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「――何してるんだ貴様? 食事の時間だ、早く食べろ!」

 銀髪の若い看守がそう急かすように言うと、少年は頭を横に振った。するとさっきの嫌味な看守が、少年の手を自分の履いてる靴で踏みつけてきた。

「どうしたんだ~? いつも見たいに旨そうに食えよ~? せっかく捕ってきてやったのに食べたくないとか言ってんじゃねーよ」

 看守はそう言って、少年の手をさらに足で容赦なく踏みつけたのだった。少年は痛みで泣き叫ぶが、誰も救う者は其処には居なかった。 ただ悲鳴だけが暗闇の牢獄の中で響き渡った。

「食べるのが礼儀だろ!? さあ、食べろ! 食べるんだ!」

 嫌味な看守は少年の頭を鷲掴みにすると、ネズミの死骸を口元に無理やり近づけた。泣きわめく少年を看守2人は、哀れみすら感じない程にさらにいたぶったのだった。そして殴られて大人しくなると、少年は泣きながら看守の言う通りにした。

「さっさと食べろよクソ異端児!」

 黒髪の若い看守は、ネズミの死骸を少年の口の中に突っ込んだ。少年は死んだネズミの死骸に嗚咽して、吐きそうになった。だが、看守達にこれ以上殴られたくなかった少年は、2人の看守達の前で口に入れられたネズミを食べ始めたのだった。

 静寂の中、グチャッと磨り潰す音が牢屋の中で響き渡った。この世のものとは思えないくらい酷い味に、少年は我慢してネズミを泣きながら食べたのだった。噛むたびにグチャッグチャッと、骨を噛み砕く音も聞こえてきた。

 自分の耳を塞ぎたくなるような音が頭に響き。服は血でベトベトになり、口からはネズミの血が滴り落ちた。看守はその様子を見ながら、2人して嘲笑いをしたのだった。そして、少年はネズミの死骸を食ベ終えるとその途端に気を失うように床にバタンと倒れた。2人の看守は少年をいたぶることに満足すると、牢屋に鍵をかけてそこから遠ざかったのだった――。

 少年は床に倒れたまま、悔しさと怒りに自分の拳を強く握った。怒りで唇を噛み締めると、口元から血が流れ出た。そして、牢屋の中でけたたましく叫んだ。

『ウオオオオオオオオォォォッッ!!』

 吹き荒れる強い風の音さえ消し去るように、少年は牢屋の中で強く大声を出して叫んだ。少年はその時に強く感じた。


 この世に神はいない…――。


 あるのは人の憎悪と憎しみと、強い怒りだけがそこにあった。少年は神から遠ざかると、邪悪なる者に力を求めたのだった。

 力が欲しい! 全てをのみこみ、破壊尽くす程の巨大で大きな力が欲しい――!

 少年は心の底から強くそのことを願うと、声に出して呟やいた。そして、その日から力だけを求める者へと染まるのであった。

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