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ララコンベ温泉祭り その7

 辺境都市ララコンベで開催された温泉祭りは、オープニングイベントとして開催された美人店員コンテストが大好評だったのを受けて初日・2日目ともに大盛況でした。

 美人店員コンテストで上位10名に選ばれた店員さん達は、コンテストの後も街中をパレードしたり、隣村で温泉祭りを共催しているオザリーナ村へ遠征したりと勢力的に活動して、お祭を盛り上げていました。
 特に、優勝した踊り子のシャラさんは、その特技を活かしていたるところで踊りまくっては、大歓声を浴びていました。
 その際、同行していた劇団の人達が
「さぁさぁおひねりはこちらへ~」
 って言いながら、籠をかかえてお客さんの中を回っていたのは、さすがだなぁと思ったりしたわけです。

 11位以下だった店員さん達も店先に立って
「いらっしゃいませ~」
「さぁさぁ寄っていってくださいね~」
 って、声をあげては、街道を行き来しているみなさんの注目になっていました。

 ……そんな中

 コンビニおもてなし4号店にも、多くのお客さんが押し寄せていました。
 そんな4号店の店先には、コンテストに参加した店長のクローコさんが、いつもの格好……えぇ、ヤマンバメイクにミニスカ、網タイツ姿で立っていたのですが……

 さぁ~♪

  みなさま~ど~ぞお寄りなさいな~♪

   素敵な店長のいるお店、コンビニおもてなし~♪

 その横に立っている男性が、魅惑の重低音ボイスで歌を歌っているんです。
 クローコさんに寄り添うようにしながら……

 で……その歌っている男性の元にすっごい数の人が集まっているわけです。
「きゃ~! ブロンディ様~!」
「素敵な歌声ですわ~!」
 若い女性を中心にしたお客さん達が、その男性、ブロンディの周囲に殺到しているんです。

 これを、ララコンベ温泉まんじゅうを店頭販売しているララデンテさんが防壁魔法を展開して、ある一定距離よりこっちに近づけなくしてくれているおかげで事なきを得ているのですが……

 このブロンディさん。
 王都でも人気のイケメンマッチョな吟遊詩人さんでして、今回はたまたまララコンベ温泉に遊びにきていたところを、ララコンベ温泉組合の蟻人達に頼み込まれて美人店員コンテストの特別審査員として参加していたのですが……その際に、ステージ上のクローコさんに一目惚れしてしまってですね……こうして、お店の宣伝まで自発的に手伝ってくれているんです、はい。

「しっかし店長、よかったじゃんか相手が見つかってさ」
 そう言って笑うララデンテさん。

 確かに……いままで絶賛婚活中だった、僕より少し年上のクローコさんですから、これはむしろ願ったり叶ったりの展開といえなくもありません……さぞかしクローコさんも喜んでいるのでは……って、あれ?……クローコさんってば、なんでそんなにブロンディさんから離れようとしているんですかね?
「確かにアタシぃ、ダーリンを求めてウン十年だけどぉ……ちょっとこの人は白馬の王子様じゃない、みたいな?」
 そう言いながら、露骨に顔を曇らせているんですよね。
「え? クローコさん、なんでまた……」
「だってぇ……この人ぉ、軽いっていうかぁ、女ったらしの匂いっていうかぁ、クローコ、マジチョベリバって言うかぁ……」

 あぁ……そっか。つまりあれですね……
 誰彼構わず口説きそうというか、立っているだけでこんなに女性が集まってくるくらいモテ男のブロンディさんだけに、

 ただの女好きなんじゃ……とか
 あちこちに女がいるんじゃ……とか

 そんな心配をしているんでしょう。
 まぁ、確かに……見た目は派手なクローコさんですけど、意中の男性を見つけたら超一途な大和撫子気質を持っていますからねぇ……

「って、あれ?……ブロンディさんは?」
「ほわ!? さっきまでここに立っていた、みたいな?」
 僕とクローコさんがひそひそ話をしている間に、ブロンディさんの姿が消えていたんです。

 しばらく周囲を見回していると……あれ? なんだか向こうの方から女性達の歓声が沸き起こりはじめていて、それが徐々にこっちに近づいてきているような……

「「え~!?」」

 その歓声の中心を確認した僕とクローコさんは、同時にびっくりした声をあげました。

 そこには、馬に乗ったブロンディさんがいたんです。
 ……って、ちょっとあの馬、ハニワ馬のヴィヴィランテスじゃないか!?

