第10話 ウォンの策(8)
〈ガン!〉
〈ガン! ガン!〉
〈ガン!〉
〈ガシャン!〉
(……ん? 何だ? この剣と剣か? 戟と戟。槍と槍とが交わる鈍い剣戟の音は……? い、一体、何が、何が起きているのだ。俺の背、後方で……)と。
倒れ、横たわっているウォンが、自身の脳裏で困惑しながら思えば。
「な、何だぁあああっ! お、お前達はぁあああっ⁉ 王を。我等の王を貴様達は裏切るつもりかぁあああっ?」と。
今度は、二国の男王である健太の親衛隊の隊長であるダイの口から荒らしく。物々しい台詞が罵声とともに、ウォンの耳へと聞こえるから。
(……もしかして? クソガキの親衛隊の奴等の中で仲違い……と、言うか? チビとダイではなく。俺に加担、力を貸してくれる者達とで別れ争いを始め出したのかも知れん?)と。
ウォンは脳裏で思いもするのだが。何せ彼は、倒れ横たわったままなのだ。だから、自分の後ろで何が起きているかは、全く見当がつかないのだ。
だから取り敢えずは立ち上がろう。そして後方を、確認をしてみよう。そうすれば自身の背。後ろで何が起きているかは、自身の目で確認ができる筈だとウォンは思う。思えば直ぐに彼は立ち上がろうと試み始めるのだ。
自分自身の傷ついた力の入らない身体に鞭を打ちながら立ち上がろうと試みる。
「俺達は、王を裏切るもなにも。お前達のように、今の王や領主から士官の誘いがあった訳でもない半端者。浪人。ならず者になるしかない身の上の者達ばかりだから。ウォン様に領主に返り咲いてもらわなければ困る者達ばかりなのだ。だからウォン様が、女王アイカ様を連れ逃げて再起を計る邪魔をされたら困るのだ」
「そうだ! そうだ! こいつの言う通りだ!」
「俺達は、どうしてもウォン様とアイカ様に、もう一度剣と槍を握り。立ち上がってもらわなければ困る者達の集まり。所帯だから。お前達のような、誰にでも良い顔をする輩達に、ウォンさんの逃亡の邪魔をされたら困るのだ」
「そうだ! そうだ!」
「俺達は、お前達のような、オーク種族の誇りもないような者達とは違うのだ」
「そうだ! そう……。俺なんて嫁が、今の男王は可愛い。男前だからと。子供を連れて、男王の許へと逃げやがった」
「ああ、家もそうだ!」
「ああ、家も……」
「男王の直属のアマゾネスに士官をするのだと、俺やガキを捨てて、家を出ていきやがった」と。