カンナ・ロベリアの日記 ①
わたくしはロベリア家で初めて生まれた女の子で、五人の兄様たちを持つ末の子でした。
初めて女の子が生まれた事もあってか、両親と兄様たちはわたくしが生まれた事を心から喜んでくれていました。
特に女の子がほしいと思っていたお母様は、誰よりもわたくしが生まれてきてくれた事を喜んでくれて、『カンナ』と言う名前を授けてくれた。
何事にも情熱を持って取り組むことができ、思い描く未来を実現させる人になってほしいと願いを込めて。
それからのわたくしは、家族や周りの人達からとことん甘やかされて育ちました。
お父様はわたくしに『自由に生きなさい』と言ってくれた事があります。
ロベリア家を継ぐのは長男であるヘリオス兄様かレイン兄様のどちらかだと言われていましたが、お父様は誰が継いでも良いと思っているんです。
「子供たちには、自分が決めた道を進んでほしい」
と言うのがお父様の考えで、だからヘリオス兄様とレイン兄様はお父様の後を継ぐ気がなく、三男のイクシオン兄様が後を継ぐと言っています。
だからわたくしも好きなようにしていいと、自由にしていいと思っていたんです。
そう考えていたからこそ、わたくしは我儘で好き嫌いの激しい、嫉妬深い女の子に成長してしまいました。
誰も怒らない、誰も責めない、誰も止めない、誰も罰しない。
誰か一人でもわたくしの事を気に止めてくれていたら、怒ってくれていたら……、わたくしの未来は違っていたのかもしれないと、何度もそう思ったのです。
しかし今更そんなこと思ったところで、何もかもが全て手遅れでした。
やり直したいと願っても、この世界にわたくしの思いが届くはずがないのです。
だってこの世界は『彼女の物』だから。
絶対的な幸せが待っている彼女の世界だからこそ、わたくしは決められた物語通りに歩まなければなりません。
その流れに逆らう事など、誰であろうと無理なのです。
これはわたくしの後悔を綴る日記。
きっと誰も読むことのない、誰にも打ち明ける事のない思いをわたくしはここに綴ります。
もし……いつの日か誰かがこの日記を見つけてくれた時、一人でも良いから知ってほしいのです。
わたくし――カンナ・ロベリアがどういう人間だったのかを。