口調で言い放った。
「私はここの所長の息子だぞ! そして、このタルタロスの牢獄は私が管理してるようなものだ! 見ろ、鍵だってちゃんとあるだろ!? 私がいなければこのタルタロスからは簡単に出られはしない!」
クロビスがそう言うとリオファーレは無言で黙った。
「いいか貴様この私に指図をするな! 二度とだ! 私に指図したらお前を罪人の牢屋の中に閉じ込めて、一生そこから出られなくさせてやる!」
彼がそう言って脅しかけると、リオファーレは黙って一言返事を返した。
「ああ、わかった…――」
リオファーレがそう言うと彼は肩から手を離し、脱走した囚人をさがしにクロビスも牢獄の中を探し回ったのだった。