134章 遊びの誘い
「アカネさん、すごろく大会に参加してほしいです」
「すごろく大会?」
街のイベントかなと思っていると、
「はい。友達だけで行っている、ささやかなイベントです」
とココアがいった。仲間内で開いている、イベントのようだ。
「友達の集まりに、部外者が参加してもいいのかな?」
「アカネさんと遊ぶことができたら、友達は大喜びします」
ココアは緊張した表情を浮かべている。ダメだといわれたときのことを、考えているのかもしれない。
アカネは十秒ほど考えたのち、
「わかった、参加する」
「アカネさん、ありがとうございます」
と返事をする。了承を得られたことで、19歳の母親は白い歯をのぞかせる。生活が貧しかったとしても、歯をきっちりと磨いているようだ。
回復魔法をかけたときのことを思い出す。火傷治療、失明治療、難聴治療、足の修復などはあったものの、虫歯の治療はほとんどなかった。「セカンドライフの街」では、命と同じくらい、歯を大事にしているのかもしれない。
虫歯を放置すると、命が危険にさらされることもある。どんなに忙しかったとしても、歯をきれいにするように心がけたい。
「すごろく大会の開催日はいつなの?」
「全員が仕事を休める、明後日で調整しているところです。スケジュールによっては、日にちを変更することもあります」
「わかった。すごろく大会はどこでするの?」
「アカネさんがよければ、こちらの家で開催したいです」
自分の家でやると思っていなかったからか、抑揚のない声を発することとなった。
「私の家でやるの?」
「はい。アカネさんの家を訪ねてみたいと、友達がいっていました」
「どれくらいの人数が参加するのかな?」
たくさんの人数が集まりすぎると、密集地帯になりかねない。10人以上だった場合は、ココアの要望を叶えるのは難しくなる。
「私を入れて4人です」
アカネを合わせると5人か。これくらいの人数であれば、充分なスペースを確保できる。
「わかった。私の家でやろう」
「ありがとうございます」
腹痛が完全に治っていないのか、ココアはお腹を抑えることとなった。
「ココアさん、身体はだいじょうぶ?」
「食べ過ぎたことで、お腹の調子が悪いです」
通常の人間が肉を1500グラムも食べれば、お腹を壊すのは当然である。
「回復魔法をかけるね」
腹痛を治療する魔法をかけると、効果はすぐに表れることとなった。
「ありがとうございます。腹痛が治りました」
回復魔法があれば、どんな病気を治すこともできる。魔法のすごさを、あらためて思い知ることとなった。