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ララコンベ温泉祭り その6

 ララコンベ温泉祭りがはじまりました。

 とはいえ、すでにララコンベの街中は多くのお客さんでごった返しています。
 すでに数日前から屋台が出ていましたし、何より、このララコンベは温泉郷として人気ですからね。
 祭りに関係なく、温泉に入りに来ている人も少ないないわけです、はい。

 そんな中

 屋台が出そろった街道は結構な数のお客さんで賑わっています。
 見たところ、いつもの倍近い人が街道を行き来している感じですね。

 そんな中……

 辺境都市ララコンベの中心にあります役場の前の広場には、かなりたくさんの人が集合していました。

 ここには大きなステージが設置されています。
 ここで、今回のララコンベ温泉祭りの目玉イベント、ララコンベ美人店員コンテストが開催されるんです。

 広場には、その開始を待ちわびているお客さん達が、今か今かといった感じでコンテストの開始を待っている感じです。

 すると、

『皆様お待たせいたしましたですです、只今よりララコンベ美人店員コンテストを開催するですです』
 魔法拡声器から商店街組合の蟻人の声が響くと同時に、怒号のような歓声があがっていきました。
 いや、この盛り上がりは、ちょっとすごいですね。

 そんな中、早速エントリーナンバー1番の店員さんからステージにあがっていました。

 この美人店員コンテストは、

 一次審査が、普段仕事をしている姿で挨拶を

 二次審査で、勝負服でアピールタイムを行います

 それぞれ、ステージに登場して、その姿を見た観客のみなさんが投票をしてくださる仕組みになっています。

 その投票に、事前のポスターに投票された票が加算されまして、最終的な結果になる仕組みになっています。

 コンビニおもてなし代表として参加している4号店店長のクローコさんですけど、事前の情報ではポスター投票でかなりいい位置につけているみたいですからね、これは期待出来るかもしれません。

 すでにクローコさんはステージ裏にあります控え室替わりのテントの中で待機しているはずです。

 そんなクローコさんに、最初、あのヤマンバメイクを辞めるように進言しようとした僕なんです。
 一次審査は、普段仕事を為ている姿ってことになっていますけど……あの、ヤマンバメイクで登場したら、確実にお客さんはドン引きしましからね……

 ……なんですけど

 結局、僕はそのことをクローコさんには言いませんでした。
 逆に、
「いつもの格好で頑張ってね!」
 そう言って励ましたんです。

 いえね……確かにすっぴんメイクで登場すれば、クローコさんが大人気になるのは間違いありません。

 ですが……それではクローコさんじゃないといいますか……

 まぁ、あれです……クローコさんらしさをステージで発揮してくれれば、それが一番かなって思ったわけです、はい。

 ちなみに……

 今日の特別審査員として、王都でも人気の吟遊詩人のブロンディさんって人が参加しています。
 ……特別審査員と言えば聞こえがいいのですが……たまたま温泉に湯治にきていたところを、「宿代をサービスしますですです」そう言って、商店街組合の蟻人さん達が拝み倒して参加してもらっているそうなんですよね。

 ちなみに、この吟遊詩人さん……なんかすっごいワイルドです。
 筋肉隆々で長髪を後頭部のあたりで結んでいまして、ジッと腕組みしたままステージを凝視しています。
 どこか近寄りがたいオーラを発している感じもしますね……
 なんか、鎖をもってもらって、ウォ!ウォ!って雄叫びをあげてもらったら、ブルー○ーブロ○ィに見えなくもないといいますか……

 そんな特別審査員が見つめているステージ上では、次々に参加者が登場しています。

 そして、

『エントリーナンバー31番、コンビニおもてなし4号店のクローコさんです』
 紹介の声と同時に、クローコさんがステージに飛び出してきました。

 いつものコンビニおもてなしの上着
 いつもの超ミニスカ
 いつもの黒の網タイツ
 いつもの巻き巻きヘア

 そして……いつものヤマンバメイクです。

 この姿には、ポスターのナチュラルメイク姿のクローコさんしかしらなかった観客から一斉にどよめきがあがっていきました。

 ですが、そんな声などお構いなしとばかりに、クローコさんは、
「みなさ~ん、クローコで~っす、みたいなぁ!」
 いつものようにはっちゃけながら、舌出し横ピースを繰り返しています。

 うん……間違いなくいつものクローコさんです。
 ステージ上のクローコさんは、生き生きとしてステージ上を駆け回っていました。

 こうでないとクローコさんじゃありません。

 二次審査では、

 サイドが胸元までカットされているワンレンボディコンを身につけて、
 超分厚いベルトを巻いて、
 踵が超高いピンヒールを履いて
 キラピカなネックレスをじゃらじゃらつけまくった姿で登場したクローコさんは、ノリノリな様子でジュリ扇を片手に踊りまわって、アピールしていきました。

 その生き生きとしたはっちゃけぶりに、観客からも結構な歓声があがっていた次第です。

 ……まぁ、大半のお客さんはドン引きしていたんですけどね……

 でもまぁ、僕としてはクローコさんらしくステージをやりきってくれたことで、むしろ満足していた次第です。

◇◇

 昼前に、審査結果が発表になりました。

 ステージ上では、優勝した踊り子のファラさんがインタビューを受けているところでした。

 その後方には10位までに入ったみなさんが並んでいます。

「クローコさん、惜しかったね。11位なんてさ……」
 クローコさんは、僕と一緒に観客席から拍手を送っていました。
「ありがと店長ちゃん。でもね、クローコやりきったから、マジ、後悔してない、みたいな」
 クローコさんは、楽しそうに笑顔を浮かべていました。

 ……さきほどの二次審査の際の姿そのままなもんですから、なんともすごい笑顔なんですけど……なんでしょう、すごく生き生きとしているもんですから、僕まで釣られて笑顔になってしまう……そんな、素敵な笑顔です。

「じゃ、コンテストも済んだし、お店に戻る、みたいな?」
 クローコさんは、そう言うと席から立ちあがったんですが……その前に一人の男性が立ち塞がりました。

 あれ?……この人って、特別審査員のブロンディさんじゃあ……

 突然のブロンディさんの登場に、周囲のみなさんもざわついていたんですけど、ブロンディさんはそんなことお構いなしといった様子で、クローコさんを凝視しています。

「な……なんですかぁ、みたいなぁ?」
 その威圧的な視線で見下ろされているクローコさんも、少しおびえている様子です。
 それを察した僕は、そんなクローコさんと、ブロンディさんの間に割って入りました。
「あの、ウチの店長に何かご用ですか?」
 僕がそう言うと、ブロンディさんは、一度咳払いをすると、その場で片膝を付きました。

 そして、クローコさんに向かって頭を下げると、

「……このブロンディ、はじめて心の底から美しいと思う女性に巡り会えた……つきましては、お友達からお付き合いさせていただきたい」

 クローコさんに向かって、そう言ったんです。

「ほ、ほわっと!?」
 ブロンディさんの言葉を聞いたクローコさんってば、なんかてんぱっているんですかね、いきなり妙な言葉を発しながら、どうみても「シェー!」のポーズをしているんですが……

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