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「このビスク・ドールは他の人形とは遥かに違います。これこそがまさに究極のドールでございます。きっと貴方様も驚くに違いません。今から話すことは他言無用です。誰にもこのことを話してはなりません。いいですねローゼフ様?」
「――ああ、わかった。これはお前と私だけの秘密だ」
商人は彼の返事を聞くと、人形を手に取って真剣な表情で話し始めた。
「最初に言いますが貴方様は霊の存在を信じておられます。それこそ超自然現象や、神や天使や、悪魔さえ信じておられます」
「そうだ。だったらなんだと言うのだ?」
「まさにそこなんです! 今から話すことはまさにそれなのです!」
アーバンは興奮気味の様子で話すと軽く咳払いをした。
「ゴホン……いいですかローゼフ様、これは特別な骨董品でございます。きっと今まで貴方様がみてきた骨董品とは遥かに違います。タロット占いも、水晶占いも、ウィジャボードも、霊との交霊術よりも、遥かに魅力的なものです」
商人の言葉に思わず聞き返した。
「知っていたのか……?」
「はい、貴方様の執事が私にそう話したのです。貴方様がオカルトに手を出していることを嘆いていました」
その話に頭がカッとなると、舌打ちをして愚痴をこぼした。
「あのおしゃべり執事め……!」
「この人形を一言で例えると摩可不思議な人形でございます。もっと砕いて言います。とこの人形は人の愛を欲しがる人形です!」
「あ、愛……? 愛を欲しがる人形……? バカな! 急に何を言っているのだお前は!?」
彼はその言葉に思わず反応すると、両手で胸ぐらを掴んで問い詰めた。
「お、落ち着いて下さいローゼフ様……!」
「これが落ち着いていられるか! 人形が人の愛を欲しがるわけがないだろ! 人形は人形なんだぞ!?」
ローゼフは興奮した様子で問い詰めると、商人は困った表情で言い返した。
「本当に本当なんです! この人形は愛玩ドールと言う幻の人形なんです!」
「愛玩ドール?」
その言葉に掴んだ胸ぐらをパッと離した。
「さようです。この人形は人の愛を欲しがる人形であり、その為に作られた特別な人形なのです……! まさに人形の中の究極のドールとも言えます!」
商人の話に思わず、彼は不思議とその話を聞き入れた。
「愛を欲しがる人形だと……? ばかな! それではまるで生きてるみたいではないか……!?」
ローゼフは気味悪そうな表情で言い返すと、人形が入った青い鞄を指差した。
「確かにその通りです。このままだとただの人形でございます。ですがあることをすると人形に魂が宿り、人に姿を変えるのです……!」
「なっ、なんだと……!?」
「言ったでしょう。この人形は不思議な人形だと――」
「あっさりと言うな! お前、気持ち悪いと思わないのか!? 人形が生きてるんだぞ……!?」
激しく動揺する彼の様子とはうってかわり、商人は落ち着いていた。
「すみません。職業病なのでそう言ったことについては免疫がついているので、あまり驚かなくなってしまったんです……」
「た、確かにお前みたいな変な骨董品屋は変わってるしか言いようがないな――」
彼はそう話すと両腕を組んで、あきれた表情を浮かべた。