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――数日後、商人が骨董品を売りに屋敷に訪れた。彼は直ぐさま商人に怒鳴って怒りを露にした。
「このウソつきのペテン師め……! 人形に話かけても返事はかえってこなかったぞ!?」
そう言って彼は、感情を剥き出すと激怒した様子を見せた。
「当たり前ですよ。だって人形なんですから返事は返って来ませんよ?」
「な、何だと……!? やはり貴様はペテン師だな!」
「いいですかローゼフ伯爵、そのままでは#ただの__・__#人形です。この前そう言ったでしょ?」
「なんだと貴様……!?」
アーバンがあきれた表情で言い返すと、ローゼフは急に頭がカッとなった。
「この前、その話を言いかけましたら途中で貴方様の使用人に外に閉め出されましてね。あの日は冷たい雨の中を私は…――」
「ええい、うるさい黙れ! 早くこの人形をなんとかしろ!」
ローゼフは機嫌悪そうに言い返すと、商人に人形を乱暴に押し付けた。
「……わかりました。では、今から人形に魂を宿らす儀式を始めましょう」
「魂の儀式…――!?」
その言葉に、彼は目を細めた。
「この人形に魂を宿らすことが出来るのは、この人形の主人となる者だけです。ですから今から私の指示に従って下さい」
「何故わたしがペテン師のお前の指示など……!」
彼は命令されることに不愉快だと感じると、あからさまに態度に出た。
「では、このままでよろしいですか?」
アーバンが何気にそう言い返すと、ローゼフは舌打ちをしてイラついた表情を見せた。
「うるさい奴だ、いいからさっさとやれ……!」
ローゼフがそう言って返事をすると、商人は言われるままに指示を出した。
「まずは貴方様の髪の毛一本と、まつ毛一本と、切った爪の欠片を一つ下さい。それをこのお皿に入れて聖水をかけて清めます」
彼は商人の指示に従うとさっそく行動した。
「やったぞ、次はどうするんだ?」
「ではローゼフ伯爵、貴方様の血を一滴このお皿に入れて下さい」
商人はそう言って刃物を彼に手渡した。
「……わかった。指先の血でいいんだな?」
「はい、それで構いません」
彼は刃物で自分の指先を切ると、血を一滴お皿の上にたらした。すると一瞬にして皿の中が沸騰して全てが血の中に溶け込んだのだった。彼は見慣れない光景に唖然となった表情でそこに佇んだ。商人は皿の中に入っている血を、自らの唇に塗る事を彼に指示した。ローゼフは始め嫌がったが言われたとおりに指示に従うと、恐る恐る自分の唇に血を塗ると商人に話かけた。