 コンビニおもてなしの荷物を毎朝配達してくれているスアの使い魔のヴィヴィランテスですよ!

「まったく、どうしてもって言うから、仕方なくお手伝いしてあげるんだからね!」
 って、言いながらブロンディさんを背に乗せてこっちに歩いてきているヴィヴィランテス。

 って……あれ?

 よく見ると、少し離れたところにおもてなし商会ティーケー海岸店のファニーさんが立っているではありませんか……

 今、ヴィヴィランテスとファニーさんって同棲していますから、ひょっとしたらお忍びでララコンベ温泉祭りに二人で遊びに来ていたのかもしれませんね。
 そこを、ブロンディさんに見つかって、こうして馬代わりにされている……馬だけに……

 そんな事を考えているうちに、ヴィヴィランテスに乗ったブロンディさんはクローコさんの前までやってきました。
「マイハニー。白馬じゃないけど、許しておくれ」
 そう言ってウインクするブロンディさん。

 え?

 あぁ……ひょっとしてあれですか。
 さっきクローコさんが「白馬の王子様じゃない、みたいな」っていったもんだから、とりあえず馬に乗ってきたってこと?

 で

 そんなブロンディさんの前方にいるクローコさん……
「うわぁ……軽いし! すごくたらしだし!」
 って言いながら、5歩くらい後ずさっているんですけど……はてさて、この2人って、今後どうなるんですかねぇ……

◇◇

 とりあえず、クローコさんがブロンディさんに絡まれている以外は特に問題がないコンビニおもてなし4号店を一度後にした僕。
「あぁ、店長がちょっとあれだけど、後はまかせときな」
 ララデンテさんが笑顔でそう言ってくれましたので、まぁ、大丈夫でしょう。

 で

 僕が向かったのは役場近くの、コンビニおもてなしの屋台でした。
 僕がその中に入ると、
「いらっしゃいま……あ、パパ!」
 ちょうど串焼きを焼いていたパラナミオが、僕に気付いてぱぁっと笑顔になりました。

 店内には、パラナミオが焼いているタテガミライオンの串焼きの美味しそうな匂いが充満しています。
 その匂いにつられてか、屋台の中には多くのお客さんがいらしています。

 そんなお客さんの相手を、リョータ・アルト・ムツキにアルカちゃんといった我が家の子供達が笑顔で接客しています。

 それを、スアが木箱の中から見守ってくれていますので、安心してお店を任せていられるわけです。
 対人恐怖症はずいぶんマシになっているスアなんですけど、こういったお祭のような、人がすごい数集まる場所はまだ苦手なんですよね。

 でも、その代わりに魔法で自分の分身であるアナザーボディを駆使して、みんなのサポートをしてくれている次第です。

「どうだいパラナミオ、売れ行きの方は?」
「はい! ばっちりです!」
 僕の言葉に、パラナミオは笑顔で答えてくれました。
「そうか、みんなのおかげだね。みんなありがとう」
 僕がそう言うと、店内のみんなも嬉しそうに笑顔を浮かべています。
 スアのアナザーボディまで、嬉し恥ずかしそうにてれりてれりと体をくねらせています。
「よし、じゃあパパも一緒に串焼きを焼こう」
「わぁ、パパと一緒! パラナミオ、うれしいです!」
 そんな笑顔のパラナミオと一緒に、この後の僕は串焼きを焼いていきました。

 こんな感じで、ララコンベ温泉祭りは大盛況でした。

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